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【情報更新】勤労感謝の日だしあの仕事した人にお礼言いに行ってみた

■勤労感謝の日ということなので

みなさんもXで目にしたことはないだろうか。

店員さんの粋な計らい、ありがたすぎるサービス、天才が社内にいるとしか思えない商品など名仕事を報告するポストの数々。
エピソードももちろんだが、それをSNSに書き込む人の心も素敵で、リプライまでしっかり読み切ってしまう方もきっといるはず。

名前もわからない誰かの仕事にこうして光が当てられるSNS時代だからこそ、せっかくならその仕事した本人まで届いてほしい。

勤労感謝の日だし、『はたらいて、笑おう。』を掲げるパーソルとして、SNSでみつけた名仕事の本人を探し、実際にお礼を届けることにした。

ということでひたすらにXで調べ続けると、このポストが目にとまった。

■この天才としか言いようがない席の解説

念のため、この席を作った人が何をわかっているか解説すると、
通常のフードコートで見られる子ども椅子は、こう。

赤ちゃんの真横に大人が座るため、食事中なかなか目線が合わない。

しかしこの天才席は子ども椅子が丸ごとすっぽり正面にはまるため、
子どもと目を合わせながら食事ができるのである。
 
このツイートに対しても多くの人から「これはありがたい」「親1人子1人でもフードコートに行きやすくなった」などの反響が寄せられていた。
実際に子育てしているメンバーも「これはいい」と大絶賛。

ということで私たちはこの席をつくっている人が誰なのか突き止めることにした。

■あの席誰にお礼言ったらいいですか

家具とか什器の会社は無数にあり、それぞれの商品数もかなりある。
「子供 椅子 話題」とかで調べたらすぐ出るでしょ?と思っていたらただただネットサーフィンして4時間が経った。
そもそもこれ、椅子なのか?テーブルなのか?ジャンルすらもわからない。

もうこうなったら施設に聞くしかない。
幸いこの画像が撮影された場所はテラスモール松戸とすぐに判明したため問い合わせた。

①   テラスモール松戸さん

早速テラスモール松戸に問い合わせたところ、事実を確認するために時間が必要とのこと。確かに「ここの椅子作った人誰ですか?」なんてピンポイントすぎる質問、今まで全くされたことがないだろうからご担当者さまは驚いただろう。

申し訳ない気持ちであの席の画像を再度検索してみると

あの椅子を、違う商業施設でも発見。
なんとここにもあったのか……と藁をも掴む気持ちで、この画像元の住友不動産 ショッピングシティ 有明ガーデンさんに問い合わせてみた。 

②   住友不動産 ショッピングシティ 有明ガーデンさん

するとすぐにお返事が。

折れかけていた心が丸山さんのお言葉で回復する音がした。

この丸山さんが我々椅子捜索隊の冒険を大きく進める出会いとなったのである。本当にありがとうございます。丸山さん。
この後数回のやりとりで判明したことを要約すると、

・あの席の椅子は既製品で、割と多くの商業施設で使われているもの。
・そのため椅子自体ではなく、奥行きが広く椅子が入る穴を開けた机を施工した会社を当たった方がいい。

なるほど…!!
私たちは必死に椅子を作った人を探していたが、実は探すべきは【机】を施工した人であったのだ。
我々は椅子捜索隊ではなく、机捜索隊であるべきだったのだ…!!!

私たちは再度テラスモール松戸の施工会社を辿り、株式会社船場さんに行き着いた。

③   株式会社船場さん

これ誰がつくったんですか?というお問い合せをしまくってはや3社目。さすがに会社のお問い合せフォームの位置をさがすのもうまくなってきた。

目次メニューの一番下にあるタイプで、すでに心遣いを感じられる。

スムーズな問い合わせを終えて待つこと1日。
我々の元に1件のメールが届いた。

今社内で当時のことを知るものを探しております だと…!!!
これはかなり核心なんじゃないかと机探検隊としての嗅覚が騒ぐ。

その後お電話口で
「あの席を施工したことがある者が弊社内におります。」
と待ち侘びていた一言をいただき、我々は紆余曲折を経て、ようやく、あの席を作った人に会えたのである。

■あの席作った人に本当にお礼を言いに行った

エレベーターを降りて、株式会社船場にたどり着くとそこはオリジナリティーあふれるインテリアの数々。

これはあの席を作っていそうな会社だ、だって会議室が「CREATIVE ROOM」という名前だぞ…と期待に胸を膨らませて入室すると、

私たちはとうとうあの席を作ったというお二人にお会いできたのである。

左からデザインディレクターの小田さんと南さん

パーソル(以下パ):本日はどうぞよろしくお願いします。この席のお礼を言いに、参りました!!

南さん:いやー、実際にお礼言われることなんて全然ないので、めちゃくちゃ嬉しいです。

●この席が設置されるまでの経緯

パ:まず、この席がどういう経緯で作られたのか教えてください。

小田さん:テラスモール松戸の設計担当者は残念ながら退職しているのですが、この席が生まれた経緯について知っているので、それについて話しますね。
この椅子はある商業施設を建て替える際、既存のお客さんたちへのヒアリング会で、お母さんたちから「子連れだとフードコートに入っても落ち着いて食事ができない。」と声が上がったのがきっかけで生まれました。

南さん:で、フードコートをどう改善しようかと相談していたところ、ベビー休憩所や授乳室に10年以上前から取り入れられているこの席に目をつけたんです。

パ:0から作った、というより元からあったものをフードコートに持ってきたのが発明だったんですね!

小田さん:そうなんです。でもフードコートを設計する上で最も重視されるのは座席をいかに効率よく多く設置するかなので、この席のスタイルはそれに逆行しているんですよね。設置金額も普通の子ども椅子より少しコストもかかりますし。

南さん:今でこそ反響が上がってきているのですが、当時は実績も少なかったので、導入するにあたっては、なかなか説得のハードルが高く。でもいろんな商業施設へ視察を重ね、家族や子どもの様子を観察を続けるうちに、やはりこの席はかなりいいのではないかと確信が生まれてきました。

●この席のいいところ

パ:このツイートにも「わかってる」とありますが、具体的にはどのような点がいいのでしょうか。

南さん:まずお子さんの安心感ですね。通常の子ども椅子だとサイズが合わなくてずれてくるのですが、この席は穴にすぽっとはまるので、固定度が高くてより安全です。
そして次に大きいのがお母さんお父さんの食事の時間が確保できることですね。

パ:食事の時間が確保…?

南さん:はい、通常の子ども椅子と違ってこの席はお互いに正面で向き合う形なので、必ず自然にお子さんが親の視界に入るんですよね。だからお子さんから目を離して、自分のご飯をちゃんと食べる時間がうまれる。

パ:なるほど!確かに横づけの形だと子どもから目を離せず、自分の食事はおろそかになっちゃいますよね。

小田さん:そうなんです、僕の子どもにも座ってもらったんですけど、やはり安心感がある中でゆっくり親も食事できた感がありました。

パ:なるほど、これはもはやフードコートだけじゃなくて、普通に家に取り入れたいですね…。

南さん:ですよね!もし依頼があったらお問い合せください!!お家に施工しに行きますんで!!!笑笑

●この席の今後

小田さん:やはり評判はどこでもかなり良く、最初は導入の説得に苦戦したものの、今や逆にお願いされるケースも増えています。

南さん:私たちも今後、たとえばソファー席でゆったり座れる席でできないか、とかさらなるバージョンアップも考えています。
やっぱり自分たちが手掛けてがんばって作った場所が、自分を含め誰かの不便を解消したり、喜ばれたりすると嬉しいです。

▼結論とまとめ
『この席作った人は、わかっているどころか、素敵すぎる方たち』だった。

・この席を施工したのは株式会社船場さん。
・すでに取り入れられていたベビー休憩所や授乳室の席のスタイルを参考に、フードコートに取り入れた。
・この席のすごいところは子どもの安全性と、親の食事時間の確保。
・この席のバージョンアップも今後生まれるかも?

想像をはるかに超えるこの席をめぐるドラマに圧倒されながら、最後に
「この席を作ってくれて、ありがとうございました!!!!」
と全力のお礼を込めてポストをお渡し。

お二人は「ここはアナログなんだ(笑)」と言いながら受け取ってくださり、あのお洒落オフィスに飾ってくださった。

■#これ誰にお礼言ったらいいですか

せっかくの年に1度の勤労感謝の日。

誰かの仕事へのお礼を言葉にしてみると、その先の誰かにこうして伝わって喜ばれるかもしれないし、それをとりまくドラマに出会えるかもしれない。

パーソルは誰かの仕事にありがとう!を言いたいエピソードを 「#これ誰にお礼言ったらいいですか」 で募集する。

次回のnoteも集まった投稿の仕事をした本人を捜索し、実際にお礼を言いに行く予定。どうぞお楽しみに!


以下12月4日(月)に追記しました。

……というわけで、あの席を設置した人に会えたし、お礼も言えたし、と一息つきながらXで「#これ誰にお礼言ったらいいですか」のエゴサーチをしていたところ、一件のポストが目に留まった。

ここで思い出されるのは、船場の小田さんのご発言。

小田さん:ある商業施設を建て替える際、既存のお客さんたちへのヒアリング会でお母さんたちから「子連れだとフードコートに入っても落ち着いて食事ができない。」と声が上がったんですよね。

“元々あった椅子”の形をテラスモール松戸にて採用したというところまでは判明していたものの、これはまさか、その大元の発案者が見つかったのではないか?
もしかしたらこの椅子の核心に近づけるのではないか?

我々は日野さんにDMをお送りした。

■あの席へお礼へ行ったその後

今回ご連絡をくださった、日野佳恵子さん。株式会社HERSTORYの代表取締役として、女性視点マーケティングの開発及び普及に取り組む。著書『女性たちが見ている10年後の消費社会』(同文舘出版)。

すると、日野さんは、快くこの子ども椅子の発案までの経緯について教えてくださった。

このお話は日野さん著書の『女性たちが見ている10年後の消費社会』にも記載がある
(画像は本人許諾のもと掲載)。

日野さん:私が代表取締役を務める株式会社HERSTORYでは、地域の女性たちを集めてヒアリングし、ビジネスに活かす「ミセサポ」という活動を受託運営していまして、この子ども椅子は、その中の声から生まれたものです。

日野さん:オープンを控えたイオンスタイル豊田の当時の井上店長が、何気ないママたちの声をきちんと拾い、実は、この椅子だけではなく、「わかってる」をたくさん実現されました。
たとえば、二人の子どもが乗るカート、ママのための駐車場など。ご自身も一人のパパとして、社内の調整や交渉を賢明にしてくださったんです。

小田さんが仰っていた「ママたちへのヒアリング」とは、日野さんたちが主催で行っていたものだったのか……。子ども椅子が生まれるまでのピースがどんどん埋まっていく。

そしてなんと日野さんは、当時のイオンスタイル豊田の店長だった井上さんにコンタクトを取ってくださったのだ。

その早さがまた凄まじく、我々が日野さんにご連絡してまだたった3時間しか経っていない。イオンスタイル豊田のオープンは2017年。今から6年も前のことなのに、当時の熱量と思いの強さに我々はただただ感服させられた。

当時イオンスタイル豊田の店長だった井上良和さん。
現在はイオンリテール㈱ 東海カンパニー デジタル・営業推進部の部長。

井上さん:ママと子どもにやさしい日常が広がり、生活が豊かに便利になることにつながっていることが何よりも喜ばしく思います。

当時、ミセサポで私が提起した課題は、施設で子どもにどのようにご飯を食べさせるか?という問いかけです。 ママたちと議論する中で私が共感したキーワードが「ママと相対することで子どもは落ち着く」「子どもがお腹すいているときは、パパ・ママもお腹空いている」でした。

そのミセサポでママたちから出た意見をどうしたら解決できるかを考えて、ひらめいたアイデアが「にこにこカウンター」です。建設のメンバーに具体的に伝え、試行錯誤を繰り返しながら開発に至りました。店がオープンすると、瞬く間にママからの喜びの声を多くの声が届き、SNSなどでも拡散されました。お客さまに喜んでいただけたことが、何よりも嬉しかったです。

当時、これまでにない取り組みだったため、実現できるか難しいところでしたが、開設委員長としてママと子どもにやさしい店づくりをしたいという思いでやり遂げました。

2017年9月に開業したイオンスタイル豊田。
この席は、開店時より「にこにこカウンター」という名称でフードコートに導入された。

ほかにも井上さんは、子ども椅子だけでなく、妊婦さん向けに妊娠期に欠かせない栄養素である葉酸入りのベビーリーフやカフェインレスの商品の扱いの増加や、子どもが遊べるコーナーの隣にはママ友会が開けるようなブース席を設置するなど、さまざまな新しい取り組みをイオンスタイル豊田で実施されたそうだ。

実際に「にこにこカウンター」で食事をする親子
(提供:イオンリテール㈱ 東海カンパニー)

▼結論とまとめ②
『この席を開発した人は、わかっているどころか、素敵すぎる方たち』だった。

・この席を商業施設のフードコートで最初に取り入れたのは「イオンスタイル豊田」
・ママたちのヒアリングを株式会社HERSTORYが実施している「ミセサポ」にて実施。
・これまでにない取り組みであったが、当時の店長をはじめとした熱量で実現された。

改めて、株式会社HERSTORYの日野さん、イオンスタイル豊田の井上さん、そこに関わってくださった皆さん本当にお礼を言わせてください。ありがとうございます!!!

井上さんのコメントでいただいた「子どもがお腹すいているときはパパ・ママもお腹空いている」というお言葉や、実現までの熱量に本当に胸が熱くなった。

たった1つの仕事を称賛するツイートを遡ったらこんなドラマがあるなんて、仕事の奥の深さというか、自分の身の回りのもの全てが仕事につながって、その先には誰かの思いがあるんだ、と当たり前のことを身をもって実感できた。

さて、今回はプロジェクトの発信を通じて続編が生まれたが、次回のnoteも集まった投稿の仕事した本人を捜索し、実際にお礼を言いに行く予定。どうぞお楽しみに。

引き続き「#これ誰にお礼言ったらいいですか」で、ぜひ身の回りの名仕事をお待ちしております。

▼これまで集まった#これ誰にお礼言ったらいいですかはこちら

(文:「#これ誰にお礼言ったらいいですか」プロジェクト事務局メンバー)