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中医薬の使用はSLE患者の肺炎リスクの低下と関連しますか

はじめに
全身性エリテマトーデス(SLE)は複雑な臨床症状を呈する自己免疫疾患です。SLEは腎臓や神経系を含む全身のシステムに影響を及ぼす可能性があります(Kiriakidou and Ching, 2020)。SLEの世界的な有病率は10万人あたり約30~50人と推定され、発展途上国での有病率は、より高いと考えられています(Ingvarsson et al.) 10年生存率は約90%、15年生存率は85%、20年生存率は78%であり(Durcan et al. )、現在のSLEの治療は、グルココルチコイドと免疫抑制剤が主流です。しかし、これらの薬剤は二次感染(27%)、高血圧(11.3%)、骨粗鬆症(7.5%)などの副作用を、しばしば引き起こします(Tektonidou et al.)。

副作用である感染症と、ループス腎炎はSLEにおける主な死亡原因です(Sciasciaら、2017)。食品医薬品局からSLEの治療薬として初めて承認された生物学的製剤であるベリムマブは、標準治療と併用することで、一部のSLE患者の疾患活動性を緩和することができ、プラセボと同様の安全性プロファイルを有することが臨床試験で示されています(Stohl et al.)。 先制攻撃的治療(pre-emptive antimicrobial therapy)やワクチン接種が感染症予防のコンセンサスとなっていますが、肺炎などの特定の感染症の発生率は依然として高く、避けられません(Oku et al., 2021)。したがって、SLEの軽減や感染症の予防において、安全性が高く有効性の高い臨床治療薬や薬剤の開発が急務となっているところです。

中医薬(TCM)は、SLEを含むいくつかの自己免疫疾患(TCMでは痺証(Bi  Syndrome:Arthralgia Syndromeと同義)と呼ばれる)の治療に用いられており、数千年にわたり重要な臨床効果を示してきました(Wang et al.)。著者らは以前、856人が参加した13の無作為化プラセボ対照試験のメタアナリシスを行い、中医薬がSLE患者の疾患活動性をコントロールし、グルココルチコイドの使用量を減らすことができることを明らかにしました(Wang et al.)。 台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)に基づく集団ベースのコホート研究により、中医薬を併用した定期的な治療が、SLE患者の生存率を改善するというエビデンスが得られました。この研究では、 知柏地黄丸、加味逍遥散、六味地黄丸、甘露丸、銀翹散など、いくつかの有用な中医学処方が含まれていました(Ma et al.) しかし、中医学がSLE患者の感染症リスクを軽減できるかどうかを評価した研究はほとんどありません。

著者らの知る限り、SLE患者における中医薬治療と肺炎リスクとの関連を評価した大規模研究はありません。従って、本研究は前述の関連について何らかのエビデンスを提供することを目的としました。

エビデンス「中医薬の使用は全身性エリテマトーデス患者の肺炎リスクの低下と関連する:集団ベースのレトロスペクティブ・コホート研究」

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