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アルカイック期のアテネの若者たちの日常を表す浮彫り彫刻

アテネ考古学博物館には、側面に彫刻が施されている四角い大理石の台座が展示されています。この台座はケラミコスにあるアテネのデゥピュロン門の墓地に接した古代の城壁の中から発掘されました。上面には彫像をはめ込むための穴があけられていることから、台座ということがわかりました。裏面以外の3つの側面にはその当時のアテネの青年たちの日常の様子が彫刻で表されているのが非常に興味深いところです。

正面の浮彫

4人の青年が、体を鍛える運動場でレスリング、やり投げ、徒競走などを練習する様子が描かれています。古代のギリシャ人は真っ裸になって体を鍛えます。ギリシャ語で裸という言葉はギムノスといい、この言葉から運動や体育のことをギムナスティキと言います。英語ではジムナスティックとなります。またギリシャ語で中学のことをギムナシオといいます。中学生である思春期の12歳から15歳は勉強だけではなく発達してくる体も鍛えなければならないという意味が込められているということです。古代の人たちは、裸で運動をする前に、水浴びをし、オリーブオイルを体につけマッサージをし、筋肉をほぐしていたそうです。それから細かい砂を体につけます。これは肌を守るためと、発汗作用を抑えるためです。古代のギリシャ人男性は体を鍛える義務がありました。また神様のような完璧な肉体になるために励んでいたそうです。運動後は体についたオリーブオイルを特別な器具(下の写真の靴ベラのようなもの)でとり、お風呂に入り体を綺麗にした後、運動後も体にオリーブオイルを塗って肌の手入れをしていました。古代の男性は年間で約30リットルのオリーブオイルを体のケアのために使っていたと言われています。ちなみに都市国家スパルタ以外では女性が体を鍛えることは禁止されていたそうです。

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左側の浮彫

青年たちがボールで遊んでいるところが描かれています。左右3人づつに分かれたチームで、それぞれのチームの後方には同じ距離でラインが引かれていたと考えられます。交互にボールを投げ合い、どちらのチームが早く、相手チームを後方に引いたラインまで後退させるかを競う遊びです。大理石に描かれているのは、縮小されており、実際であれば、両チームの間隔はもっと離れています。写真をみると、左チームの外側にいる青年がボールを後ろに抱え、これから力一杯投げようとするところです。右チームの3人はこれから投げられるボールを受けようと後退しようとしているところです。古代からボールを使い遊んでいたという点は、現代と同じです。長い時間の中で、人間が、色々なルールや器具を考案し、たくさんの球技の競技が作られてきました。しかしそれらの球技の原点がこの古代のボール遊びなのかなと思いました。

古代アテネ若者2

右側の彫刻

椅子に腰掛けた二人の青年が犬と猫をけしかけて遊んでいる様子が描かれています。ゆっくりとした時間の流れで余暇を動物たちと楽しんでいるのがわかります。古代ギリシャ人は半分肩をだして、一枚布を体に巻きつけたものを着用していました。上記のボール遊びの浮き彫りと同じで、赤く彩色がされている跡がよくわかります。基本的には大理石の彫刻には彩色がされていました。彩色がされていないものは未完成のものとみなされます。ただ、長い時間の経過でほとんどの古代の彫刻の色が落ちており、大理石の白い色でしか残っていないものが大半です。アクロポリスのパルテノン神殿の彫刻もカラフルに色がつけられていてそれはそれは鮮やかだったと言われています。
彫刻が施された台座は、BC505年に作成されたので、アルカイック時代に属しますが、アルカイック前期とは異なり、姿勢やプロポーション、筋肉の描き方に正確さが増してきていますが、どこかまだ誇張されすぎた表現ではありますが人間の肢体の描写の発展が見られます。このアルカイック期からクラシック期へ絶頂期を迎えていくのです。(Written by Yuki)

古代のアテネ若者1



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