フォローしませんか?
シェア
まよねっぴ達とは、末次堂の前で待ち合わせている。藍那の店からそれほど遠くないから、ナツ…
「じゃあ、あの女の子も目を覚まさなくなっちゃったんだねぇ」 藍那堂の二階。秋人達の居住…
ついりは、廃屋の一室にいた。 ほぼ朽ちかけたベットの上に、長い黒髪の少年が横たわってい…
「演奏会のソロパートさ、辞退してくれないかな」 突然そう切り出されたのは、昨年度の二月…
灰色に薄汚れた灯台の麓、俯き加減に海を見つめている人影にナツキは近づきながら声をかけた…
秋人は、霞高校の音楽準備室にいた。 隣にある音楽室からは多様な楽器の音色が聴こえてい…
ナツキは、砂浜の上を歩いていた。 そういえば最後に海に行ったのはいつだったっけな、とぼんやり考える。 少なくとも、秋人と共に藍那堂で暮らし始めてから四年、その間は一度も行っていないように思う。 「アニキの野郎には、休みの日に遊びに行くっていう発想が無えからなぁ」 誰もいない浜辺で、ナツキはひとり、ぽつんと愚痴をこぼした。 広がる風景には、やはり見覚えがない。 だからとは言い切れないが、この夢の風景は自分の記憶に依存して型取られたものではない、とナツキは感じた。
「世話が焼けるんですよ、あいつは!」 三角巾で頭を覆い、カエルの柄が入ったエプロンをス…
灰色に薄汚れた灯台の下に立ち、ナツキは南方を見つめている。 薄暗い夜だ。 眼前には遥…
数分後、ドアから出てきたついりに迎えられて、ナツキは家の中に迎えられた。 ついりの父…
「俺、そういう感情ないからさ。誰が相手でもそうだから、そこは安心してよ」 ついりの自宅…
改めて相対してみると、秋人の容姿はナツキとよく似ていた。 その肌はとにかく透き通るよ…
陽が西の地平に沈みかけ、オレンジ色に染まった商店街をついりは歩いていた。 その傍には…
「へー、ついりってどんな字で書くの?」 「ひらがなです。本当は栗の花が堕ちるって書いて堕栗花って読むらしいです。堕栗花雨っていう言葉があって、梅雨の別名だって」 「んじゃあ、六月生まれ?」 「はい。安直ですよね」 「いや、シャレてんじゃん。いい名前だと思うけどな、俺」 そういって、ナツキは煎茶の入った緑色のマグカップを口に運んだ。マグカップにはカエルを模したマークが描かれている。 ついりの目の前にも、湯呑みで温かいお茶が出されていた。ナツキが淹れたものだ。和菓子を食べる傍