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愛しているって叫んでしまう

好きになるっていうことは
あなたのその優柔不断で実は頼りがいがないところとか
スマホゲームとかずっとして一日を無駄にした気分になって落ち込んでしまったりする馬鹿な人間らしさとか
おびえた子犬みたいな声をだすのがうまいところとか

そういうところも全部含めて、まぁいいかって愛せる人ができることだと思っていて、あなたはそういう人だと思っていた。

言葉にしてみると大変陳腐でまぁ大変。本当にこんなこと、信じて疑わなかったんだな私。馬鹿みたい、というか馬鹿だったんだろう。

紘一はいつも冷たい銀の鎖のネックレスをしていて、めがねと地味なTシャツが似合う彼に、全然似合っていなかった。

でも似合っていないなぁと思うだけで、特段どうこうしたいとか思ったことはなかったんだけど、昨日、つい昨日、許せなくて。

いつもの癖なのに、紘一が外したベルトを適当にソファに置くことはいつものことなのに、どうしても気に入らなくて。
それのせいですべてのダムが決壊したように。

言っちゃったのね、そんなもの似合ってないのにって。
そんなの、1mmも似合ってないのにって。
それに、許せないこと、いつも何気なく「変えてほしい」ってお願いしてること全部、もう一度されたら最後、本当に許せないからって、叫んでしまったのね。

あれが激昂ってやつなのね。
私の定義からするともう”好き”ではなくなったんだと思うのね。だって、まぁいいかって思えなくなってしまった。

その銀の鎖何って、聞いてしまいたくなったのね。
どういうわけか、聞かないでおこうって決めておいたこと。触れちゃダメだって思っていたこと。

「これ、真由のネックレスのチャームがとれちゃったやつ、鎖だけこっそりもらったんだ。いつも一緒に居られるような気がして。」

単純な私、端的な私、愛してるって叫んでしまう。
これこそ激昂。ねぇ、聞こえた?

#小説 #愛している #好き #掌編小説 #短編小説

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