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【タイ・音楽の旅2023】8日目:火が灯される灯篭船と学生たちによるイサーン音楽の演奏

2023年10月28日

ナコンパノム2日目。イサーンの朝は当然だが、バンコクのように車の往来が激しい場所ではないので、時間もゆったり流れていて、気分が落ち着く。

この日は急いで起きなければならない用事は特になかったので、昼近くまでベッドの上でSNSなどを見ながら少しゆっくりする。Facebookでフォローしているナコンパノムのページには、次の日のライ・ルア・ファイのスケジュールがアップされていた。18時から12隻が流されるようで、かなり長時間のイベントになりそうだ。

実際にはこんなにきっちり進まなくて、かなり押し押しになった

外が明るい内にやっておきたい事が1つあった。それは30日にノーンカーイへ移動する際のバス(ミニバス)の発車時間を調べる事である。多分、本数が少ないであろうから、1本逃すと時間が無駄になってしまう。

宿からバスターミナルへは歩いても行ける比較的近い場所にあったので、昼食がてら、ノーンカーイ行きの車の時間を調べに行く事にした。

バスターミナルの近辺にはいくつか食事が出来る場所があった。その中からカオマンガイをメインに出しているお店をチョイスする。なかなか人気のある店のようで、ひっきりなしに人が出入りしていた。

カオマンガイは好きなメニューなので、よく食べるのだけど、いつもはノーマルなカオマンガイを食べる事が多いので、この日は気分を変えてカオマンガイ・トートにしてみた。

カオマンガイ・トートは揚げた鶏肉がご飯の上にのっている

やはり人気店だけあってなかなかの味。このお店、カオマンガイが売りのようだけど、メニューがかなり豊富で、中にはあまり見かけた事がない「豚の耳のヤム」なんてのもあったりして、興味をそそる。次回また来る機会があれば、挑戦してみよう。

豊富なメニューが壁一面に貼られていた
壁に描かれた絵を見ると、このお店は屋台からスタートしたようだ

食事の後はバスターミナルに寄って、ノーンカーイへ行くバスの発車時刻を確認する。ナコンパノムからノーンカーイへ行くには、ウドンタニーで乗り換えて行く方法を考えていたので、ウドンタニー行きのバス乗り場を探すと、すぐに発車時刻が書かれた看板を見つけた。それによると、1本目は6時に出て、それ以降は3時間おきにしかバスはないようだ。

ウドンタニー~ナコンパノムのミニバス時刻表。この時見逃していたが、ノーンカーイを経由することが書かれている。

ウドンタニーへは結構時間がかかるはずなので、早めの車に乗っておきたかったのだが、さすがに6時の便は厳しいので、9時発のバスの乗る事に決める。

とりあえず重要なミッションは済んだが、時間もあるし、すぐに宿に戻るのはもったいないので、ちょっと遠回りして散策してみた。

そういえば4年前にひとつ心残りだった事があったのを思い出した。それはナコンパノムを去る時に乗っていたサムローでバスターミナルに向かう途中、CDショップを見つけたのだが、時間が無く立ち寄る事が出来なかった事である。

何となく場所は覚えていたので、記憶を頼りに歩いて行くと、意外とあっさり見つかった。しかし、お店の中は寂しいもので、ほとんどの品物がほこりをかぶった状態。新しいCDやMP3が発売されていないせいもあるが、古いCDばかりで、しかも日焼けしてしまっているものも多数あった。お客さんもほとんど来ないのだろう。

MP3を1枚か2枚でも買ってあげようかと物色してみたのだが、残念ながらピンとくるものが無く、店主には申し訳ないと思いながらも、手ぶらで店を出てきてしまった。

一旦宿に戻り、しばらく部屋でのんびりして、この日は少し早めの17時半頃にメコン川に向かった。18時過ぎから灯篭船が2隻出る予定になっていたので、早めに行って状況を確認したかったであるが、外が明るい内なら野犬も大人しいからという理由もある。

時間的に早かった事もあって、県庁周辺の出店が出ている所は、まだそれほど人出は多くなかった。しかし、あと1、2時間もすれば歩くのもままならないほどの混雑になってくる。

メコン川に行ってみると、灯篭船を待ち構える人で川沿いの階段はすでに埋め尽くされていた。ただ、まだこの日は前夜祭であるので、この程度で済んでいるのだが、次の日になれば歩く隙も無くなる。

本番前日なので灯篭船は2隻しか出なかったが、多くの人が川沿いで場所取りしていた
灯篭船の原型。現在のように巨大化する前はこのような形だった。

18時過ぎると良い感じに日も落ちて、船がある方へ向かうと、ちょうど火が灯され始めた所だった。ビックリしたのは、人が一つ一つロウソクに火をともしている事である。

写真だと分かりにくいけど、灯篭船は本当に大きい。全長は70~80mもあり、高さは20~30mにも及ぶ。そこに2~3万個のロウソクが設置されているのだ。それにひとつひとつ火を灯す訳だから、それなりの時間がかかる。

火が灯され始めた灯篭船
このように人がひとつひとつ火をつける。高い場所でも命綱はつけていない。
徐々に形になり始めた灯篭船。左下に立っている人からも船の大きさが想像できる。

だいたい10人前後で作業しても、全部に火が灯されるには20~30分ほどかかっていた。そして、本物の火が使われているので、風が強かったりすると、時には燃えてはいけない所に火がついてしまう事もある。この日も一時、黒い煙が出てしまった場面もあった。

黒い煙が出てしまった船。この後すぐ消し止められ、事なきを得た。

下手すれば船全体が燃えてしまう危険性もあるこの灯篭船。それだけに、全部に無事火が灯されて、それがメコン川を流れていく様は本当に感動的だ。

すべてのロウソクに火が灯された船はいよいよ出航する。ゆっくりと向きを変え、船を待つ人たちがいる方向へと動き出した。

すべてのロウソクに火が灯された船
岸を離れ東方面へ進んでいく
途中で何発か花火が打ち上げられ、観客からは歓声が上がる
程なくして、もう1隻も火付けが完了して、出発していった

写真では揺らめく火や動く船の様子などが分かりにくいと思うので、現場で撮影した動画を参考にご覧いただければと思う。

前夜祭での2隻は無事出航したので、前日学生たちのステージが行われていたナーガ像の下へ場所を移動することにした。

船を見ていた場所からそのナーガ像のある場所までは約1kmほどだったので、何もなければ歩いて10分前後で行けただろうが、いかんせん多くの人が川沿いを埋め尽くしていたのと、途中展示物やモーラムを歌う小さなステージなんかもあり、そういうのを見たりしていたので、着くまで結局30分弱かかってしまった。

小型の灯篭船は皆が願い事を書いた紙を添えて川に流す
籐で作られたナーガ。ナコンパノムには至る所に川の守り神であるナーガの像がある。
屋台が並ぶエリアは沢山の人で、急ごうにもなかなか前に進むことができなかった

ようやくナーガ像の下にあるステージに到着した頃には、20時半を周っており、ステージでは学生たちによるイサーン伝統音楽の演奏が始まって、しばらく経っていた。

この日演奏していたのは、前日のウテーン・パッタナー学校と同じターウテーン郡(อ.ท่าอุเทน)にある、チアン・ユーン・ウィッタヤー学校(โรงเรียนเชียนยืนวิทยา)の生徒達である。

この学校のステージを観て印象に残ったのは、踊りや演出を非常によく考えてステージを作り上げていた事だ。演奏ももちろん素晴らしかったのだが、ビジュアルも含めて楽しめるように、監督をしていた人がよく考えて演出している事が、舞台を見ていて伝わってきた。

イサーンの日常を垣間見れる興味深いステージだった
優雅な踊りと艶やかな衣装が観客の目を引き付ける

演目はイサーンの日常生活や伝統行事をモチーフにしていた。農作業から発想を得た踊りや、祭事の様子を表すパフォーマンスなどがあり、外国人の僕にはイサーンの人たちの歴史や暮らしが良く伝わってきて、とても興味深いステージだった。

特に、後半にあった闘鶏を模したパフォーマンスは、本気で戦っていた事もあって、観客もおおいに盛り上がっていた。その様子は下に貼った動画にも記録してある。

闘鶏のパフォーマンスは学生たちも楽しみながら演じていた
最後は全員で記念撮影

非常にクオリティーが高かった事もあるけど、何よりも学生達が楽しそうに演じているのが印象的で、思い出に残るステージだった。

終了した時には22時を過ぎていた。とは言え、いつもコンサートが終わって宿に帰ると24時を過ぎているので、これでもかなり健全な方だ。

ナーガ像の近くにあったお店で食事をして、前日と同じように暗い道を野犬におびえながら帰らなければならないのかと、ちょっと憂鬱な気分だったが、運良くナーガ像の下で客待ちをしていたサムローが何台かいた。

ホテルの場所を伝えると、すんなり「OK」だという事で、野犬の心配からも解放され、無事宿に帰ってくることができた。時間はまだ24時前だった。


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