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今日もまた、同じ日を繰り返す。

「今日のごはんは何にしよう、一昨日買ったうどんがまだあったかな・・」
時刻は深夜三時。
冷蔵庫には、飲みかけのカフェオレと豆腐、賞味期限ギリギリのうどんが一袋入っていた。
私は、どこにでもいる19歳の女の子になっているはずだった。
学校に通って、友達と遊んで、アルバイトをして、彼氏がいて。
そんな、人が当たり前だという生活をしているはずだった。

高校を卒業して、看護の学校に入った。
看護師になりたいと言う漠然とした夢を追いかけるために、奨学金を借りて、看護師になる為の勉強を始めた。

なんてことない日常だった。
学校に行って、同級生とお昼を食べて、勉強して、週4でアルバイト。
同じ日々をみんなと同じように過ごしてた。
そんな日々が、突然音を立てて崩れた。

流行り病の感染症に感染した。
幸い、命に関わるところまでの悪化には至らなかったけど、その病は確実に普通の日常を壊した。
流行り病に感染したという事実が、私から人を遠ざけた。

もしも神様がいるのなら、きっとここから私の試練は始まったんだと思う。
その翌月、お婆ちゃんが他界した。
お婆ちゃんは借金をしていたらしく、その借金を私の家族が負担することになった。
お父さんもお母さんも、口を開けばその話ばかりで、どんどん家の居心地が悪くなっていった。
それから程なくして、お母さんが精神を病んでしまった。

ある日お父さんから、「こんな大変な時にお前はいったい何をしてるんだ!」と訳も分からないままに怒鳴られた。
私の中で、ナニかが壊れる音がした。気が付いたら、家を飛び出していた。

友達の家を転々とした。SNSや出会い系アプリで知り合った男の家にも泊めてもらった。
体は楽しいことを求めて動く。代わりに私の心はどんどん壊れていった。
心を病んでしまった私は、精神科で薬をもらって眠る生活になった。
悪いことをしているつもりはなかったし、今を精いっぱい楽しんで、20歳の誕生日にこの人生を終わらせてしまおうと考えるようになってから自分の行動に歯止めが利かなくなった。

そんな私が思っていた普通とは全く想像していなかった生活が、毎日同じことの繰り返しになっていた。
そんな日々の繰り返しの中で、私と同い年の女の子に出会った。
SNSで知り合った女の子で、私なんかよりすごく綺麗で可愛くて、お仕事も一生懸命頑張ってて、とにかく全部がキラキラしている女の子。

めぐちゃんってハンドルネームのその子は、私とは正反対な人生を送っている子に出会った。
全く真逆だと思っていた私とめぐちゃんは、あっという間に仲良くなった。
ある日めぐちゃんからルームシェアしない?と声をかけてもらった。
すぐに返事をして、一緒に暮らすようになった。

それから暫くして、好きな人が出来た。
一方的な片思いだってわかっていたけど、彼に誘われるのが嬉しくて気が付いたら都合のいい女になってた。
めぐちゃんに何度も相談して、その度に二人して泣いて笑って、今の自分の人生に後悔がないようにって言い聞かせて、同じことを繰り返していた。

そんな状態で半年が経った頃、私の事を好きだと言ってくれる人が現れた。
こんな私の事を好きになるはずなんてないって、その人を拒絶した。
人の汚い部分を沢山見てきた私にとって、その人もきっと同じような人なんだろうと心の中で思ってた。

その人もSNSのオフ会で知り合った人で、一回りも歳の離れた人だった。
大くんって名前で私の前に現れたその人は、今の私を「それが今の君ならそれでいいの。大丈夫、君は強いから。」って何度も言葉を伝えてくれた。
気が付いたら、なにかある度に大くんに相談するようになってた。
苦しいこと、辛いこと、生きていたくないことも、全部打ち明けた。

私の生きたくないを、大くんは生きてみたいと思わせてくれるようになった。
「一分一秒でも長く生きて、少しでも多く笑って欲しい。」
そんなクサイ台詞で告白された私は、この人の傍に居てみたいとOKした。
めぐちゃんも、周りの友達も、みんな祝福してくれた。
そしてほんの少しだけ、息をするのが楽になった。

きっと、普通の人生とは大きくかけ離れた時間を私は今過ごしていると思う。
当たり前のように笑って、泣いて、そんな風に過ごせるようになるのはまだ全然先の話かもしれない。
それでも、もう生きることを諦めることはやめてみようって思えるようになった。
大くんも、めぐちゃんも、今の私を受け入れてくれる人が居るって言う事実が、今の私を動かす原動力になってる。

苦しいことも、辛いことも、沢山あるし嫌でも降りかかってくる。
逃げ出したくなる時だって沢山あるし、弱音を吐いてしまうことだってある。
それでも、苦しいだけの日々じゃない、辛いばかりの時間だけじゃないって、今の私にはちゃんとわかるから。

だから私は、今日もまた同じ日々を繰り返す。
今まで過ごしてきた時間と違うところがあるとしたら、明日がもっと、生きたいと思える日になるように。


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