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【まなざしを受け止めて、そこにある】海野千尋 インタビュー


個展「あたたかくて、少しだけさみしい」をピカレスクで開催した海野千尋さんに、ご自身についてインタビューしました。

子どものころから人形づくりに親しまれていた海野さん。学生時代の陶芸研究室での学びを経て、現在は海野さんがご自身が大好きな素材を組み合わせた人形を制作されています。
やわらかなまなざしで佇んでいる人形たちは、見ている人の気持ちに寄り添ってくれるようです。

▲ 海野千尋 「ポニーテールの子」

可愛らしさと不思議な雰囲気を持ったお人形を作られる海野千尋さんは、どのような方なのでしょうか。ぜひ、ご高覧ください。


ー自己紹介をお願いします。

海野千尋(うのちひろ)と申します。
陶や布などの素材を組み合わせて、人形を制作しています。出身の岡山県でのグループ展などが多く、他県での個展は初めてです。

ーご出身の学校や学科、専攻などを教えてください。

地元の大学の教育学部で学びました。そこに美術教育(図画工作)のコースがあり、陶芸研究室に所属していました。

ー作品を制作するようになったきっかけを教えてください。

人形は子どもの頃よく作っていて、きっかけは洋裁が趣味の祖母でした。遊びに行くたびに端切れをもらって、一着ずつ服を増やしていっていました。
大学卒業のタイミングで一度製作をやめてしまったのですが、先輩に誘われてOGばかりのグループ展に参加させてもらい、発表を続けています。

人形の表情や雰囲気に合わせたお洋服を作られています

ー現在の世界観や素材、表現ジャンルに行きついた理由を教えてください。

展示を始めたころは、今とはまったく違う陶のオブジェを制作していました。楽しさもありましたが、今振り返ると「せっかく学んだ陶芸の知識を生かさなければ」と思い込んでしまっていたところがあったと思います。

現在は、素焼きの土のぬくもりや布の風合い、絵の具の淡い色彩など、自分がこれまで出会ってきた大好きな素材をおだやかに調和させることがとても楽しいです。

これからも素材やジャンルを、その時々で表現したいことにあわせて、自由に楽しみながら変化させていきたいです。

ー作品を制作する際、参考にするものやインスピレーションを受けているものはありますか?

きれいなもの、かわいいものを見てひらめくこともありますが、先に言葉を据えて広げていくパターンもあります。

今回の展示でいうと、「見ざる・聞かざる・言わざる」など、言葉から連想ゲームが始まって作品になっています。

国語辞典を広げてにやにやしていることもあるかもしれませんね(笑)。

▲ 海野千尋 「みざる/きかざる/いわざる」

ー影響を受けたアーティストや、作品はありますか?

いわさきちひろさんです。
絵の中の彼らはほんとうに可愛いけれど、なにものにも媚びていないところ。ずっと大好きです。

ー作品を制作する際に心掛けていることや、作品に込める想いを教えてください。

「こわくない」
でも「そこにある」。

そんな人形になるように心がけています。

鑑賞者、そして持ち主の方のまなざしをそっと受け止めて、ただそこにある。そんな作品になっていれば嬉しいです。

ーお客様に向けて、作品を通して伝えたい思いやメッセージをお願いいたします。

私の作品は、具体的な用途がある道具のような存在ではありません。
私の作品が無いことで、毎日の暮らしで困ることはないかもしれません。

ですが、この子たちはあなたの目の前から、勝手にいなくなりません。ただそこにいます。

いつかこのたちが、あなたの小さなお守りになれますように。
そんなメッセージを込めて作品を制作しています。

▲ 海野千尋 「天使」

海野さん、ありがとうございました!

皆様はどのエピソードが印象に残りましたか?

スタッフは、「あなたの目の前から、勝手にいなくなりません。ただそこにいます」という、最後の言葉が特に印象的でした。

言葉はなくてもいいから、誰かにそばにいてほしいとき、海野さんの作品が近くにいてくれることを想像するだけで、フッと心が軽くなるような気がしました。

作品展は終了しておりますが、今回のインタビューをきっかけに、読者の皆さまが海野さんの作品を楽しんでくださったら幸いです。

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海野千尋 プロフィール
岡山生まれ岡山育ち。
大学の研究室で陶芸に出会い、現在は人形を中心に造形作品を制作。
岡山を拠点に活動を行う。
エコール・ド・シモンで学びはじめました。

そっと帰りを待つようなものをつくりたい。
ただその人のためにそこに在ってくれるものが、
盾に、味方に、お守りになることを知っているから。
そうしたものをこの世に増やせたらなと思う今日この頃です。

◇展示歴

2023年 企画展『7days展』ピカレスクギャラリー(東京)
2022年 個展『きりりとみのむし』ビョルン倉敷店(岡山)
2022年 企画展『a match box 2022』ビョルン倉敷店(岡山)
2022年 作品展『みのむし、旅にでる』ピカレスクギャラリー(東京)
2022年 アート展『旅するタビビトリオギャラリーat古墳のふもと』(東京)
2022年 グループ展『さんかくてん』岡アートギャラリー(岡山)
2021年 企画展『gift 2021 ArtJointExhibition』ビョルン倉敷店(岡山)
2021年 グループ展『てんてけ展 その7』岡アートギャラリー(岡山)
2020年 企画展『桃のお節句展』岡アートギャラリー(岡山)
2020年 企画展『トランプ&チェス展』ビョルン倉敷店(岡山)
2020年 グループ展『てんてけ展 その7』岡アートギャラリー(岡山)
2020年 岡山市芸術文化祭『まちぶらりアート』つるの玉子本舗 下山松壽軒(岡山)
2019年 企画展『gift 2019ArtJointExhibition FUYU』ビョルン倉敷店(岡山)
2019年 企画展『gift 2019ArtJointExhibition AKI』ビョルン倉敷店(岡山)
2019年 グループ展『てんてけ展 その6』岡アートギャラリー(岡山)
2018年 グループ展『てんてけ展 その5』岡アートギャラリー(岡山)
2017年 グループ展『てんてけ展 その4』岡アートギャラリー(岡山)
2017年 企画展『Fantastic Christmas 2017』岡アートギャラリー(岡山)
2016年 グループ展『てんてけ展 その3』pieni deux(岡山)
2015年 グループ展『てんてけ展 その2』pieni deux(岡山)
その他催事等

◇海野千尋 公式SNS

Instagram https://www.instagram.com/ufufuno_fu/

HP https://ufufu-no-fu.tumblr.com/


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