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そこにいたのはエイリアンなんかじゃなかった

9月の終わり頃、妊娠していることが分かった。
しかるべきタイミングでやることはやっていたので、思ってもみなかったとかそういうのはなかった。
妊娠検査薬は尿をかけてから反応が出るまで1分ほど待つらしいが、かけた瞬間くっきり陽性反応が出たので、トイレで一人「早っ」とか言って笑ってしまった。


今まで妊娠というものに恐怖を感じていた。
自分の体の中に別の個体がいて、それがどんどん大きくなり私の体の形を変えてしまうこと。(イメージ的にはエイリアンに体の中に入られている感じ)
私の意志とは無関係に体の中で別個体が動くこと。
自分ではどうにもならないような体調不良だとか気持ちの上がり下がりが発生すること。
旦那と2人で楽しく好きなように過ごしてきた日々がなくなってしまうこと。
十月十日が経ったら死にそうな痛みと共に体外に出さなくてはいけないこと。
下手したら本当に死んでしまうこと。
無事に生まれたとして、子供みたいな自分が子供を育てられるのかということ。
それらすべてが私にとっては恐怖でしかなかった。

そういった恐怖の数々を抱えていたので、妊娠が分かってすぐくらいは今後のメンタルやばそうだな、Webの広告でなぜかよく出てくる、妊娠中に精神病棟に入れられたみたいな内容の漫画みたいになるんじゃないかなと思っていた。

でも病院に行って妊娠が確定してから今に至る間、抱えていた恐怖は現在進行形で少しずつ薄れている。
エコーで子宮を確認した時、そこに映っていたのはエイリアンではなく、微動だにしないただの丸だった。
確実に存在しているけれど、私からは知覚できない。見た目も生命体とはわからないものだった。
それが妊娠が進むにつれ、徐々にただの丸から人の形になっていった。
心臓ができて、動き始めた。
手足ができ、骨ができ、今では体の中で少し動いているようで、時々ぽこん、と胎動を感じるようになった。
生命の神秘すぎて、自分の体に別個体が存在すること、それが自分の意志と無関係に動くことへの恐怖がどこかへいった。

また、私はかなり運の良いことにほとんどつわりがなく、思っていたより気持ちの上がり下がりも激しくなかったので、今までとそんなに変わらず日々を過ごすことができていた。(食欲不振や味覚がちょっと変わって鍋やみそ汁を食べるのがしんどいとかはある)

出産時の痛み苦しみに対する恐怖は相変わらずまだあるが、これこそまさに「案ずるより産むが易し」なのであまり考えないようにしている。


出産まで残り半年ほど。
エイリアンではなく人であった我が子よ、会えるのを楽しみにしているよ。それまでまだまだ色んな恐怖を抱えたりするかと思うけれど、体の中から私を見守っていておくれ。

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