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ホラー小説「ドールハウス」第8話 何もない部屋

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注意喚起

暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。


15.美夏

やっぱり、この屋敷は地獄だった。
和室に飾られた着物を着た死体の目にはピンク色のガラス玉がはめ込まれていて痛々しかった。
本物の死体は人形みたいに飾られていてもグロテスクで気持ち悪かった。
あたしはすぐに和室を出て、近くの部屋を探し始めた。
ドアを開けると、いろんなものが置いてあった。どうやら、物置のようだ。
軽く調べてみたが、裁縫箱やいろんな段ボールの箱しかなかった。脱出に使えそうなものは無さそうだった。
奥には別の部屋に通じるドアがあった。
そのドアを開けると、ブルーシートが敷かれているだけの何もない部屋だった。しかし、その部屋は血で赤茶色に染まっていて、独特な匂いが充満していた。
何もないし、気味が悪かったので、すぐに血に染まった部屋から出た。
「トコトコ、トコトコ」
その時、いきなり部屋の外から物音が聞こえてきた。物音はこの部屋に近づいてきてるようだった。
まさか、愛美がこの部屋に来るのか?
あたしは春香と一緒に血で染まった隣の部屋に隠れることにした。
この部屋は気持ち悪くて、春香を入れたくなかったが今は仕方ない。
「ガチャン!」やっぱり長い黒髪の佐々木愛美が入ってきたようだ。
ドアの隙間を覗くと、佐々木愛美は裁縫箱から目打ち、段ボールからボウガンと矢を取り出していた。
「いたずら好きのモニカちゃんとツバサちゃん、どこに隠れているのかな?」とつぶやいていた。
モニカとツバサ、スケッチブックに描かれていたあたしと春香に似ている女の子の名前だ。
死体に話しかけていた時みたいに彼女の言動は意味不明だった。
その後、佐々木愛美は物置を後にした。
しかし、あとちょっとで佐々木愛美に殺されるところだった。あたしはホッとした。
殺人鬼がすぐ近くに居る恐怖は半端なかった。

16.春香

急に美夏さんは「愛美が来ているみたい。そこのドアの部屋に隠れよう。」と小声で言った。
私は美夏さんと一緒に隠れた。隠れた部屋は何も無くて、血で染まっていた。
美夏さんはドアの隙間から物置部屋を覗いていた。私もこの部屋で何をしたらいいか分からなかったので、美夏さんと一緒に覗いていた。
愛美が物置部屋に入って、愛美は目打ちとボウガンを取るのを見た。
その後、隣の部屋に居た私と美夏さんに気づかずに物置部屋を出て行った。
本当に愛美は私と美夏さんを殺そうとしているの?
私は、「愛美はこんなことしない」という思いと「殺されるかもしれない」という危機感が入り混じって、複雑な気分になった。
「あれ?」また足音が動いた。愛美は応接間の方向に行ったようだ。
美夏さんは安全に物置部屋に戻れることを確認してから、出口のドアの隙間から玄関ホールを覗いていた。
私は重くなっていくまぶたを抑えながら、部屋の隅で美夏さんの後ろ姿を眺めているだけだった。
この屋敷は不思議で恐ろしい世界だった。
美夏さんは見た感じ怖そうだが、初対面の私にも優しくて、頼れるお姉さんだった。
そして、私の友達は連続殺人犯かもしれない。犠牲者の死体、殺人の記録、盗撮写真、といった愛美が殺人犯である証拠を見つけてしまったのに、それでも優等生の愛美を信じているバカな自分がいる。

きっと、あれは幻覚だ。いや、絶対に幻覚を見ているんだ。本当に幻覚なんだ。

17.愛美

物置部屋からボウガンと目打ちを取ってきた。
最初は春香ちゃんを案内したおへやを探してみよう。
探したけど、誰も居なかった。
お部屋を出ると、南京錠が掛かった玄関の扉が見えた。
わたしが気付かないうちに春香ちゃんが起きてしまった時のことを考えて、玄関の扉に南京錠を掛けて正解だった。
もし、春香ちゃんが逃げてしまって、「愛美は人形遊びをしている」とか言われたら、またバカにされちゃう。
その後、一階の部屋を調べたけどモニカちゃんとツバサちゃんは見つからなかった。どこにかくれてるんだろう?
二階に居るのかな?探してみよう。
かくれんぼなら負けないよ。

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