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【Phidias Trio vol.7】曲目紹介: 森紀明《Warum ist das Fragen sinnlos?》

2022年11月12日のPhidias Trio 定期公演「Phidias Trio vol.7 "Live on…"」、いよいよ今週となりました!
7回目の定期公演となる今回は、今を生きる、日本人作曲家の作品を集めたプログラムです。今井智景、牛島安希子、北爪道夫、松平頼暁、森紀明、森田泰之進、渡辺俊哉各氏の楽曲を演奏します。チケットご予約もまだまだ受付中です。(以下のリンクからご購入いただけます。)


公演に向けて、このnoteでは演奏作品についての紹介をしています。今回は森紀明さんのトリオ、《Warum ist das Fragen sinnlos?》です。

Phidias Trioとしては、森さんの作品を演奏するのは今回で2作目となります。
1作目は、2019年12月の「Crossings ~Tokyo × Seoul, Dance × Music~ 」東京公演にて初演した、奏者とダンサーによる作品《Watering》でした。

《Watering》 は森さんならではの探求や挑戦に満ちた、非常に実験的な作品で、演奏者としてもリハーサルから様々な刺激的な経験をさせていただきました。

今回演奏する《Warum ist das Fragen sinnlos?》は、その前年2018年に書かれた作品です。
以下、森さんによる曲目解説です。

Warum ist das Fragen sinnlos? - vier Monologe nach Franz Kafkas Tagebüchern
なぜ問うことは無意味なのか? - フランツ・カフカの日記による4つのモノローグ

カフカが27歳の時に書き始めた日記には、病弱で、家族や友人から孤立し、人間関係もうまくいかない日常の様子が書き綴られており、彼の小説から受けるイメージとはまた異なるカフカ像を見出すことができます。日記は死の前年まで書き続けられ、彼の日常的な悩みや不安のほかにも、小説のスケッチや哲学的な考察から、彼が見た夢の記録に至るまで様々な事柄が書かれることになりました。彼の小説と共に多くの人々を魅了しているこの日記をもとにして、ジェルジ・クルタークやイザベル・ムンドリーらの作曲家も素晴らしい作品を書いています。私自身もカフカの日記からインスピレーションを得て、本作品を作曲しました。本作品は副題が示すとおり、長さとキャラクターの異なる4つのモノローグから構成されています。それぞれのモノローグには、カフカの日記から引用した以下の断片的なテキストがタイトルとして付けられており、全てのモノローグは続けて演奏されます。

“Nichts als ein Erwarten, ewige Hilflosigkeit.”
ある期待のほか何もなし、永遠の寄る辺なさ。

“Der Anruf”
呼びかけ。

“Alles zerreißen.”
何もかも引き裂くこと。

“Im Frieden kommst du nicht vorwärts, im Krieg verblutest du.”
平和な時にはお前は前へ進まない。戦争の時には出血多量で死ぬ。

森紀明

静かな緊張に満ちた冒頭から、カフカの内面の深層に迫っていくようなクライマックスに至るまで、4つのモノローグが一つの作品として構築されています。
ダンスやオブジェクトなど、様々な素材を用いた創作に取り組み、さらにジャズや即興などの分野でも活動する森さんですが、この作品においても、緊張感のある時間構築や巧みな構成センスが光っていて、音楽家としての視野の広さを感じます。演奏すればするほど、作品世界の奥深くにどんどんのめり込んでいくような、強い力を持った作品です。

森紀明 プロフィール
現代音楽、ジャズ、即興音楽、実験音楽の間で主に活動する作曲家、バンドリーダー、サクソフォン奏者、パフォーマー、イベントオーガナイザー、キュレーター。作曲家としては、自身のバックグラウンドを活かした幅広いアイデアをもとに、作品ごとに異なる作曲手法や素材を援用し、様々な芸術分野を超えて作品を発表している。キュレーション型作曲家コレクティブ、Cabinet of Curiositiesの代表を務めるほか、領域横断型アーティスト・コレクティブ、Crossingsなどの活動を通して他ジャンルのアーティストとのコラボレーションも多い。これまでに作品は、ダルムシュタット現代音楽講習会、アハトブリュッケン音楽祭、モントリオール・ジャズ・フェスティバル、武生国際音楽祭を含む北米、ヨーロッパ、東アジア各地で演奏され、WDR3でも放送されている。

公演詳細
Phidias Trio vol.7 "Live on…"

2022年11月12日(土)
15:00開演(14:30開場)
KMアートホール (渋谷区幡ヶ谷1-23-20 京王新線幡ヶ谷駅より徒歩6分)

一般3,000円 / 学生2,000円(当日券は各500円増し)

プログラム
森田泰之進:Soaring in Circles (ReincarnatiOn Ring V-a) (2021) 舞台初演
牛島安希子:浮遊都市 I (2022・委嘱新作) 初演
松平頼暁:秋山邦晴のためのメモリアル (1997)
北爪道夫:トリプレッツ (1999)
渡辺俊哉:あわいの色彩 I (2017)
今井智景:Weaving (2018)
森紀明:Warum ist das Fragen sinnlos? (2018)
※プログラムが当初の予定より変更になりました。

演奏家の役割のひとつが、楽譜を手掛かりにさまざまな解釈を導き出すことだとすれば、作曲家との直接的なディスカッションは、極めて有意義なもの。演奏は常にアップデートされ、作品は生き続けていく。今回フィディアス・トリオがご紹介するのは、いずれも作曲家との濃密な共同作業を経た、7つの作品。今井智景、牛島安希子、北爪道夫、松平頼暁、森紀明、森田泰之進、渡辺俊哉ら、個性派揃いの作曲家達のユニークな楽曲を演奏する。いま聴きたい、そして後世に残していきたい音楽が体感できる、刺激的な二時間。

チケット購入
https://phidias-vol7.peatix.com/

お問合せ
phidias.trio@gmail.com

主催:Phidias Trio
文化庁「ARTS for the future! 2」補助対象事業


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