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エイハブの六分儀-2023.4月号 西 香織

【今月の星空案内】

夕暮れ時から宵時にかけての西の空で、宵の明星金星が、まさに黄金の輝きを放っていますね。まずは、惑星ととの共演をご紹介しましょう。
まず、4月21日(金)に夕方の西の空で水星と月がならびます。水星は太陽に近いため非常に見つけづらく、月も新月の翌日の二日目の極細の月ですのでなかなか難易度が高いですけれど、見つけられた時の喜びは格別です。

続いて、4月23日(日)に月と金星が接近します。火星は少しずつ暗くなってきていますが、ふたご座に位置していて二つ並んだ明るい星との位置関係に注目してみると、足の速さが実感できます。ふたごの頭で輝く右がカストル、そして左にポルックスが輝いていますが、4月26日(水)に、月と火星とカストルとポルックスが勢ぞろい。
星がよく見える場所だと、ゆるキャラの顔のようでシャッターチャンスかもしれません。明け方の東の空で、土星と月が接近するのは、5月14日(日)です。明け方近くの南と東の間のあたりです。惑う星や月が少しずつ近づいては離れていく変化自体もいとおかしですので、上記の日にちの前後も要チェックでお願いします。

エイハブの六分儀-4月号

さて、木星は現在、太陽の向こう側に位置して見えなくなりましたが、4月14日(金)に、木星の衛星を探査するJUICE(JUpiter ICy moons Explore)探査機が搭載されたアリアン5ロケットの打ち上げが成功しました。
欧州宇宙機関esaJAXA、多くの日本人研究者やNASAなど各国の機関が携わっています。予定では2031年に木星に到達。ガリレオ衛星エウロパガニメデカリストという氷衛星を中心に調査した後、ガニメデの周回軌道に入り衛星の人工衛星になる予定です。
氷衛星は、その名のとおり表面が分厚い氷におおわれています。その下には、地球よりも深淵な海をたたえています。特にガニメデは太陽系最大の衛星で、衛星で唯一金属核があり固有の磁場を持っています。そこには、どんな世界が広がっているのでしょうか?生命は存在するのでしょうか?探査結果が待ち遠しいですね。まずは月と地球、金星、さらに地球とのフライバイを経て、木星へと進路をとります。8年という長い旅路になりそうですが、成功を祈りたいと思います。

もうひとつ、珍しい天文現象がありました。金環皆既日食です。見上げる場所によって金環日食になったり皆既日食になったりする、その名もハイブリッド日食。オーストラリア西部とニューギニア方面での日食ですが、日本では南部の一部で、ほんの少しかけます。南西諸島の皆さん、楽しまれましたか?

それでは、午後8時の星座を見上げてみましょう。

空高くのぼってきている春の星座たち。その代表格が、北の空の7つの星を結んでできる北斗七星です。日本ではひしゃく星。宵時に北斗七星を高い位置で見つけると、あぁ春が来たなぁと実感します。ところで、北斗七星は星座ではなく、ある動物のおしりからしっぽにかけての星のならびです。冬の間は冬眠していますが、「お腹がすいたなぁ、ハチミツないかなぁ」なんてのっしのっしと起きだしてくるおおぐま座です。空は広いです。大きな星のひしゃくで、たっぷりのハチミツがすくえそうですよ。冬眠明けのクマもきっと満足することでしょう。おおぐま座は、小さな三角の顔、つめのようにちょんちょんとつま先に星があって、丁寧に暗い星をたどっていくと案外よくできた星座だということがわかります。街灯りの少ない空でのお楽しみです。

さて、北斗七星の南側に、もう一頭大きな動物の星座を見つけましょう。頭の真上近くです。淡い星たちで半円をむすんで下にチョン、レグルスという1等星です。21個ある1等星の中で一番暗いながら、太陽の通り道である黄道上にあるので昔から高貴な王の星、ロイヤルスターとみなされてきました。この星のならびは、はてなマークの反対なのでナテハのマーク、昭和のプラネタリウムでは鉄板ネタでした。(あ、今も…でしょうか?)別名ししの大鎌の先端で輝くレグルスから折りたたまれた前足、胴体を形作る優美な台形とライオンのしっぽを意味するデネボラでつくるこじんまりした三角で、しし座の登場です。人食いライオンだったとされるネメアの化け獅子が大空を駆けぬけていきます。

西よりのふたご座のカストル、ポルックスとしし座のレグルスのあいだの星の見えない暗いあたりに、かに座がかくれています。友だち思いの化け蟹カルキノスの姿です。そこに、小さな四角が見えますか?3等星より暗いかすかな星でできる四角の中に、プレセぺ星団(M44)とよばれる不規則に集まった星の集団である散開星団が身を潜めています。プレセぺというのは飼い葉おけという意味で、双眼鏡や望遠鏡でのぞいて楽しい天体です。
おうし座プレアデス星団(M45)は幼い恒星の集まりであるのに対して、コチラは比較的老齢であるためオレンジ色をしている星が見えるのです。
それでも誕生してから数億年といいますから、太陽と比べても若い星の集団ですね。散開星団に対して、星が丸く集まっている集団を球状星団といいます。銀河系誕生後の早い段階でできたものと考えられています。散開星団が小学校だとすると、球状星団がシニアいきいき大学です(?)

最後に、北斗七星の柄のラインをそのまま南へ伸ばしましょう。うしかい座アルクトゥールスから、さらにのばした先におとめ座スピカが輝いています。こののびやかな曲線を春の大曲線と呼んでいます。アルクトゥールスとスピカと、しし座のデネボラででっかい春の大三角ができました。春の大三角のうちデネボラだけは2等星でひかえめですが、私たちの太陽に比べて12倍も明るい星なんですよ。人は見かけによらずと言いますけれど、星も見かけによりませんのでご注意を。5月4日(木)には、満月前の月とスピカが寄り添いますので、スケジュール帳に記入しておいてくださいね。

さぁ、咲きほこる星たちとともに、爽やかな季節を楽しみましょう。


西 香織
コスモプラネタリウム渋谷「星を詠む和みの解説員」。幼い頃からプラネタリウムに通う。宇宙メルマガTHEVOYAGE 「エイハブの六分儀」で毎月の星空案内を担当。そそっかしく、公私ともに自分で掘った穴に自分でハマり(ついでに周囲の人も巻き込んで)大騒ぎしながらも、地球だからこそ楽しめる眺めを満喫する日々。


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