イトウジュン

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最近の記事

無知は往々にして…

先日掲載した『進化思考批判集』のまえがきに引用した、ダーウィンの一節、「ignorance more frequently begets confidence than does knowledge」は実際にはもう少し長い文の一部です。正確には以下の通り。 ダーウィンの著作『The descent of man and selection in relation to sex』は何度も邦訳されています。 最初は神津専三郎によって明治14年に『人祖論』として訳されています。

    • 『進化思考批判集』PDF版「まえがき」

      『進化思考批判集』のPDF版を本日出版します。ダウンロードはこちら(約32MB)、無念の正誤表はこちら 紙の本は現在絶賛印刷中。本の流通、特にAmazonへの経路は把握しきれていないので、お届けできるのはもう少し先になるかもしれません。 予約していただいている方、お待たせしまくって申し訳ありません。 【24/1/5追記:東京丸の内の丸善さんが大量に、そして進化思考と並べて置いてくださっていますありがとうございます】 この本のために出版者登録をしたのが今年の頭のことでした。

      • オムライスと創作料理#12「ウィリアム・モリスというオムライス」

        『カラー版 図説 デザインの歴史』のプロダクトデザイン分野の担当者として声をかけていただいたので、担当章は後半に固まっているのだが、『02 アーツ・アンド・クラフツ運動』も1つだけ飛び地のように担当した。 普通分担執筆でそのような割り振りはしないので結構不自然に見えるというか、疑問に思われる方も実際に数名いたので、その辺りも含めて記しておきたい。 消滅しかける 実はこの章、全体構成検討中に一度消滅した章である。 後から振り返ると、モリスとアーツアンドクラフツの章が存在しな

        • オムライスと創作料理#11「見開きに収める」

          今回は文字数の話を。 『カラー版 図説 世界デザイン史』は『カラー版 図説』シリーズの本なので、初めから見開き完結スタイルであることは決まっていたが、図版の数や文字数は統一しているわけではないとのことであった。 執筆を終えて痛感したことだが、見開き完結スタイルはとても難しい。 字数制限の中で情報量を多くしつつも読みやすい文章としなければならない。 4コマ漫画や短編小説が難しい、というのと同じだと思う。 削ぎ落しが必要なのだ。 ものづくりもそうかもしれない。 「軽薄短小」に

        無知は往々にして…

          オムライスと創作料理#10「画像の使用許諾の問い合わせ」

          画像の利用許諾は通常は編集者に任せるものなのかもしれない。 しかし、今回は本文を書きながら画像選定も同時並行で行っており、また数が多いため、編集者にどの製品の画像許諾を依頼するか伝えるのも一手間かかる。 また文章の核となる製品の画像利用許諾が得られない場合、文章の構成自体を練り直す必要もありそうだったため、自分で直接メーカーとやりとりしてみることにした。 またやりとりの中で知らなかった情報が得られるかもしれないという期待もあった。 結果としては、大変だったな…という感想で

          オムライスと創作料理#10「画像の使用許諾の問い合わせ」

          意見書とその撤回を受けて(進化思考関連)

          例えて言うなら、 火は城下町を焼き尽くしたが、本丸は無傷のままであった。 というところだろうか。 経緯など私と松井実助教とで「『進化思考』批判」をデザイン学会で発表したのが6/26のこと。その後『進化思考』の著者太刀川英輔さんが7/6にデザイン学会に撤回を求める意見書を公開。その後の流れはまとめていただいている。 『太刀川英輔『進化思考』と,デザイン学/生物学研究者らの批判,著者からの応答など.』https://togetter.com/li/1923105 (学生から「こ

          意見書とその撤回を受けて(進化思考関連)

          オムライスと創作料理#09「特定の車種を探していたら、そこはキーウだった」

          『カラー版 図説 世界デザイン史』の図版は多くをWikimediaに依っている。Creative Commonsのありがたみを実感しつつ。 綺麗な写真が欲しい場合はAdobe Stockと123RFで購入した。 他にも探せばiStock(ゲッティ)のようにいくつか同様のサービスもあるのだが、123RF自体も出版社から教えてもらって初めて知ったくらいなので、Adobe Stock以外には123RFしか検討していないことをお断りしておく。 写真はどこで買えばいいか 折角なの

          オムライスと創作料理#09「特定の車種を探していたら、そこはキーウだった」

          オムライスと創作料理#08「画像多め」

          『カラー版 図説 デザインの歴史』発売から1ヶ月が経った。 それほど反応は多くないものの、目立つのは「カラーの図版が多くて良いね」というもの。 まあそれは著者の力量というよりは、出版社の企画に対する評価のような気もするが、図を選ぶのも集めるのも労力はかかっているので、素直に喜びたい。 企画を依頼された段階では「見開きに写真を7〜8枚」となっていたのだが、本文の内容に対してそれでは足りないなあ…ということで、私は1ページ最大6枚とした。建築の写真は大判が良いが、プロダクトは多

          オムライスと創作料理#08「画像多め」

          オムライスと創作料理#07「図説 デザインの歴史 正誤表」

          『カラー版 図説 デザイン史』(学芸出版社)が発売されたところで、早速お詫びですが、私の担当ページ、結構誤植的なミスがあります。本文の内容にはあまり影響がないとは思いますが、いくつか重大なミスもあります。謹んでお詫び申し上げます。 以下、正誤表的なものになります。 ・カバー見返し 誤) 右下●AM01(ダイソン社、イギリス、2009) 提供:ダイソン社 正) 右下●《AM01》(ダイソン社、イギリス、2009) 提供:Dyson P12 左段15行 誤) 02-3、

          オムライスと創作料理#07「図説 デザインの歴史 正誤表」

          オムライスと創作料理#06「フライングV」

          表紙のフライングVが目印! 明日発売になります。どうぞ宜しくお願いします。 デザイン史におけるギターの扱い実は故柏木博先生もエレキギターについて2度ほど著書(元は記事)で取り上げている。アメリカのロック文化の伝播、という文脈においてである(「エレクトリック・ギター=ロックの力」『20世紀はどのようにデザインされたか』、晶文社、2002)。 そこではギブソン社の《ES(エレクトリック・スパニッシュ)-150》、《レスポール》、フェンダー社の《ブロードキャスター(テレキャスタ

          オムライスと創作料理#06「フライングV」

          オムライスと創作料理#05「表紙に何載せる?」

          『デザインの歴史』が本となって一足早く著者の手元に届いた。感慨深い。 ただ、ページを捲ると身体に拒否反応が出た。〆切のストレスと思われる。博士論文も製本したものを手にした時も同じようにしばらく読みたくなかったのを思い出す。発売日くらいまでは読まずに寝かせておこう。 と思ったが、翌日くらいには平気になった。 パラパラと捲ると、嗚呼、出るわ出るわ細かいミスが。。。 大勢に影響ないものがほとんどなので、その点ではまだ良かったが、トンボ付きの出力紙で見るのと裁ち落とされてる本

          オムライスと創作料理#05「表紙に何載せる?」

          オムライスと創作料理#04「著者5人が決まる」

          私に声がかかった時点で既に『カラー版 図説 デザインの歴史』の著者3人は決まっていた。 中心となるのが暮沢剛巳先生。万博の研究等が有名な方だ。 私に声がかかったのは暮沢先生のご提案だと思う。以前書きかけの博士論文(20世紀の家電製品が対象)を一度お見せしたことがあったのが直接の理由ではないかと思う。そういえばアメリカのスポーツエンターテイメントWWEの話をしたこともあったと記憶している。世の中何の縁が繋がるかわからないものである。 グラフィック分野の担当に山本政幸先生。

          オムライスと創作料理#04「著者5人が決まる」

          オムライスと創作料理#03「『世界デザイン史』じゃなかった…」

          執筆中、ずっと書名を勘違いしていた。 『世界デザイン史』のつもりで書いていたのだが、Amazonにページができた時に書名が違うことに気が付いた。あれ?『デザインの歴史』に名前変わった? そう思って最初に頂いたメールを見返してみると、書名は『デザインの歴史』で企画書が書かれていた…!? どうして間違ったんだろう…。 『世界デザイン史』に挑む理由は簡単だ。美術出版社の『世界デザイン史』の上位互換となることを目標とした本を書いていたからだ。 デザイン史の教科書は美術出版社

          オムライスと創作料理#03「『世界デザイン史』じゃなかった…」

          オムライスと創作料理#02「教科書として使える本を」

          学芸出版社から執筆の打診メールを受け取ったのは、昨年(2021)年の7月13日のことだった。それから1年以上もこの本を作るのに費やした。 「1年以上先出版なんて随分気が長いな」などとその時は思ったものだが、何を隠そう最後の最後まで脱稿せず、しかもしぶとく校正で文章を直し続けたのはこの私だ。 教科書って使うかな?大学の教科書の執筆依頼に対して最初に思ったのは、授業で教科書を使ったことがないんだよなー、ということである。 授業で教科書を使用しない先生は結構いるように思う。

          オムライスと創作料理#02「教科書として使える本を」

          オムライスと創作料理#01「『カラー版 図説 デザインの歴史』9/23出版」

          来月23日に共著本『カラー版 図説 デザインの歴史』が学芸出版社から出版される。ここではその本の制作過程での裏話や各ページに書ききれなかった内容あるいは補足を綴っていこうと思う。 記事タイトルは、執筆を終えての感想である。 オムライスと創作料理、両方ちゃんとしたもの作るの大変だなー、って。 この本は大学や専門学校でのデザイン史の教科書として書いたもので、主な内容は見開き44章と7つのコラム、合計51本からなっている(他に年表とか索引とかもあるが)。具体的な目次はAmazo

          オムライスと創作料理#01「『カラー版 図説 デザインの歴史』9/23出版」