いつか消えてしまうもの
お気に入りのものだって、使っていたらいつかは壊れてしまう。
美味しいものだって、食べたらあっという間になくなってしまう。
私が毎日飽きるように見ている街の風景だって一緒なのだ。
◇
この街に引っ越してきたから、散歩をするのが好きになった。
街を歩いて、面白いものを見つけていくのはとても楽しい。
その散歩道で見つけた不思議な形の建物。
アシンメトリーで歪な形、大きなガラス張りでできていた。
光を受けると透き通って見えて、自然と目を奪われる素敵な建物だった。
もう使われては居なかったみたいだけれど、そこの前を通るたびに、好奇心のようなワクワクした気持ちを掻き立ててくれた。
その建物が自分の中で当たり前に馴染んできた頃。
久しぶりに前を通ってみると、その建物は、大型の解体車に崩され、跡形もなくなっていた。
心にスキマができてしまったように、喪失感が押し寄せる。
『あの道を通ればいつでも見られるしな。』
そんな事を思って、写真にも収めなかった。
やっぱり、この世に『いつでも』『絶対』なんて存在しないのだ。
◇
私が見ている景色。
あと10年後にこのまま同じように残り続けているものは、いったいいくつあるのだろう。
私がハタチのころ好きだったものだって、今はもう無くなっているものも多い。
時が経つのなんてあっという間なんだ。
心が動いたものは、どんな小さなことでも写真に収めていきたいと強く思った。
思考だって、思い出だって、アウトプットしないものは簡単に頭の片隅に消えていく。
今のこの便利なSNS時代。
最大限駆使して、私の気持ちと思い出をばら撒いていこう。
誰のためでもなく、未来の私のために。
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