子供とお金「お金を盗んだ・・・心の傷」
小学2年生か3年生のころ、友人の家で遊んでいたときの話しです。
もう50年も前のことですから、リビングルームなどと言うオシャレな部屋のわけもなく、せいぜい六畳程度(もしかしたらもっと狭かったかも)の部屋に食卓と勉強机が詰め込まれているような、そんな雑多な部屋だったと記憶しています。
たしか3~4人で遊んでいたのですが、何をして遊んでいたのかは、まったく覚えていません。
時期的に考えれば、仮面ライダーカードを見せ合っていたとか、トランプで遊んでいたとかでしょうか。
今のようにテレビゲームがあるわけではありませんから、友人と遊ぶと言えば、外で遊ぶのが普通でした。おそらく雨が降っていた日なのだと思います。
何かの拍子に、壁際にある友人の机の下に、ほんの少し頭を入れました。
灯りの届かない、部屋の中ではちょっとした暗がりです。
そこで、ちょうどみんなから死角になるような場所に、
10円玉が落ちているのを見つけてしまいました。
あぁ言うのを「一瞬の気の迷い」と言うのでしょうか。
僕は思わずその10円玉を手に取り、そのままズボンのポケットに入れてしまいました。
誰も気づいてません。
僕はまんまと10円をゲットしたのです。
お金がどういうものか、何となく理解し始めている年齢です。
10円あれば、駄菓子屋で自分が楽しめるのがわかっています。
それと同時に、モノを盗んではいけない、と言う道徳的なことも理解し始めている年齢でもありました。
けれど、
僕は、
10円を返すことなく、
そのまま帰宅しました。
自宅に帰り、その10円をどうしたかの記憶はありません。
けれど、その時の「モヤモヤ」した気持ちは、それから半世紀経った今でも、僕の中に残っています。
そのことが、自分の人間形成においてどう影響したのかは、よくわかりません。
ただ事実として、今でもはっきりと、机の下の暗がりで10円を目にした映像、そしてそれをこっそり盗ってしまったことを覚えています。
たかが10円。
されど10円。
いや、お金の多寡ではないですね。
きっと、金額の問題ではないんです。
もやっと感じていたのに、瞬間、自分の欲に負けて盗ってしまった。
正しい答えなど無いのに、いまだに「なんでやってしまったのか」と、自問自答しているのだと思います。
ただね、、、
そんな風に自問自答をし続けている自分で、良かったとも思っているのです。
この心の小さな傷は、人として忘れてはいけないことだから、いつまでも治らずに残っているのですね。
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