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メガネ屋さん

妻が仕事中だけでもメガネをかけようかな、と言うので初詣のついでにメガネ屋さんに訪れた。
ここ数年は二人とも、けして目が良いとはいえない状態だったけど、それでもメガネをかけるという発想がなかったわたしからすると、彼女の発言はとても意外に思えた。

立ち寄ったメガネ屋は、高級な店ではないものの、例えば帽子屋さんの
CA4LAのような、20〜30代のシックな店員を配した洗練された雰囲気の割に広いお店だった。

妻が試しで、並んでいる様々なメガネをつけるたびに、わたしがエルトン・ジョンみたいだね、とか、滝廉太郎みたい、など、たぶん何度もこのメガネ屋さんで言い尽くされたようなコメントしかできないでいると、スラっとした女性店員が途中から、フランスのヴィンテージだったり、日本の新進作家のメガネが出してすすめてくれだした。
鏡ごしに思案していたけど、この日は決めるには至らなかった。

詣でる神社へ向かう途中、二人で川べりを歩きながら妻が、あの店員さんのすすめてくれるメガネがことごとく、趣味じゃなかった、とつぶやいた。
妻が人のことを悪く言うなんて珍しいな、いや、別に悪口ではないか、と返事はせずにぼんやりグルグルと考えていた。

そういえば、先ほどのメガネ屋さんの店員は、5、6人いたけど、全員メガネをかけていたことを思い出す。
みんな目が悪いんだろうか。
店員さんは、メガネをかけるのがマストなんだろうか。

もしもあのメガネ屋さんの面接に、そんなに目も悪くなくてメガネにもほとんど興味のない自分が行ってみたときのことを想像しながら、長い橋を渡った。

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