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詩:ともしび

兆候は それが兆候だと気づいたときには

すでにはじまっていた、と、知るものだ

朝目覚めることも、その一部として。

太陽の光を感受した私の身体、そして、

地上という闇は

天上の太陽によって照らされる

ゆっくりと、音もなく。



光はじわじわと、過去を照らしはじめる

いつの間にか色褪せていた記憶は

忘れ去られてなどいなかった

消えない傷痕のような過去となり、

このこころに残っていた。

 

諦めて失ったいくつもの未来を

こころに浮かべては

人は悔やみ、嘆くだろう

日々を生きるごとに足元が冷えて

おぼつかなくなっていくように

 

「全ては思い通り」と豪語する偽善者みたいに

世界を語りたくはない


 
あらゆる歓迎されない過去を

優しく照らす光は

私のこころの綻びを気づかせ

過去のケロイドへと

生命(いのち)の火を灯す

小さな灯火(ともしび)

か細く燃えている

それでも、美しい




光という不完全な美しさは、

「このままでいられるように

まだ、残された時間が君たちにはあるから」

と 微かにつぶやいたのだった

 

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