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【現地レポート】BepiColomb打上げ -田枝正寛(2018年11月号 再掲)

暗闇の中で急に大きな光の玉が見えた。とっさに写真を撮った。
アリアン5打ち上げの瞬間。すなわちBepiColomboが宇宙に行く瞬間…。

Fig1_Launch 図1 打ち上げ直後の写真。
ここからゆっくりと光の玉が上昇していく。(筆者撮影)

まずはBepiColomboミッションとアリアン5ロケットについて説明しましょう。
BepiColomboは、ESA・JAXA国際共同の水星探査ミッションです。
JAXAの探査機「みお(MIO)」とESAの探査機(MPO)が合体して水星まで行き、
そこでそれぞれの探査機に分かれて水星の謎を観測します。
(詳しくは、http://www.isas.jaxa.jp/home/mio/ 参照)
このプロジェクト、2003年から正式にスタートしてまして苦節15年!でやっと打ち上げでした。
そして水星に辿り着くまでこれから7年!! 惑星探査の宿命とはいえ、本当に長期戦です。

Fig2_BepiColombo__MPO+MMO 図2 BepiColomboミッションのイラストレーション。
手前がMPO、奥がMIO。 (出展: http://sci.esa.int/jump.cfm?oid=55671 (c)ESA )

打ち上げはESA側が担うのでアリアン5ロケットで打ち上げます。
ところでアリアン5ロケットはどこから打ち上げると思いますか?

実は南米なのです。
ブラジルの北にフランス領ギアナがありましてそこにESAがロケット打ち上げ場を建設してます。
何でワザワザそんな遠くに(というか、そんなところにフランス領があったのかい!)
と思われるかもしれませんが、赤道に近く且つ打ち上げ方向の東がひらけた海で人の住んで無い事が選ばれた理由と思います。

Fig3_Arian5 図3 フランス領ギアナの射場にあるアリアン5ロケットの実物大模型。(筆者撮影)

射場のあるクールー(Kourou)へは空港のあるカイエンヌ(Cayenne)から車で1時間位です。
当然ながら?電車なんて便利なものは無くレンタカーです。このレンタカー、大抵が左ハンドル且つマニュアル車と日本人には大変ハードルの高いものとなっております。覚悟して来てくださいね。

Fig4_Kourou 図4 空港のあるカイエンヌからクールーに向かう途中の風景。
1時間の道のりのほとんどがこんな感じ。(筆者撮影)

今回のアリアン5の打ち上げ予定時刻は夜中の22時45分。
ESAのウェブページ等から打ち上げ見学の申し込みをする事が出来ます。
僕は運良く申込が通りました(かなり狭き門です)が、運悪く外れた場合でも海岸沿いなど幾つか自由に見学出来るビューポイントがあるようです。
いよいよカウントダウン。3, 2, 1。シーン。あれ?飛ばない…(汗
と思ったら急に光の玉が現れました。アリアン5のリフトオフ(カウントゼロ)はメインエンジン着火なのですが、
実際にロケットが持ち上がるのは7秒後の補助エンジン着火後。
それでカウントダウン後暫くしてからロケット上昇するとの事。
ナルホド。ロケットも色々ありますね。

光の玉は本当にゆっくりと、爆音では無く重低音で上がって行きます。
約2分。光の玉は少しずつ小さくなり遂に見えなくなりました。
そして拍手。

感動? というより感慨になるかな?
自分が心血を注いで作ったものが宇宙に行く瞬間ってこんな気持ちなんだなー、と思いました。
観光者では無く関係者として打ち上げを見る。一つの夢が叶った瞬間であり、一つの時代が終わった瞬間でもあり…

Fig5_BepiColombo_liftoff_8_1280 図5 BepiColombo打上げの軌跡 (出典: http://sci.esa.int/jump.cfm?oid=60841 (c)ESA )

レポートはここで終わりですが、オマケ。

フランス領ギアナへのフライトは、パリからの「国内便」になります。
僕はロンドン-パリ経由で現地入り予定でしたが、なんとロンドン-パリのフライトが機体トラブルでキャンセルになるハプニングに( ̄◇ ̄;)
混乱の中代替フライトを探してもらうが最初は打ち上げの日に到着できる便が無いと言われ。
必死にゴネた末なんとかカリブ海の島一泊(こんな所にもフランス領が!)
打ち上げ当日着の便残り一席を見つけてもらいギリ間に合いました。

いやーマジ人生でイチバン焦りました(-_-;)。
皆様打ち上げ見学は余裕を持って行きましょう。

Fig6_Martinique 図6 一泊することになったマルティニーク島はここ。
リゾート地らしいが楽しむ余裕は無かった。


田枝正寛 
エンジニア・理学博士
水星探査機みお搭載機器開発。
現在は株式会社ispaceにて月着陸船開発に従事。
PEQUODクルー

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