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Au pair ワーホリ カナダ生活328日目 「長いようで短い、私の休みが終わる」

 久々の投稿になるせいか、色々と書くことがある。
 とりあえず、3月頭に帰国する予定なので、カナダにはあと1週間ほどしかいない。あっという間の1年だった。
 帰国後、どんな仕事をするかどうかは特に決めていないけれど、とりあえず英語ができなくても1年間帰国しないという目標がクリアできたので、ほっとしている。
 周囲の人には、「何かあれば帰国するよ」「ゆるいワーホリだから」「休暇目的だから」といっていたけれど、心の底では途中帰国するのは嫌だなと思っていた。人生最後のワーホリだから、1年はきちんと滞在していたかった。
 英語もできない、知り合いもいない状態でとにかく1年間海外で過ごすことができたのは、少しだけ誇らしい。半分はカナダ人家族の元で、半分はカナダ人日本人家族の元で過ごしたので、かなり難易度はイージーモードだったけれど。今の自分にできる中で精一杯頑張ったように思う。

 12月にはトロントのクリスマスマーケットに行ってノームのぬいぐるみを買ったり、カナダ発のコスメ「the ordinary」を買ったりした。ノームのぬいぐるみを買うとき、看板を見てもいくらか分からなくてアルバイトらしき女の子に聞いてみると、「15ドル」と言われた。思ったよりも安かった。これはもしかして聞き間違いしたのかなと思って念のため手を使って「50?」と聞いた。女の子は一瞬きょとんとした後に吹き出したように笑いながら、「まさか! そんなわけないよ!」と言ってくれたので、安心して買った。ピンク色のノームで可愛かった。ノームは子どものときから好きで、ノームの解説本も持っている。
 何が好きかと聞かれると、困るのだけれど。あの小さな体躯で動き回っているから好きなのだと思う。
 他にも、クリスマス当日にはウィルス性胃腸炎になって、自分でも驚くくらいおならが臭く、自分の身体に何が起きているのか不思議に思いながら床に伏せっていた。どうやらウィルス性胃腸炎はウィルスの死骸のせいで、かなりおならが臭くなるらしい。強烈な硫黄の臭いで、人生で初めて自分からこんな臭いが出てきたと思う。医者にはかかっていないけれど、ネットで病状を調べた時にこの病気が出てきて、「あ、これだ」と腹落ちした。
 ちなみにホストマザーにもこれがうつってしまい、元気になった私が食材を取りにベースメントに降りると、寝室からホストファザーが鼻を覆いながら大慌てで出てきて「臭い!臭すぎて涙が出そう!」と言っていたので、このおならは本当に臭いのだと思う。

 2月10日から14日にはアルバータ州のバンフにひとり旅をしに行った。ホストファミリーが今までのお礼にと飛行機代をプレゼントしてくれたからだ。
 英語もよくわからない状態で、私はひとり飛び立った。

 ひとり旅については、また別の日にまとめようと思う。
 他にもナイアガラの滝に行ったり、アラジンのミュージカルを見に行ったり、ヴィンテージマーケットに行ったりしているので、そのこともゆっくりと綴っていこうと思っている。

クリスマスマーケットに行くも、トロントの交通状況は相変わらず。

 12月の中頃、トロントのクリスマスマーケットに行くことにした。写真で見た雰囲気は横浜にある赤煉瓦に似ていて、ちんまりとした様子が可愛らしく、興味を持った。
 それに、今のシッター先のお母さんからは、「子どもたちのトロント日本語学校に行くついでに連れて行ってあげるから、トロントに行くことがあったら泊まりに来ていいよ」と言ってもらっていた。
 その言葉に甘えて、私はちゃっかりお邪魔させてもらうことにした。
 金曜日。子どもたちのシッターをしながら2人の帰りを待っていたが、2人とも帰りが遅くなるということで、お父さんがピザを宅配してくれた。お金は支払ってあるので、ピザだけ受け取るようにと言われ、受け取ると子どもたちと一緒に食べ始める。このピザがとても美味しかった。
 2人が帰ってくると、お父さんが「実はこのピザ屋さんはお金を払う前にピザ屋や届けてくれたんだ」と言いながらピザをつまむ。「カナダの人は優しいね」というお母さんの言葉を聞きながら、日本だったらこんなことは起こり得ないだろうなぁと思った。
 お母さんがベッドを整えてくれて、お風呂の場所も教えてくれたので、そそくさと入る。明日の朝は早いからだ。
 ベッドにもぐると、あっという間に眠りについた。
 朝起きると、みんな起きていた。パンとか好きに食べてねと言ってもらえたので、朝食を食べる。長男くんが目玉焼きを食べたいといったので、ついでに作った。

 朝早く出発すると、1時間半ほどでトロント日本学校に着く。子供たちは教室に入り、お母さんも長男くんに付き添いをしているので、私とお父さんは学校を後にした。
 時間が余っているからと湖を一緒に散歩してから、バス停まで送ってもらうと、お父さんがマップを見ながら頭を抱えていた。
 「工事をしていて意味がわからないくらい時間がかかる!」ということだった。その時の私にはどれくらい混乱している状態なのかわからず、「そうなんだ」と他人事のように思っていた。なぜお父さんが頭を抱えているのか、さっぱり、ちっとも、これっぽっちもわからなかったのだ。
 車だと15分で済むはずの距離が、バスに乗ると45分以上かかるらしい。私はカナダに来てから車のない移動には多大な時間がかかるということを知っているので、この時も「まあ、いいか」と呑気に思っていた。
 お父さんは時間的に送っていくことができる気がするから、送っていくと言ってくれ、ひとまずお母さんにそのことを伝えるのと同時に学校の駐車場へと向かった。
 お母さんもオッケーだといっているから行こうと、学校から出てきたお父さんとともに車に乗り込むと、あっさり着いた。私はお礼を言うと、わくわくしながらクリスマスマーケットの中に足を踏み入れた。

入口から入って進むと中央にたどり着く
Dior主催なので、クリスマスツリーで主張している
テナントに入っているお店が可愛かった

 途中、雨が降ってきたので雨宿りをしながら自分の好きなお店を覗きつつのんびりと雰囲気を楽しんだ。サンタクロースもおり、家族連れが一緒に写真を撮っていた。
 それを見ながら、シッター先のお母さんがくれたおにぎりをむしゃむしゃと食べる。何か買おうか迷ったけれど、それなりの値段がするので、ありがたかった。余談だけれど、私は「他人の握ったおにぎりを食べれない派」の意見は、あんまり好きじゃなかったりする。この意見の真意はある程度わかるし、私も魔法陣グルグルに出てくるキタキタおやじみたく脇でおにぎりを握られたりするのは嫌だったりするし、たとえば臭いが気になる人からもらったおにぎりは食べづらかったりする。だからきっと、この意見を言う人たちの態度が私の勘にさわるのだと思う。
 どこか馬鹿にした笑いを含んだ言い方をして、他人の握ったおにぎりを食べれないという意見を「こんなの常識でしょ」「ありえない」と主張する自分たちに対して、なにかしらの優勢感を抱いている感じが、見ていてみっともなさを感じるのかもしれない。
 自分が正しいと思う意見には、必ずそう思わない人たちがいる。だから、そういった人たちにも敬意を払いながら対立をすることが望ましいのではないかと思う。馬鹿にするような言い方をする必要なんてちっともないのに、テレビでよく見る人たちは嫌な口をしていて、もやもやとする。

 そんなことを考えながら雨宿りを終え、再び歩き始める。日本食の居酒屋や酒を売っている場所があったりして、嬉しく思いながら道を歩いていると、カナダ発のコスメブランド「The ordinary」の店舗を偶然見つけた。「ラッキー!」と思いながらお店の中に入る。昨日シッター先のお母さんが貸してくれてお肌の調子が良かったこともあり、ちょうど欲しいと思っていたのだった。
 「The ordinary」の良いところは、とにかくリーズナブルなことだ。ひとつ10ドルしない商品が多いのにも関わらず、成分は通常の2倍入っているものもあるし、商品同士の組み合わせ次第では効果が過剰に出てしまう可能性があるらしく、同時に利用できない商品もあったりと、使い方にルールがあるところも成分がしっかり入っていそうだなと感じる。日本に進出していない理由は、成分量のせいだと思っているくらいだ。日本では配合できない量、入っているのだとか。しかも広告をほとんど出さないらしく、その分の費用を商品に注ぎ込んでいるらしい。
 パッケージもシンプルで高見えするわりに安いので、プレゼントとしても喜ばれそうだなと思いながら、一通り有名な商品を買って、クリスマスマーケットをあとにした。
 この後は、クイーンズ通りのおしゃれ買い物ロードを散歩してからシッター先の家族と合流して一緒に帰る算段だったのだ。
 路面バスのバス停にたどり着くと、電柱に紙が貼ってあった。パッと読むと工事中につき、路面バスが動いていないということだった。代わりのバスが出ているということだったが、全く分からない。Googleマップを見ても、電柱の紙を見ても、ちっとも分からなかった。
 知らないお父さんも困っていたようで聞かれるものの、私も全く分からないことを伝える。
 とりあえず、雨も降っていたのでクイーン通りにいくことはやめ、集合場所の駅に向かうため、歩き始めた。あらかじめシッター先のお父さんから教えてもらっていた駅にグーグルマップの目的地を設定する。その駅から電車に乗り、ある駅で落ち合う約束をしていたのだ。

 歩いていると次第に路地がゴミで汚くなり、教会らしきところにはホームレスの人たちが配給のために列をなしている道に入った。壁に向かってぶつぶつと呟いている人や先ほどまで誰かが食事をしていたかのようなプラスチックのゴミが転がっている。明らかに治安が悪いところになり、ひたすら誰にも目を合わせないようにして、真っ直ぐ前だけを見据えて歩いた。
 カナダでは、治安が悪そうなところはあからさまに様相が変わる。雰囲気もどんよりと濁りだし、灰色の空気が視界をくすませていくように感じる。
 その道を早足で駆け抜けると、目的地まで辿り着く。
 さて、駅はどこだったかなとGoogleマップを改めてみていると、不穏な文字が目に入った。「運休」。この文字を見て、嫌な予感しかなかった。慌てて内容を見ると、この日だけ設備点検で私が乗りたい路線が運休になっていた。
 どうしてこう、公共交通機関の運がないのだろうか。
 他の道はないかGoogleマップで検索するものの、運休になっている電車は路線バスを代わりに使うように促しており、その路線バスといえば工事でだめになっており、バスに乗れば集合時間には間に合いそうになかった。私は早々に諦め、自分でゆっくり帰るかと思ってシッター先のお母さんに連絡を入れる。
 ゆるゆる歩いていると、設置されたスケートリンク会場が目の前にあった。楽しそうに滑っている様子を見て、「滑れないけど、もう滑ってから帰るか」と思いながらふらふらとスケート会場に吸い寄せられていくと、お母さんから連絡が返ってきた。
 「こういう風に乗ったら間に合うと思うから、もしよかったらそれで合流しよう」という内容が書かれていた。
 最初は遠慮していたものの、「間に合うなら頑張ってみよう!」と思い、走った。電車に乗り込むと、ふうふうと息を整える。
 トロントの公共交通機関を、心底嫌いになりそうだった。

 目的の駅にたどり着くと、無事家族たちと合流し、そのまま帰宅した。


クリスマスはひとりぼっちで過ごす

 クリスマスはホストファザーが料理を作ってくれた。ホストファミリーの友人も遊びに来て、クリスマス会が行われる予定だったが、冒頭でも書いたように、私はウィルス性胃腸炎でダウンしていた。
 信じられないくらい臭いおならとうんちとともに、汗をさげるためにせっせとタオルを濡らして額にあてていた。
 階下からは楽しそうなクリスマスを祝う声が聞こえてくる。
 でも不思議とちっとも寂しくなかった。むしろ、クリスマスという日に無理して誰かと過ごすようなことをしないで済んだことにほっとしていた。痩せ我慢でもなく、本当に寂しくなかったのだ。
 私が一緒に過ごしたい人たちは日本にいて、カナダにはいない。その気持ちがあるから、特に寂しくもなんともなかったのだろう。

 私はカナダに来てから3ヶ月に一度くらいの頻度で風邪を引いてダウンしている。前の家族のもとにいたときも、高熱を出してしまい、1人で日本から持ってきた痛み止めを飲んで熱を下げ、それでも痛む関節のせいで眠ることもできず、うんうんベッドで唸っていた。その時も、寂しいとか日本に帰りたいとかもなく、ただただ身体の不調が辛かった。
 私はカナダに1人きりだ。心底安心して身を寄せることができる人なんて、ここにはいない。だから何かが起きたら自分で全て対処しなくてはいけないし、寂しいと思うくらいなら海外に1人で飛び出さなければいい話だと思っていたから、辛くなかったのかもしれない。もとより人に頼ることや人を信用することが苦手な性質だから、寂しいと思うことも少ないのだろう。

 だから数日してからホストマザーにハグをされながら、「寂しかったらいってくださいね」と言われた時は本当にきょとんとしてしまった。ホストマザーもオペア経験があり、その時は寂しかったこともあったので私がそうなっていないかと心配してくれたらしい。
 私は寂しいなんて思っておらず、みんながクリスマスを楽しみ、私もゆっくり過ごせたのでお互いにとって良い時間の使い方ができたと思っていたくらいだった。
 何か悩みを話した方がいいのかしら。そう思って、「もしかしたら子どもを産むかどうかとか、帰国が近づいているので将来どうしたらいいのかで悩んでるのかもしれないですね」と返してしまった。話さなくてもいい、自分の大切な部分を話してしまって、今になって後悔している。
 私は昔から相手の要望に応えようと無意識的に行動してしまうところがあり、そんなときは自分を犠牲にしてまでやってしまうので、このときもそんな私の悪い癖が出てしまっていた。

 そんな年末だった。

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