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No.125 2000年~ 日本NIE研究会の設立と活動 実践と理論の一体化を模索して

 今までNIEに関するエッセーは以下のように書いてきました。
No.17 1987年 教員人生のターニングポイント 社団法人日本新聞協会の冊子『ご存じですか NIE NEWSPAPRE IN EDUCATION』が職員室の机上に 
No.24 1992年5月 初めての国際会議参加、外国の教室での授業参観
No.120 1989年 メディアリテラシーとしてのNIE起点の授業 5年生社会「新聞とともだちになろう」初等科教師9年目の実践
No.122 1992年~2012年 外国のNIEから学ぶ旅
No.123 1994年~2012年 外国からのゲストが私の教室に
 
 その中で、2000年以前のエッセーに関するものは日本新聞協会の活動の中で私個人として経験したことが中心の記述でした。2000年以前にNIEの活動してきた新聞関係者・教育研究者・教師の中に、より研究的にNIEを進める研究グループができないかという志を同じくする人たちで全く新しい研究グループが設立されました。それが2000年8月に誕生した日本NIE研究会でした。
 今回は日本NIE研究会の設立と活動の経緯をご紹介致します。
 第1回のNIE研究会は2000年8月22日~23日山梨県清里の清泉寮で行われました。清泉寮は私が勤務している聖心女子学院初等科の5・6年生が毎年3泊4日で校外学習を行っているキリスト教聖公会の施設です。1990年台初め環境教育の研究会が清泉寮を会場に行われていたのに数回参加した経験があり、自然が一杯の中で美味しい食事をとり研究会を行えば実りある研究や懇談が行われるのではという意図で清泉寮を会場にしました。研究グループ名を「日本NIE研究会」、会の名称を「NIE清里フォーラム」としました。
第1回「NIE清里フォーラム」は主に次のプログラムでした。
講演「これからのNIEはどうあるべきか」妹尾彰氏(元日本新聞協会初代NIEコーディネーター)
講演「新聞は信用できるか」吉田伸弥氏(元読売新聞編集委員)
講演「教育界から新聞界へ求めるもの」影山清四郎氏(横浜国立大学教授)
 18人の方が参加され、講演を巡っての質問や意見交換、研究会で今後研究していきたいテーマなどの討論、夜は会員による懇談会など大いに盛り上がりました。
第2回大会は2泊の予定が台風接近のため1泊に変更されましたが、2泊分のスケジュールをこなすハードな大会になりました。実践報告とパネルディスカッションが行われました。
第3回大会以降は第11回まで2泊で行われましたが、2011年の第12回から2019年の第20回大会までは1泊に縮小されました。これは夏休み中とはいえ先生方の勤務状況が厳しくなり1泊がやっとということが理由です。
基本は先生方の実践報告とゲストの方の講演やパネルディスカッション、ワークショップなどで構成されました。
2020年から2021年までの2年間は新型コロナウイルスの影響で中止になり、2022年からは会場を横浜の日本新聞博物館にうつして「NIE横浜フォーラム」の名称で1日のプログラムを実施しています。2024年からは再設立の意識で研究会のホームページも立ち上げフォーラムを中心とした新たな活動に取り組む予定です。
現在私は「日本NIE研究会」の会長に就いています。2016年頃から会長の妹尾彰氏の会長代理になり2018年頃から会長を引き継いでいますが、十分職責を果たせず申し訳ない気持ちで一杯です。
 
 「清里フォーラム」「横浜フォーラム」以外の研究会の様子をご紹介致します。
1)NIE関係の書籍出版
 2冊の著書を出版しました。
日本NIE研究会著『新聞でこんな学力がつく』(東洋館出版、2004年4月)
日本NIE研究会著『新聞で育む、つなぐ』(東洋館出版、2015年5月)
『新聞でこんな学力がつく』は編集委員、『新聞で育む、つなぐ』は編集代表を担当しました。

 『新聞でこんな学力がつく』は新聞を活用することでどのような学力がつくかを考察したものです。当時、子どもたちの学力をどのように高めるかが教育の大きな課題になっていました。読解力・表現力・コミュニケーション力・社会力などの育成に繋がることを提起しました。

『新聞で育む、つなぐ』は東日本大震災の災害を風化させないために新聞を活用した学習を継続的に行うことと共に、教科書の中の新聞がどれだけ発展的に活用されているのか、学校以外の場でどれだけ新聞が活用されているのか、先生方や保護者はどれだけ新聞に関心をもち教育しているのか、ネット社会の中で新聞はどのように活用されているのかなどについて提起しています。
 
以下の国内交流、交際交流は主に『新聞で育む、つなぐ』からの引用です。
2)国内交流
 第1回は2003年3月30日、会員6名が大阪の実践教師と交流しました(会場は日本新聞協会大阪事務所で参加26名)。
 第2回は2003年8月12日、清里フォーラム閉会後山梨の実践教師や母親と交流しました(会場は清泉寮で参加16名)。
 第3回は2005年3月26日で会員10名が仙台を訪れ宮城県の実践教師と交流しました(会場は河北新報本社で参加35名)。
 第4回は2006年3月25日、会員17名と実践教師8名が東京に集まり交流しました(会場は日本プレスセンターで参加者は25名)。
 第5回は2008年3月29日、会員10名が角館を訪れ秋田県実践教師17名と交流しました(会場は樺細工伝統館で参加者は27名)。
 第6回は2013年3月23日、東京で会員と参加者で交流しました(会場は読売新聞東京本社で参加者33名)。
 
3)国際交流
(1)日韓交流
 第1回日韓交流は、日本NIE研究会が2001年1月25日から28日まで訪日した韓国新聞活用教育学会15名のホスト役を務めました。日本教育文化財団NIE全国センター(当時)の見学や藤沢市立長後中学校や聖心女子学院初等科の授業参観、読売新聞東京本社を見学しました。交流会では「学校と家庭でのNIE」をテーマにパネルディスカッションを行いました。
 第2回日韓交流は、2001年3月24日から27日まで日本NIE研究会8名がソウルを訪れました。中央日報社が開催する「NIE指導者養成セミナー」を見学した他、高陽(ゴヤン)市白馬(ペンマ)中学校やソウル市九宣(クーダン)小学校の授業を参観しました。
 第3回日韓交流は、2002年1月25日から29日まで韓国新聞活用教育学会の10名が東京を訪れました。朝日新聞社との共催で「日韓のNIE活動を考える」のテーマでシンポジウムが開かれました。一行は横須賀市立鴨井小学校と福生市立福生第一中学校の授業を参観しました。
 第4回日韓交流は2004年3月27日から29日、日本NIE研究会12名がソウルを訪れ、陽川(ヤンチョン)図書館、景城(キョンソン)高等学校でのNIEを視察しました。韓国では生涯教育としての「図書館でのNIE」が進められ多くの母親たちが熱心にNIEに取り組んでいました。
 第5回日韓交流は2005年1月23日から25日まで韓国新聞活用教育学会の16名が訪日しました。日本側は京都NIE推進協議会の協力を得て、京都を会場にしてNIEについて話し合いました。
 第6回日韓交流は2007年3月24日から26日まで日本NIE研究会6名がソウルを訪問しました。明知(ミョンジ)外国語高等学校では日本の高校教師2名が通訳付きで授業を行いました。
(2)日米交流
 2003年11月1日から3日まで、読売新聞社との共催でベティ・サリバン氏を招き、東京・大阪で日米交流を行いました。東京での交流会は「第8回読売NIEセミナー」として開催され、サリバン氏は「NIEの未来に期待する」という題で基調講演し、その後シンポジウム「日米NIEの課題」が開かれました。大阪での交流会「第5回新聞と教育・読売セミナー-日米のNIEを考える」はサリバン氏の基調講演に続きシンポジウムが行われました。サリバン氏は大阪教育大学附属天王寺中学校と宝塚市の小林聖心女子学院小学校を訪問し、NIE授業を参観しました。
 
 2000年から2019年までの20年間はフォーラム、出版、国内交流、交際交流と民間の一研究会としては充実した研究を行い、日本のNIE研究に大きな役割を果たしたと自負しています。
 2000年から2001年までの2年間は活動が休止されましたが、2022年から2023年までの2年間は横浜フォーラムを開催し今後の再設立に向けての動きが出てきました。2024年は日本NIE研究会創立から25年目のフォーラムになります。創立四半世紀の記念すべき年に大きな成果を挙げ未来へ繋ぐ大会になれるよう努力していきます。

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