うまい肉にはトゲがある
今まで当たり前だと思って来た事が突然崩れ去り、進む道が見えなくなる。
そんな経験をした事があるだろうか。
なんて大げさな出だしですが、全然軽い話です。
先日家内とイオンへ買い物に出かけました。
家を出るのが遅くなってなってしまい、お昼ちょっと前に着きました。
買い物を終えてから外でお昼を食べると遅くなるし、日曜日なのでどこも混んでいるだろうしという事で、フードコートでササッと食べてしまおうという事になりました。
ラーメンにしようか、いやフライドチキンか、うーんオムライスか?等と悩みながらフードコートへ向かう角を曲がると、溢れんばかりの人だかりが見えました。
これでは席を確保する事ができそうもありません。
そこでフードコートをあきらめて、専門店街で食べる事にしました。
こちらは当然ながら値段がグンと上がります。
まぁ、並ぶ時間をお金に換算したら同じようなものかと自分を納得させつつお店を見て回ります。
どこもお店の前の椅子に座って待っている人がいたので、その中でも一番待ちが少なさそうな所にしようと決めて店を探しました。
そして数ある店の中から、とんかつ屋さんに入る事にしました。
3組目でしたが、受付に名前を書いたら次々と食べ終えた人が出てきて、すんなり入る事ができました。
ひれかつのセットを頼んでしばらくすると、皿に盛ったキャベツと小さなすり鉢に入ったゴマがきました。
器に取り分けて食べるのですが、一人3回ぶんぐらいの量がありました。
それぞれ2種類のドレッシングとソースで味を替えながら楽しみました。
お代わりは自由との事でしたが、最近は無理に食べないようにしているので、お代わりはせずにとんかつを待ちます。
今のうちにゴマをすっておこうと、小さなすりこ木でジャシジャシとゴマを潰します。
プーンとゴマのいい香りが漂います。
そこへひれかつが届きました。
とんかつを食べるのは久しぶりです。
「いやー美味そう」そう言いながら、壺に入ったソースを小さな柄杓で掬ってすり鉢に入れようとした時でした。
「ねぇ、ソースってそこに入れるの?」と突然家内が言い出しました。
「そこも何も・・・ここに入れるもんでしょ。じゃぁどうやって食べるの?」
「とんかつにソースをかけて、ゴマはその上にパラパラお好みで?」と疑問形で返されました。
「いやいや」と言いかけて考えてみると、我が家で普段行くとんかつ屋さんではすり鉢に入ったゴマは出てきません。
確かに直接ソースをかけて食べています。
そこに畳みかけるように家内が続けます。
「じゃぁさ、キャベツが一緒の皿に載ってくるお店でさキャベツを食べる時ってソースかけるでしょ?お肉だけ別な小鉢のソースにつけて食べないよね」ともっともらしい事を言います。
なんだか段々不安になってきました。
チラリと隣の家族連れを見ましたが、まだキャベツが出て来たばかりで、みんなで取り分けている段階です。
今まで生きて来て、すり鉢ですったゴマにソースを入れて、とんかつをそれにつけて食べるものだとばかり思いこんでいましたが、実は間違った食べ方をしていたのでしょうか?
ひょっとして僕が帰った後お店の人が「うわ、すり鉢にソース入れてるよ。たまにいるよねぇ」なんて言っているんじゃ・・・・
冷静に考えると、誰かに教わったわけでもなく今までそうして食べてきましたが、滅茶苦茶初見殺しの食べものなんじゃなかろうかという気がしてきました。
念願かなってオハイオ州から単身日本に観光にやってきた青年が、「トンカツクダサーイ」と言って、これが出てきたらどうやって食べるんだろう?
ゴマは見ればわかるだろうけど、ご飯にパラパラかけるのでは?
すりこ木を見て彼は何をする?肉を叩くかもしれない。
「ニクタタク!ヤワラカクナールネ」多分そうする。
そして肝心のソースはテーブルの隅の壺に入っているけど、パッと目に入るのは柚子風味のドレッシング。それを肉にかけるんじゃなかろうか。
そんな事を考えながら、肉をソースにつけて食べていました。
***
翌日会社へ行ってからもその事を考えていました。
隣の席の子にどうやって食べるのが正しいか聞いてみましたが「私ソースかけない派なんですよ」という答えが返ってきました。そんな事聞いてない。
こんなに難しい食べ物なんだから、きっとネットで聞いている人もいるのでは?と思い「とんかつ ごまの入ったすり鉢」で検索すると、ある人のブログがヒットしたので読んでみました。
そのブログは大体こんな出だしで始まっていました。
あなたは予言者か?千里眼か?
その方はきちんと考察されていて、結論から言うと僕の食べ方は間違っていなかったと。
しかも知恵袋などでも質問している人の多い事。驚きました。
普段当たり前だと思って食べていたとんかつは、初見殺しの難しい食べ物で、なおかつ自分が当たり前だと信じていた事なんて、簡単に崩れ去るものなんだとわかりました。
ここを読んだあなたは、もう新宿さぼてんに行ってもオドオドせずにとんかつを食べられますね。
おしまい
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