ありえない勘違い  旅する写真家のミャンマー旅日記


旅する写真家のミャンマー旅日記
目次
・伝わる緊張   (空港からアウンミンガラーバスターミナルへ
・ありえない勘違い (ヤンゴンからキンプンに向けて出発)<当記事

このあとも更新予定です!お楽しみに!!

成り行きに任せたい ゴールデンロックへ

ヤンゴン。アウンミンガラーバスターミナル。ここはミャンマー最大といってもいいほどのバスターミナル。いくつもの大型バスが、見えるに限り並ぶ。僕はそんなバスの一つに乗り込み、出発時間を過ぎたバスの出発を待つ。10数分だったかもしれない、出発予定時刻を少し過ぎたところでバスは動き出した。半端じゃない車、バスの量のなか、思いっきりハンドルを切り、前に無理やり進んで行く。このバスはキンモン(キンプンととまあいうがこの記事では以下キンモン)という場所にいく。そこは、ゴールデンロックという落ちそうで落ちない黄金の岩があるという、ミャンマーの一大観光地、とも言える場所に行く。キンモン行きのバスには乗ったものの、今日ヤンゴンに戻るのか、一晩どこかで夜を過ごし、ヤンゴンに戻るのか、決めていなかった。まあ、成り行きに任せたい。

怖がる犬

 ヤンゴンを発ってしばらくが経つ。ガソリンの給油場所でトイレ休憩だった。とても質素なガソリンスタンド。ドラム缶から直接ホースで給油している。バスの乗客はトイレに行ったり、おしゃべりに興じたり、一人ボーッとしていたりするなか、僕はそこにいた犬と、その隣で犬と共に佇む男性に近ずいていた。この旅でも何度となく犬と出会うが、一様にして、激しく人間を怖がる。(飼い主はあまり怖がっていなそうなので、知らない人だから怖がっているのかもしれない)この犬も、本当に極度に怖がりなのかなと感じる。僕が犬に近づくと飼い主の横にぴたりとくっつき、かろうじて僕と見つめ合うことで精一杯なようだった。でも、もう一歩。そう思って、慎重に踏み出したそのほんのひと踏み。それだけで尻尾を巻いて逃げ込んでしまった。

ありえない勘違い
 そんなこんなで、休憩は終わり。またバスに乗り込み、しばらく走る。外の景色をずっと眺めていたが、少し眠ってしまったかもしれない。バスが止まった。大きな食堂を中心に周りに質素ながらも売店もあったその場所は二度目の休憩だった。 みんなバスから一斉におりる。なぜか僕は、そこが小さな街のようにも思えて、目的地キンモンだと思い込んでしまった。
 そして、僕はバスのドライバーに『キンモン?』と聞いた。ドライバーは、大きく頷いた。僕はそれでここがキンモだと思い込む決定打となった。ドライバーはきっとこのバスはキンモンに行くんだよね?との問いに答えたと思っている。気持ちの行き違い。
 ここがゴールデンロックに行くための玄関口となるキンモンか。僕は疑いを一切持たなかった。5時間ほどかかるはずが、まだ3時間半程度しか立っていなかったのに。ゴールデンロックに行くためにはさらにトラックにのって山の上までいかねくてはならない。どこからトラックに乗れば良いのだろう。そんなことを考え、僕は動き出す。
 

アホな失態に笑うしかない

ゴールデンロックに行きたいと売店の女の子に聞いた。ミャンマー語で必死だった。何時にゴールデンロックまでのトラックが出るのか(そこから出ていないのに)、トラックの出発場所はどこなのか。彼女は不思議そうな顔はしていたが、困惑した顔で答えてくれる。でも、ほとんどわからない。なんとか、そうかなと読み取れたのは、ここで待っていれば良いということ、そして、時間は、1時間後くらいということ。

 とりあえず待っていればいいのかと思ったけれど、言葉がちゃんとわかっているか心配だったのもあった。一応若い男性にも聞いてみた。結構ちゃんとした身なりで、フォーマルな格好をしていた。ワイシャツに黒パンツ。ロンジーではない。英語通じるかな、そんな淡い期待もあった。だけどまったくというほど、英語が通じなかった。こういう何かあったときは言葉が通じないというのは本当に不安だ。でもなんとかなる。そういう自信だけはとにかくある。彼は親切にも色々な人や友人に聞いてくれた。とりあえず、ここはキンモンではなく、この時間はバスの二度目の休憩だということだった。僕の勘違いに気づいてくれたのだ。どうしてそんな勘違いをしてしまったのだろうか。それにしても、ふとそんなところで、もうひとつ大事なことに気がつく。両替をし忘れ現金がほとんどなかったことを。後で、両替か外貨を引き出せるATMがあったら、お金だしておこう。そんな風に思っていたが、忘れた。こんなところで。まじかよ。冷静を装って入るけれど、僕は静かにATMか銀行がないかたどたどしいミャンマー語で聞いてみる。でも何度聞こうと、僕がキンモンだと思い込んでいたこの町にも、銀行やATMはキンモンにもない、その男性はそう言っている様にしか受けとれなかった。ゴールデンロックは山の上、その麓の町であるキンモン。田舎そうだし、しかも土曜日だった。もしかして本当にこの土日にお金を吐き出せるところはないのかもしれない。そう思いはじめていた。

とりあえずその男性はしきりに腕時計を指差し、今日は遅いから、ホテルにとまって、明日ゴールデンロックに行けばいいと説得される。まあお金がなかったからそうするしかなかった。とりあえず彼はついてこいと、休憩を終え、走り出したバスの隣の座席には彼が座った。大丈夫。50000チャットあるか?あればそれでとりあえず、ホテルに泊まりなよ。連れて行くから。そんなことを言っている。でも、そんなに持っていたらお金がないなんて思わずに済むはず。

 しばらくバスは走ったが、まもなくして隣の座席の彼はここで降りよう、そう言った。僕が目的地まで行かないということをバス会社の人は最初不審がっていたが、それを彼が説明してくれた。笑っている。そう。笑われるほど、アホな失態。バスを降りると、そのすぐ目の前にはATMがあった。うわー!よかった。しばらく何も食べていない僕に大好きなカレーライスが差し出されている。そんな風に、僕はATMに飛びついた。そうして僕はようやく現金を手にできた。よかった。お金のことは解決。彼の言うように、明日、ゴールデンロックへ行くことにした。ホテルまでバイタクまで連れて行ってくれるという。言葉はあまりわからなかったけど、彼の紳士的な態度に、僕はついていくことにした。

親切なオーナー 高級ホテルで心痛む

バイタクが入ったのは、びっくりするほどの高級リゾートホテル。間違えなくプールはある、そんな雰囲気。ホテルの従業員らいしオーナーは英語が堪能だった。本当に素敵なホテルだ。広い敷地の中にあるテラス風のレストランには多くの欧米系の外国人がいた。雰囲気もよく、ここなら高くて泊まってみたい、そう思ったけれど、従業員の今日はフル、という言葉に心打ち砕かれる。この先にももう一つ宿があるらしい。そこまでバイクを走らせた。次のホテルもかなり高級そうだった。敷地は広大、ゴルフ場は行ったことないけど、ゴルフ場のようだ。お洒落な車のようなので、敷地を移動するようだ。建物はというと、かなり洗練された、と行った雰囲気。モダンなイメージだ。部屋はあるという。でもここは、お客さんが一人もいないんじゃないかっていうくらいの静けさ。一応金額の説明を受けるが約4〜5千円というところで、ロッジとホテル棟があるよう。ここまで連れてきてくれた彼は、ここに泊まると言うと彼はバイタクで自分の本来行くべき場所に戻るという。何かお礼をしたかったが、何もいらないという、たくさんお礼をいって別れた。

部屋は、ロッジとホテル棟の両方とも見せてもらった。でも正直なところ、この金額出してこの部屋かっていう印象だった。空気が冷たい。そこに泊まることにして、居心地の良さを感じることを想像できなかった。最初のホテルでは、ここまで親切に連れてきてくれた彼もいたし彼の親切を前に部屋をを断る選択肢はなかった。それにちょっと素敵だったから、ここなら高級ホテルに泊まるのも悪くないか、そうも思い言い聞かせているところもあった。でも、ここに来て、部屋をみて、冷静になった。ここにミャンマーらしさなんていうのは微塵もない。極端なこと言えば日本にもあってもおかしくない。確かに美しい。洗練されている。でも僕はミャンマーの人たちの営み、そこに紡がれている美しい生活風景とか、ミャンマーでしか見れない、「何か」、を探しに来たんじゃないのか。そんなことを僕のために急いで駆けつけてきてくれたオーナーと話ながらずっと考えている。彼は、日本人オーナーの元で働いて居たんだと自慢げに言った。それを誇りに思っているとも。
 しばらく部屋を見た末に口を開いた。ごめんなさい、ここには泊まれない。他の宿を探す旨を彼に伝えた。なんどもごめんなさい、そう言う僕に、彼はいいんだ、いいんだ。また来た時にでも。そんなことを言った。心が痛む。

部屋に泊まらない決断をした僕を、バイクは必要かと尋ねてくれた。助かる。バイクを待つ間も、僕に話しかけ続け、一緒に待ち、その待っている間に椅子をわざわざ用意しようとしてくれた、ただただ親切でしかない彼。ここでも心が痛む。日本に帰ったら、こんなところもあると紹介しておくから。そういったものの、今の僕のこの旅においては、このホテルに泊まる良さはを見出すのは難しいとしかもう思えなかった。彼の人柄にもっと深く触れてみたい。そうも思ったけれど、それはきっと今回ではない。清潔だし、おしゃれだし、スタッフ一人一人がすごくいい人。きっとこういうところは長期滞在するといい。そしてステイするあいだ、少しづつそこを好きになっていく。

食の満足度、旅の満足度

ともかく僕はバイクに乗せてもらい、キンモンに着いた。もう薄暗くて、少しお腹が空いたので、取り合えずミロを飲んでから宿を探す。もう暗くなりかけ、先にご飯を食べている場合ではなかった。一軒目はフルだと言って断られ、二軒目に入った。値段もまあまあ。部屋もまあまあ。これぐらいの部屋でいい。疲れ果てた僕は荷物を置き、少しだけ歩いて、ご飯を食べた。豚肉のヒンだ。(カレー味の煮込みと言ったところだろうか)他にも幾つかのお皿が並べられる。おそらく食べた分だけお金がかかるのだろう。取り合えず、口に合わなかった。ただ油に肉を入れて少し調味料を足しただけのような味。米も、冷たすぎるくらいに冷たい。やむ得ず、半分くらい残してしまった。お腹がもういっぱい。ミャンマー料理が嫌いなわけじゃない。でも、ここはダメだった。食の満足度は旅の満足度を大きく左右する。そんなことを思いながら、部屋に戻る。

旅から学ぶこと

 この日は、大きな失敗をした。休憩を目的地のキンプンだと勘違いし、一人勝手にあたふたし、親切なミャンマー人を何人か巻き込んだ。貴重な時間と手間。ただただ申し訳ない。旅は(バックパッカースタイルの旅は特に)自己管理能力がないと、と言われる。僕に関して言えば、しっかりしているとは決して言えない。この日のように大きなミスをすることもある、そうして、痛手を負うことも少なくない。ででもそうして、なんども失敗して、人に助けてもらって、感謝して。やっぱり、自分の責任においての失敗もあるけど、それだけじゃなくて、うまく行かないことも、多い。声を上げて、助けを求める。そればかりに頼ってはいけないのだけど、そうやって助け合って人は生きていくのだと謙虚な気持ちにさせてくれるのが旅でもある。

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