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vs風邪

去年末、インフルエンザに罹った。
何年振りか。

その前の年、コロナにも罹ったが、喉の強い痛みはあったものの熱は出ず、喘息が少し出た程度ですんだ。
部屋でひたすら読書をし、なかやまきんに君の世界一楽な有酸素運動を1日1回実践し、不謹慎だがわりと有意義な闘病であった。

困ったことといえば味覚障害。
味覚がなくなるというのはよく聞くが、わたしの場合、治った後1週間くらい、やたらと塩気を敏感に感じ何を食べてもしょっぱくて、不思議だった。


で、インフルエンザ。こちらがかなり手強かったのだ。
40度超えの熱が三日続いて、そのせいで目に映る天井はダリの絵のように歪み、ゆっくり回り続けていた。
さながらテーマパークのアトラクション無限ループ。
乗ってもいない車酔い状態。
今回はきんに君の出番はなかった。
コロナ禍に増えたまま戻らず、不動の数値を貫いていた体重が2キロ落ちたことには弱々しく小躍りしたが、そんなステップも虚しく1週間でしっかり元に戻った。
そして喘息が悪化して咳と声枯れが治るまでひと月以上要した。


風邪の時の食べ物は、といえばやはり消化に良いものがいい。
きっと内臓も弱ってるし。
うどんとかお粥とか、そのあたり。
わたしはもともとお粥が好きなこともあり、小さい頃は白粥やおじやを母にねだり作ってもらった。
他に欲しいものは、と聞かれたときは決まってゼリーを所望した。
(姉はプリン派だった) 


インフルエンザの運び屋だったパートナー(本人は軽症で終わった)にとりあえず高熱でも摂取できそうなものを買ってきてもらい、それらの物資を携えて部屋に籠った。

とにかく食欲がなく、でも薬を飲むためと早期回復のために栄養摂取をと、ひたすらヴィダー的ゼリー飲料を胃に送り込んでいた。
小さい頃は嬉しかったはずのゼリーも全く嬉しくなかった。

ここで大人になってから床に伏すたびに燻る思いが煙を上げ始めた。

何故、もれなく甘いのだ。
栄養系のパウチ飲料は。

甘くないほうじ茶味とか……そう、お粥味とかでいいじゃないか。
それはもう普通にお粥だ、という方もいるだろう。
だがそれは違う。
病魔と戦うためにもメーカー様の技術にて栄養をプラスしてスペシャルな感じにして欲しいのだ。
ビジネスマンは週休2日になっても、病魔とは24時間戦い続けているのだから。
(懐かしのブラックCM)

汗をどんどんかくので、普段真夏のスポーツ時にしか飲まないスポーツ飲料も無理やり飲んだ。
これも甘い。

喉が痛いので飴を口に含む。
甘い。
ハーブ味だろうが、お茶味だろうが、ミント味だろうがどれもとりあえず甘い。 
(ミント飴に至ってはマスクした状態で食べたばかりに目に染みて悶絶というオプション付き)

もう、風邪のときに摂取するものの全てが甘い!!!
うがぁぁーーー口の中が甘いィィ!
糖はエネルギー。分かってるけど。
分かってるけど!

そうだ。

宇宙食がいいんじゃないだろうか。
無重力で食べることを前提としているわけだから布団の中で食べても散らばりにくいだろうし、栄養あって、今や種類も豊富だというし。
ただ、そこらのスーパーやドラッグストアには売ってない、仕様上値段も高い、つまり……残念だが現実的ではない。

であれば。

離乳食ならどうだ。
素晴らしい閃きだとおもったが、なんとなく矜持を傷つけられる気がする。
こんな時にも私に大人たるプライドがあったとは新たな気付き。

そんなことを考えつつ普段から手拭きとして愛用しているベビー用お尻拭きで汗を拭った。

全てのメーカー様に告ぐ。
諸々、甘くないやつお願いします!
諸々、甘くないやつお願いします!



そんなこともすっかり過去のものとして記憶から薄れつつあった先日、離れて暮らす姉からLINEが届いた。

熱がでた。と。

滅多に熱を出さない彼女が38度だという。
絶対インフルだと思いつつ、電話をしてから病院へ行くべし、と促した。
姉は両親と暮らしているから身の回りのことは心配ないだろう。

翌日、やはりインフルエンザだったとの連絡。
報告の熱は39度近くまで上がっていた。

消化に良いものをとってゆっくり休めと返信。

数時間後姉からの連絡。
「夕食に寿司を勧めてくる◯◯(母の名)」

どうして。
百歩譲って、ちらしか稲荷かと思えば握り寿司だという。
姉も流石に狼狽えたらしいが、対する母の答えはさらに想像を超えてくるものだった。

「さっぱりして良いと思って。冷たいから気持ちいいかなって」

母は元々とぼけたところがある。
あるんだけども。
体力低下時のナマモノの摂取はリスキーだ。
大体、寿司の冷たさが気持ちいいなどという奇天烈な発想はどこから来たのだ。
菱沼さんですらアイスで涼をとっていたというのに。(動物のお医者さん参照)

姉はその日貰い物のレトルト玄米粥と栄養ドリンクを摂取したそうだ。

そして翌日。
元気かと尋ねると、37度台後半まで下がってきているとのこと。
流石の回復の速さ。安堵。
するとさらにこんな連絡が。

「◯◯(母)が餅とかイカご飯とか難易度の高いものばかり勧めてくる」

だからどうして。
餅は潰してるし……消化にいいの、か?
分からなくなってきました。
ところでイカ飯って通常メニューとしても珍しいのでは。
うちは漁師ではないし、イカ釣りの季節でもない。
しかも父は父で、出先からお見舞いと称して焼き芋買って帰ってきたらしく。
乾いた体に焼き芋。
MU・SE・RU
(多分自分が食べたかっただけだろう)

しかし、離れて暮らす間にうちの親に何があったのだろうか。
分からないけれど、とりあえず姉は順調に回復しているようだった。
お腹も壊していないようで、それも本当に良かった。

そしてまた姉から連絡がきた。

「◯◯(母)がお粥炊こうか?って言ってくるけど高熱の時は寿司で、回復したらお粥why」

勇気を振り絞って母に電話してみようと思う。

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