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ふるさとの 訛なつかし 美容院の 人混みの中に 昔日を聴きにゆく

やっと美容院に行くことができた。緊急事態宣言で美容院が閉まっていたり、自分の予定が合わなかったりでなかなか行けなかった。

どこで見つけて取材してきたのか、"おじいさんおばあさん夫婦がなかなか床屋/美容院に行けなくて困っています。おばあさんがおじいさんの髪を切ってあげてます"という、誰得かなというニュースがあった。理由は違えど美容院へ行けなくて困った人は、私を含めて3人はいることが判明している。

ロン毛のため不潔感を与えないようにと、仕事中は髪を纏めてしまうので前髪さえどうにかすれば、さほど長さやバサバサ感は気にならないのだが、やはりホワイトヘアーだけはいただけない。顔の周りにだけ、わざわざ嫌がらせの如く白くなる。

昔、パワーストーンを売ってそうと言われた何とも言えない怪しい雰囲気がホワイトヘアーによって引き立てられてしまう。なんのハンドパワーも持っていないというのに、とんだ見かけ倒しである。

最近ホワイトヘアーを生かそうという流派が現れたが、母の髪のホワイトvsブラック配合割合を見れば、あと30年くらいはブラックの方が多そうなので俺たちの戦いはまだ始まったばかりだ。閑話休題。

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ここ最近行っている美容院の美容師さんは、なかなか気に入っている。割となんの話題にもついて来てくれるし、話さなくてもいい雰囲気も醸し出してくれるので楽だ。

入口で手指の消毒をし、マスクをしたまま椅子に座る。窓は全開。全ての工程において、マスクはつけたままだし、美容師さんたちもマスクを標準装備している。何だか物々しくて、緊張する。


前回「鬼滅のキャラのイメージカラーを毛先に入れるのが流行っている」と話した時は「派手ですねー」くらいのノリで軽く流されてしまったが、久々に行ったら美容師さんはガッツリ鬼滅にはまっていた。

アニメ以降内容をネタバレで拾ってこそこそと読んでるので、精神の安定がいちご1000%の時でないと、これは読み進められんと思い、マンガには手が出せていない。しかし美容師さんは既にマンガで最終回まで読んでしまっていた。猛者。

登場人物の背景まで物語の中で語られるので、その苦しみで安易に読み進めば闇落ちしそうだ。小学生に人気というのは何故なんだろうか。義勇さんの素敵さだろうか。私は生殺与奪の権を握られたい。

金カムやジョジョのように素敵な登場人物たちが、結構死ぬのもこたえる。pixivで現代ものを創作して貰わないと情熱が燻って困る類のマンガである。

アニメが終わった後は、炭治郎ロスに陥り花江夏樹くんのYoutubeにて興味の無いゲーム実況を見て、癒されているらしい。主人公に炭治郎みがあるので、「グレイプニル」をお勧めしておいた。私も途中までしか見てないけど。

家人や周りの人は鬼滅を見ないし、読んでもいないので、久々の心躍るトークと綺麗に染まったヘアーに満足して帰宅した。

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ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人混みの中に そを聴きにゆく

アニメの啄木鳥探偵社を見ていたが、ミステリーの内容が自分の好みではないし、石川啄木のキャラが生理的に受け付けないので途中で見るのをやめてしまった。しかし実際の本人の人生と歌にはぐっとくるものがある。やはり才能ある人は、見てて苦しくなるほどに繊細で不器用だ。生きていくのが大変そうだ。

啄木のように寂しいような気持ちはないし、家族以外の人とほとんど話さない状況もなかなかに気に入っていた。孤独はいつでも誰といても感じているので、どうということはない。

しかし久々の他者とのたわいもない話は、なまぬるい沼に、流れる冷たい水の様に清々しく感じ、サウナ後の水風呂に入った瞬間の様に頭がシャッキリした。同時に当たり前であった以前の日常を、マスク越しの会話だったけれどとても懐かしく思った。

とある作家さんは、何年でも家に引きこもることができると言っていたが、私にはできそうもない。適度な他人からのストレスは生きていることを感じさせてくれるのだ。だからそれは仕方ないけど私には必要なものだ。

リハビリの様に少しずつ人と交流を再開して、以前とは変わってしまった日常に馴染んでいく。少し経てば、違和感は無くなり、違和感も日常に変わっていくだろう。それでも在りし日を懐かしく思う事もあるのだと思う。

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家に戻り、夕食の準備をしていると、今日もいい子に家人が帰ってきた。

「ただいまの呼吸〜」

と疲れた様子だがエッセンスだけを拾って私を煽ってくる。マスクを外して、手指の消毒をしたら、干天の慈雨で迎えうってやろうではないか。余談だが、鬼滅の影響で剣道を習う子供が増えているらしいが、水車とか出ると思ってるのだろうか。

我が家の日常も同じ様に変わったかもしれないけれど、変わらないものなど無いのだから、大事なものだけを失わなければその他は些末なものだ。大事なものを間違わなければ、切なくても苦しくてもどんなでも人生は上々だ。

いつも有難うございます!