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『ビアンマップ新宿二丁目2024』 制作の舞台裏について語る ──PIAMY広報チーム座談会

新宿の片隅に位置する「新宿二丁目」。この街はほぼ四角に区切られた小さな地域ですが、400前後のLGBTQ+関連バーが密集した大きなLGBTQ+タウンです。最近では、LGBTQ+について語られる機会が増えましたが、メディアではゲイ当事者やドラァグクイーンといった一部コミュニティしか取り上げられていません。

現状、レズビアンをはじめとするセクシュアルマイノリティ女性の声は表に届きづらく、「マイノリティの中のマイノリティ」ともいえます。実際に新宿二丁目をみても、ビアンバーの数はゲイバーの10分の1にも満たないとされています。

PIAMYはこのような現状を受け、「レズビアンコミュニティを盛り上げたい!」との思いから、今回『ビアンマップ新宿二丁目2024』を本格的に制作しました。PIAMYが大切にする「繋がり」をキーワードに、レズビアンやセクマイ女性が自分らしく安心して過ごせる居場所を見つける一助になれば幸いです。

ビアンマップイメージ

ビアンマップ制作にあたって、一店舗ずつに足を運びオーナーさんと話をする中で、新たな発見がありました。そこで、PIAMY代表と広報メンバーにビアンマップ制作の裏側をインタビュー!冊子内では書ききれなかった想いについても話してもらいます。

スピーカープロフィール

星マリコ / 株式会社アルトレオスCEO
ストレートアライ。慶應義塾大学経済学部、東京大学法科大学院卒業。2016年に株式会社JobRainbowをゲイの実弟と共同創業し、COOを務める。日本初のダイバーシティ求人サイトを立ち上げ、月間アクセス65万人の国内最大サービスに。同社を退職し、2023年に株式会社アルトレオスを立ち上げ、現在はレズビアン・セクシュアルマイノリティのマッチングSNSアプリPIAMYを提供する。司法試験合格。Forbes 30under30 Asia 2018。
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雨谷里奈 / PIAMY広報
コンテンツマーケティングを中心に企画/編集/ディレクション、ライター、カメラマンとして活動。LGBTQを主軸とした事業者向けに、広報コンテンツ制作全体の業務も行う。2023年8月、東京から福岡に移住。九州レインボープライド(QRP)での登壇経験あり。2024年11月のQRPでは、SNS担当を務める予定。レズビアンコミュニティを盛り上げるために、PIAMYの広報担当として活動する傍ら、自身でもレズビアン向けボードゲームの企画・開発に取り組み中。
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山﨑穂花 / PIAMY広報
レズビアン当事者の視点からライターとしてジェンダーやLGBTQ+に関する発信をする傍ら、新宿二丁目を中心に行われるクィアイベントでダンサーとして活動。自身の連載には、タイムアウト東京「SEX 私の場合」、manmam「二丁目の性態図鑑」、IRIS「トランスジェンダーとして生きてきた軌跡」があり、新宿二丁目やクィアコミュニティにいる人たちを取材している。また、レズビアンをはじめとしたセクマイ女性に向けた共感型SNS「PIAMY」の広報に携わり、ビアンマップの制作やTRP出展など、レズビアンコミュニティに向けた活動を行っている。
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ビアンマップ制作に至った経緯

ービアンマップを制作したきっかけはありますか?

星マリコ(以下、マリコ):きっかけは東京レインボープライド2024に「新宿二丁目ラウンジ」として参加が決定したことでした。「新宿二丁目ラウンジ」という場所を作るにあたって、「ビアンコミュニティからの参加者がいないのでいかがですか?」と声をかけてもらい、PIAMYとして何ができるか考えた時に、もともと作りたかった「ビアンマップ」がこの企画とマッチすると思いました。

ーもともとビアンマップを作るという構想はあったんですね。

マリコ:そうなんです。なぜ前々から作りたいと思っていたかというと、私がLGBTQ+コミュニティに向けた求人情報サイト「Jobrainbow」を運営していた経験があり、そこでLGBTQ+の中でもレズビアンコミュニティが可視化されていないと感じていたからです。一歩踏み込むと実はたくさんの当事者同士の繋がりがあるのに、広く共有されていない印象がありました。

実際にレズビアンの方たちと話をしてみると、レズビアンバーに行ったことがないという人も多く、自分と同じ当事者と出会う機会が少ないことに気づきました。そうした経験から当事者同士が支え合い、共感し合えるコミュニティをもっと多くの人がアクセスできるようにする必要性を感じ、ビアンマップを作りました。

雨谷里奈(以下、ガヤちゃん):私がPIAMYにジョインした理由も同じです。世の中でレズビアンコミュニティに向けた事業があまり見られないのは、コミュニティが可視化されていないことが一つの要因だと感じています。なので、ビアンマップを作るという話を聞いてとても共感しました。

ーそもそもレズビアンコミュニティの実態がわからないという人は多いですよね。

山﨑穂花(以下、穂花): そうですね。直接情報にアクセスしづらく、レズビアン当事者のSNSアカウントを探して、さらにその人のフォロー欄から同じ当事者の人を見つけて、段階を重ねて情報収集する人は多いです。

このアクセスのしづらさが二丁目に行けない理由に繋がったり、二丁目が常連さんしか行けない場所だという印象に繋がったりすると思うので、ビアンマップのようにポップに二丁目のレズビアンバーを紹介するという取り組みは意味のあることだと思います。と同時に、何でもオープンにすれば良いというわけではないことも知りました。

マリコ:うんうん。今回ほのちゃん(穂花)とビアンバーを訪問し、オーナーさんに話を聞く中で、あえて一定のハードルを設けるのも必要なんだなと感じました。
印象的だったのは、入店条件として「男性は初回のみ女性と同伴」「男性の一見さんお断り」などが挙げられますが、あえて表向きで言わないお店が多かったことです。はっきりとした情報を提示するというより、場を乱すような人が来たらお断りするなど、ケースバイケースで適切に対応することで安心できる場所を作っているのだと感じました。

情報のアクセスのしやすさと場所の安全性の確保を両立させる必要があるため、ビアンマップの内容については制作チームと3人で議論して改善していきました。冊子として必要な人に届くようなデザインやメッセージにしたうえで、当事者にとって必要な情報を記載したのは特にこだわった箇所です。

穂花:レズビアンバーに歓迎されるお客さんは、良い意味で空気を読んでいると思います。例えば、お店が満席になった場合、男性は席を譲るなど、女性のための居場所であることを理解したうえで行動されています。レズビアンバーはそこにいる人たちの気遣いで成り立つ店でもあると気づきました。

消えゆくレズビアンバー

ー掲載許可は取りやすかったですか?

マリコ:ほとんどの店は直接訪問してオーナーさんに掲載許可をいただいたのですが、断られたバーは一軒もなかったです。長年レズビアンバーを経営されているオーナーさんと話すと、レズビアンバーは新しくできては消えゆくものだという認識がある方もいると感じました。

かつては「新宿2丁目瓦版」というフリーペーパーがあったのですが、定期刊行終了となったそうです。このように、LGBTQ+ひいてはレズビアンカルチャー自体の継続が難しいことが染み付いているようにも感じました。

穂花:ただ、掲載をお断りしたバーが1つもなかったということは、希望はあるのだと思います。レズビアンコミュニティはマーケットが狭いからこそ、必要としているお客さんに情報が届いてほしいと考えているのかなって。

マリコ:実際に訪問する中でお客さんが全くいないお店もありました。ですが、実際にママさんと話してみるととても素敵な方で、PIAMYのアプリを入れてくれたり、「できることならなんでもしますよ」と言っていただいたりしました。

利益のために店を出しているのではなく、みんなで助け合いながらレズビアンコミュニティの居場所を作ることを大切にしているんだなぁと。だからこそ、ビアンマップに込めた想いに共感して掲載を承諾してくれたのだと思います。

「ビアンバー」とは何を指す?

ー冊子名を「ビアンマップ」とした理由を教えてください。
マリコ:
制作が始まった段階から私とほのちゃんは勝手に「ビアンマップ」と言い始めてました(笑)。ただ、レズビアン以外のセクマイ女性も読者として想定する中で、本当にこのタイトルをつけていいのかという意見をガヤちゃんからいただき、3人で議論を交わしました。

穂花:私はビアンマップの代わりになる新たな言葉や固有名詞をタイトルにすることは、レズビアンコミュニティの不可視化に繋がると感じました。二丁目にある「ビアンバー」は、レズビアンだけでなくバイセクシュアルパンセクシュアルの女性など、あらゆるセクマイ女性に開かれた店として場を提供している側面もあるので、「ビアンマップ」というタイトルはレズビアン以外の当事者にとってもしっくりくるものだと考えました。

現状、あらゆるセクマイ女性に向けたバーを表す言葉や表現が少ないことは残念ですが、「ビアンマップ」を冊子名とし、サブタイトルに「レズビアン・セクマイ・クィア女性のためのバーガイド」と記載しています。

マリコ:あとは、「レズビアンマップ」ではなく「ビアンマップ」ということにも意味があると思っています。言葉の正確さも大切ですが、今必要なのは必要としている当事者に情報が届くことであり、その安全性が守られた状態であることです。シス男性によるレズビアンを見せ物とするような使われ方は避けたかったので、この界隈で浸透している「ビアン」という表現を選びました。

ービアンマップでは老舗から新店まで、計42ものビアンバーが紹介されています。どのように情報収集したのでしょうか?

マリコ:今回、新宿二丁目にあるレズビアンバー41店舗と新宿三丁目にある女性がオーナーの飲食店1店舗、計42店舗を紹介しました。最初はSNS上でリサーチしたレズビアンバーを押さえていたのですが、バーを訪問する中で実際に二丁目で遊んでいる子たちにバーリストを見せると、どんどん新しいバーが出てきて当初から10店舗ほど加わりました。なので、もしかしたらまだあるのかもしれません。

穂花:もともとレズビアンバーは30店舗前後だと言われていたので、老舗ビアンバー「BAR GOLD FINGER」のオーナー・チガさんに42店舗紹介することを話したら驚かれました。

ガヤちゃん:コロナが落ち着いてからここ数年、レズビアンバーが増えていますよね。

穂花:そうですね。中でも系列店舗のレズビアンバーが増えていると感じました。ビアンマップ内で紹介したバーでいうと、MODEL系列の「SUPER MODEL」、L GROUPの「RoundOne LOUNGE」、BOSUZARU GROUPの「Glück Next」、H系列の「BAR PUZZLE」などです。

ービアンマップにはFtMバーも含まれています。

マリコ:レズビアンコミュニティの中には自身の性に揺らぎのある人、悩んでいる人など、さまざまな人がいます。実はFtMとレズビアンが緩やかに繋がっている側面があるといった点で、今回はFtMバーを入れることにしました。

ガヤ:コミュニティ全体の理解という観点からも、FtMに関心や興味を持つ人々がいるという点でも、FtMバーの情報をビアンマップに含めることは重要だと考えています。

新宿二丁目は「学校の廊下」のような街


ーさまざまな人が交わる新宿2丁目ですが、みなさんにとって2丁目とはどんな街ですか?

ガヤちゃん:私にとって二丁目は、「学校の廊下」のような街です。以前、前職の先輩に二丁目で遭遇したことがあり、そこで初めてお互いが当事者であることを知りました。自分のセクシュアリティについて職場や家族に公言していなくても、そこに行けば同じような人がたくさんいる。そんな開放的な場所だと感じています。あとは、一つの空間にいろんなお店が詰まっているので、1〜2杯飲んでから違うお店にハシゴするといった楽しみ方もできます。1件目で会った人と2件目のお店でまた再会することも少なくないです。笑

マリコ:「学校の廊下」っていう考え方は、まさにPIAMY創業時に大切にしていたことです。PIAMYは「大学の中庭」をイメージしてできました。そこに行けば友達の友達から繋がり、何の共通点がなくてもなんとなく仲良くなって交友関係が広がっていく。そんな関わり方が大学の中庭にはあります。

ですが、セクシュアルマイノリティは一般社会でそのような体験をするのが難しい現状があり、二丁目が「セクシュアルマイノリティの中庭」のような機能を果たしているのかなと感じました。それはPIAMYでも同じで、とあるユーザーさんからは「数少ない自分と同質な人たちがいるコミュニティの存在に安心感を覚え、私生活では傷ついているけどホッとした気持ちになりました」という声をいただきました。

ガヤちゃん:かつては二丁目に行くことで自分のセクシュアリティがバレてしまうのではないかと不安を感じていた時代もあったと聞いています。しかし、現在ではLGBTQ+当事者以外の方々も遊びに来られる場所に発展し、より開放的な環境が整ってきました。

私自身、ビアンバーでの出会いがきっかけで今のパートナーと出会うことができたのもあって、二丁目をはじめとするリアルな場に足を運ぶことの意義を強く感じています。

二丁目のあるビアンバーでの一コマ 

穂花:ビアンマップを制作する中で、最近開かれたレズビアンバーはウーマンオンリーよりミックスの方が多く、オープンな雰囲気があると感じました。バー「MODEL」はこれまでウーマンオンリーでしたが、誰でも来られるバーになりました。

なので、今の価値観と合わせて二丁目も変わりつつあるのかなと思います。一方で、オフラインでの出会いが簡略化されることで入店条件を緩和せざるを得ない側面もあると考えていて、ゲイバーを中心に観光バーも増えているように感じます。

マリコ:私は去年初めてレズビアンバーに行くまでは、二丁目に対して閉鎖的なイメージを持っていました。レズビアンバーにコミュニティの外にいる人が入ることはあまりよく思われないと聞いていたので、当事者ではない私は歓迎されないのではないかと思っていたからです。

ですが、行ってみると想像以上に楽しくて、良い意味で予想を裏切られました。私は異性愛者であるものの、それでも女性という共通点があるだけで盛り上がれるというか、安心できる空間が広がっていました。日本では異性愛者そして男性中心的な社会なので、女性だけの空間があるだけで、こんなにも癒されるのだと実感しましたね。

これからのPIAMY

PIAMYアプリイメージ

ー改めて、PIAMYがどのようなプラットフォームとして存在するか聞きたいです!

マリコ:二丁目の体験とPIAMYの体験は似ていると考えています。マッチングアプリだと友達を見つけたら気まずいと感じてしまう人もいるかもしれませんが、PIAMYはSNSなので恋愛目的だけでなく、自由に日常を共有できるコミュニティでもあります。

まだまだ24時間365日自分らしくいることが難しい社会だからこそ、二丁目にいる時のようにPIAMYなら自分らしくいられると感じられる空間を作っていきたいです!

ガヤちゃん:PIAMYにはAro/Aceのユーザーさんも多いんです。なので恋愛目的だけでなく、友達やコミュニティとの繋がりを感じられる場所でもあります。PIAMYがLINE交換の代わりになるくらいまでに浸透すれば、日本のレズビアンコミュニティの捉え方が変わるのかなとも思っています。

私は数ヶ月前に東京から福岡に引っ越したのですが、地方では圧倒的に出会いの場が少ないことを実感しました。他県にはレズビアンバーが少ないので、週末は福岡にある2軒のレズビアンバーに九州の人たちが集まってくることも稀ではありません。なので、PIAMYを通して地方にも自分のセクシュアリティの可能性を広げてもらうための取り組みを行いたいなと思っています。

穂花:そうですね。これまでPIAMYはSNSというオンラインの場を提供してきましたが、今回は冊子という形を通してオフラインで繋がるためのきっかけ作りができたと思います。オンライン、オフラインに関わらず、いろんな形で繋がりを体現できるのがPIAMYの魅力だと思うので、今後も引き続き新たな出会いの創出に務めていきたいです!

PIAMYは、2024年4月19日(金)から3日間開催される東京レインボープライド 2024に、パートナー共済の「新宿二丁目ラウンジ」ブーススポンサーとして参加します。HIV/梅毒検査の重要性に賛同し、「ワンコイン検査会」を推進する新宿二丁目ラウンジ・クリニック・ダイニングと一緒にイベントを盛り上げます。
当日は『ビアンマップ新宿二丁目2024』を配布するほか、PIAMYユーザー(その場でアプリをダウンロード・登録してくれた方を含む)を対象に「クィアクラブトート」をプレゼントします。是非お越しください。

TRPの様子はPIAMY公式Xinstagramにて、リアルタイムで発信します。お楽しみに!


4月7日(日)にiOS版をリリースし、より多くの方にご利用いただけるようになりました。

▼アプリダウンロードはこちら
https://apps.apple.com/jp/app/id6470894594
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.piamy.app&hl=ja&gl=US

HP:https://www.piamy.jp/
PIAMY LP:https://www.piamy.net/
PIAMYに込めた想い:https://note.com/piamy_/n/n24e650c77979

【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
株式会社アルトレオス
​広報担当:雨谷
メールアドレス:piamy_pr@artreoss.com


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