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サウナな人々 - 女ってやつは

サウナ、ほの暗く汗ほとばしる空間。

今日もまたそこで、女子たちのよもやま話に花が咲き、熱風が吹き荒れる。

「最近の若い夫婦、奥さんがすごい強いよね。旦那さんに車で迎えに来るように言いつけたり、乳母車を押させたり。 私たちの頃は考えられなかったわよね。」

60代後半のおばちゃん。身近にいるけしからん女子の話。気分を害するようなことがあったらしい。

「子供産んで、その後も正社員で働いてるじゃない。子育てどうなっちゃってるのかしら。」

と、同じ年頃のおばちゃん。長らく専業主婦でサラリーマン家庭を守ってきたのだろう。

「男と同等に行動しようとする、そういう女はね、一言で言うと、"はしたない" わよね。」

そうか、そういう女のことをこの世代の人は、"はしたない"と思うのか。軽く衝撃を受けた。平成も終わろうとしている今、そんな考えの人たちがいる事実にも驚きを隠せないが、これが60代後半あたりの一般的な考え方なのかもしれない。

自営業の両親を持ち、お互いが喧嘩しながらでも対等に働いている姿を見ながら育った私には、持ち合わせていない考えだ。


「今は時代が変わったかも知れないけど、私たちの頃は絶対にしなかったわよね。常に夫を立てて、子育て、家のことをやって」

「自分のこともままならなかったし、それが普通なことだったわ」

同じ価値観で時代を生きた人たちが、そうであっただろう記憶を元に、現在の面白くないことを語り合っているが、そんなに長くは続かない。

だってここは90度の世界だから。

2人は水風呂へ向かうために、話を一旦終わり、サウナから出て行った。

その後2人は戻ってこなかった。私は何度かサウナと水風呂を繰り返した。2人の会話を思い出して、時おり、もやっとした気持ちになったが、サウナの熱に清められ、水風呂に研ぎ澄まされ、その気持ちはサウナを出る頃には霧散していた。


髪を乾かすために、ドライヤーが置いてある鏡の前に行くと、先ほどのおばちゃん片割れが、一糸まとわぬ姿で仁王立ちし、眉毛を丁寧に剃っていた。何種類かのカミソリが手元に置かれていることを鑑みると、全身のムダ毛処理を施していたようだ。


乳房も腹部も臀部も丸見えで、目のやり場に困ってしまった。女子しかいない空間であっても、公共の場でムダ毛処理をするなんて、如何なものか。

私の言葉では、これを「はしたない」と言うなと思った。

おばちゃんがはしたないと思うことは、私ははしたないとは思わない。またその逆も然り。おばちゃんたちの話をもう少し聴けたら、理解できたのかな。ふむ、どうだろうか。

よくよく見ると、おばちゃんの全ての足の指の間に、丁寧にティッシュが挟まれていたのが味わい深く、もう何でもいいやと言う気持ちになった。




いつも有難うございます!