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【スターバックの本棚】「絵本おこりじぞう」

「絵本おこりじぞう」 山口勇子/原作 沼田曜一/語り 四國五郎/絵 金の星社

8月ということで、原爆について描かれた本を選びました。
この本は、被爆者で山口勇子さんという児童文学者の方が「原爆の民話」を書きたいとの思いで、作り上げた物語で、絵は、四國五郎さんです。 

読むたびに泣きそうになりますが、これが、実際に起こったことですから伝えなければならないという思いで、隆祥館書店では、常備しています。
四國五郎さんは、子供が目をそらさず、見ることができて、事実が伝わるように工夫しておられます。被爆して死んでしまう女の子の顔を綺麗に描いておられます。傷ついた顔に対して、特に子供はどうしても目を背けてしまうからだそうです。
けれども、戦争の持つ巨大な残虐を伝えなければいけない。それを追求し、たどり着いた一つの解が、この「おこりじぞう」の絵。結果として、アメリカの大学の授業に教材として活用されるなど、国境を越えて被爆の実相を伝えるために活用されるまでになっています。

「四國五郎回顧・追悼展へのメッセージ」 
マサチューセッツ工科大学名誉教授
ジョン・W・ダワー

「1945年8月、広島と長崎が原爆攻撃を受けた時には、アメリカ合衆国のみが核兵器保有国でした。現在では9ヶ国の『核保有国』が存在し、近い将来、その数は恐らくもっと増えるかもしれません。日本もその中に入るかも知れません。考えただけでも恐ろしいことですが、しかし、それを想像することがもはや不可能ではない状況です。

 軍国主義が広島の悲劇を生み出し、多くの死傷者を出し、生き延びた人達も苦しみと悲しみを舐め続けたことを、私たちは決して忘れてはなりません。四國五郎の情熱的な反戦芸術は傑出しており、そうした悲劇の記憶の方法のひとつとしてかけがいのないものです。

 四國五郎の偉大な貢献は、核兵器の恐ろしさを伝えるのみならず、同時にそれとは対照的なものを描き出す彼の能力にあります。死に対する生命、憎悪とは反対の愛、恐怖とは対照的な希望が、彼の芸術には込められています。

 今から10年前の終戦60周年の折り、四國五郎の絵画に感動し、私が勤めていたマサチューセッツ工科大学のオンライン・プロジェクトに彼の作品を載せました。今も、彼の作品は、更に力強く、いままでよりももっと迫るような形で、私個人だけではなく、彼の作品を目にする全ての人に語りかけてきます。」 
ジョン・W・ダワー
(翻訳:田中利幸 歴史評論家)

そして、これがMITの中にあるダワーさんのサイトに掲載された、37枚の被爆の実相を描いた四國五郎さんの絵。英語と日本語の両言語併記となっており、世界中から被爆の実相を学ぶためにアクセスされているとか。http://visualizingcultures.mit.edu/groundzero1945_2/gz2_visnav01.html

四國光さんは小学生の頃、何度もお父様の四國五郎さんに、「つまらないことで怒るな。世の中には本当に悪い奴がいる。それは戦争を起こす奴だ。本当に悪い奴に本気で怒れ。戦争は、台風や地震と違う。人が起こすものだ。ものすごくたくさんの人が不幸になる。だから、つまらんことで怒るんじゃなくて、戦争を起こすような、本当に悪い奴に本気で怒れ」とよく言われたそうです。

とにかく、大事な事は、「おこりじぞう」を過去の物語で完結させるのではなく、今の物語、これからの物語として、未来に向けて引き継いでいくこと。その事が一番大事だと思います。
隆祥館書店にて発売しております。ぜひ、お手に取ってご覧ください。

隆祥館書店:二村 知子 | Tomoko Futamura
隆祥館書店店主 井村雅代コーチ(当時)に師事し、シンクロナイズドスイミングを始め、現役時代はチーム競技で2年連続日本1位、日本代表として2年連続世界第3位に。現役引退後、隆祥館書店に入社。2011年から「作家と読者の集い」と称したト-クイベントを開催、2016年からは「ママと赤ちゃんのための集い場」を毎月開き、2019年4月からは、宝上真弓先生と子育てに悩む親御さんのために絵本選書の無料サ-ビス、2020年6月より、お客様からのリクエストを受け一万円選書を始めている。

隆祥館書店:http://atta2.weblogs.jp/ryushokan/

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