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帰る場所があるということ 二人暮らし

お風呂場の電気をつけないで、お風呂に入っている奴がいることに気が付いた。うちは二人暮らし。私でなければ、それは相方だ。明白。

基本的に片方がお風呂に入っている時に、洗面所には入らないのでお風呂に入っている時、そこは占拠しているものの自由空間になる。「何故電気を消すのか?」と問えば「何故電気を消してないのか?」と返されてしまった。質問に質問で返すなと言いたい。

一緒に暮らして10年、未だに行動に謎が多い人だ。

一人暮らしはした事がない。程よく交通の便がいい場所に住んでいたので、学校や会社へは実家から通っていた。両親と弟妹3人と私の騒がしい6人暮らしが、私の家族像だ。

結婚することになり、家を出ることになったのは、今からちょうど10年前のことだ。

プロポーズされてから6年、お互いの状況が落ち着いてきて、よしじゃあ結婚するかと二人で部屋を探し出した。今となっては、長々と実家暮らしをしていた二人が結婚するかとメーター振り切ったきっかけは思い出せない。相方に聞いてみても、よく覚えていないそうだ。Kにニューラライザーをされたような感じだ。

相方は結婚前少しだけ実家から、一駅先の場所で一人暮らしをしていた。理由ないことはしない人なので何か理由があったと思うが、これもきっかけがよく思い出せない。理由を聞いた気もするが覚えていない。この一人暮らし期間約一年を経て、二人暮らしに移行した。

今思えば、二人暮らしをするための彼なりのイメトレのようなものだったのかもしれない。

近所の不動産屋へ行き、予算、部屋の希望を伝える。間取りや広さは、図面からは立体的にならない。図面を見ているうちに、グルグルしてきて疲れてしまった。

3件くらいピックアップしてもらい、1件、そこの不動産屋から歩いて行ける部屋があったので、ひとまず見に行くかと言うことになり徒歩で向かう。

まだ前の人が出たばかりで、何となく人の気配が残る空っぽの部屋。駅から徒歩7分、大通沿いとは言え夜道は暗そうだ。ベランダに出てみると、横のマンションのベランダが近いし、こっちのベランダが丸見えだ。隣は昔ながらの材木屋。ちょっとだけ火事が心配だ。

間取りと予算が合致した部屋であることは間違いない。が、何かが違う気もする。何だか疲れてもうどうでもいいような気持ちになっていた私は、もうここでいいかと相方に言った。

相方は驚いたような顔をして、

「駄目だよ。ここじゃあ、夜道は暗いし、ベランダが隣のマンションから丸見えじゃないか。残業で遅くなったら帰り危ないし、どんな人がいるか分からないんだからベランダも危ないでしょ」

とぼんやりと感じていた懸念事項を言語化してくれた。

「お腹空いてて面倒くさくなってるんでしょ」と私にチョコをくれた。子供か。

結局3件目に行った、今住んでいる部屋に決めた。予算は少しオーバーしたが、とても気に入っている。

初めての部屋探しは、楽しかったのだが中々に疲れた。そして更に引越しをしなくてはならず、生活空間を整えるのに結構な労力をさいた。住む場所を替えるのって案外大変なんだと始めて気がついた。

ここに住んでいる10年間で辛かったことも楽しかったこともあった。

2011年の地震、相方が無職、転職した外資系企業でのパワハラ&ストレスで私激痩せ、家計のキャッシュフロー悪化など、まぁ辛いかったことしか出てこないな。

幸いなことに辛いことも底を打ち、多くを解決し、今はもう少し頑張ろうと前向きに生きるフェーズに突入した。

相方の言葉をかりれば起こったことは「全てプロセス」なのだそうだ。辛い時期に、あんまりに呑気にそう言うものだから、「お前何とか働けよ」とおでこにパンチしたこともあるが、そう言うものなのかもしれないと今は落ち着いて考えることができる。かもしれない。人間ができていないもので。


明日どちらかが欠けるかもしれない。普段は忘れてはいるが、一寸先は闇だ。状況が変わる時は、唐突に乱暴に日常はぶち壊されていくものだ。

けれど、いつでも戻る場所は彼がいる場所だ。冒険が終わったら、真っ先に戻るのはこの初めて借りた二人の部屋だ。そこでそれぞれに起こった出来事をあーでもないこーでもないと話し合う。そんな日が心臓が息の根を止めるまで続けられるように、ひた走りたい。


さて冒頭のお風呂場の電気を消す件について。

理由は「神秘的だから」だそうだ。シャワーで身体洗うのに神秘的は必要だろうか。必要なんだろうな。

いつも有難うございます!