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楽曲分析のススメ

「楽曲分析」「アナリーゼ」

…何ともムズカシそうな言葉です。何それ、オイシイの?音楽なんて楽しけりゃそれでいいじゃん!

その通りです。ただ楽しめれば、感動できればそれが一番良いのです。どんな曲でも練習を続ければその内形になるかも知れませんし、それなりに楽しめるでしょう。でも、コツってないの?

そう、今回はスピーディーに曲を仕上げる工夫の話です。つまり演奏の話です。時間が限られている人生、少しでも早く、多く曲を弾けるようになりたいと思いませんか?

これは一見プロ向けの様ですが、アマチュアでも関係ありません。だって、曲を早く弾ける様になって、たくさん曲を弾ければ楽しいでしょう?

楽曲分析の目的

ズバリ、楽曲分析の目的は

1:曲を捉える → 曲のストーリー、雰囲気を知る
2:表現のためのテクニックを探る → 練習するべき内容を決める

の2つです。1を踏まえて2を研究するのがポイントです。練習がやみくもにならない様に、「何を練習すれば良いか」を探るのです。もちろん、音階などの基礎練習は大切ですが・・・

曲を捉える

さて、曲を捉えるとはどういう事でしょう?大ざっぱに言えば、曲の組み立て(構造)を確認する事ですが、そのためには次の事を知る必要があります。

1:全体のストーリー(場面の組み立て方=形式)
2:それぞれの場面(場面の特徴=調性、雰囲気)
3:細かい流れ(フレーズ単位の特徴=主題、息遣い)
4:もっと細かい部分(メロディや伴奏の細部、和声=細かいニュアンス)

基本的に1が最も大ざっぱで、4が最も細かい部分の分析ですが、2、3、4については上記は一例で、実際は曲によって様々なケースが出てきます。

しかし、最初は大きく全体像を確認し、段々細部に目を向けて行くのが基本です。ストーリーを知る事で雰囲気も理解できますし、細かいニュアンスは大きい流れを掴んでこそ説得力が増します。

この様に、大抵の音楽には大小の差はあれ「ストーリー」があり、ストーリーにはパターンがあります。音楽では3部形式(ABA形式)、ソナタ形式等、「〇〇形式」とする事がほとんどです。

分析1:楽曲のストーリー=形式

例えば、最初のシーンから違う場面に変わり、最初の場面に戻る、などという流れは3つの場面なので三部形式、または「ABA」として捉える事も出来ます。違う場面になる度に違う記号を割り当てると整理しやすいでしょう。

交響曲第5番「運命」(ベートーヴェン作曲)を始め、「ソナタ形式」と呼ばれるクラシックの代表格である形式もABA形式の仲間と言えます。

「子犬のワルツ」がABA形式だと知っていると「最初の場面から違う場面に変わって、いつかは最初の場面に戻る」と予想できます。

分析2:場面

それぞれの場面には主題(テーマ)がある事が多いので、曲が始まったらとにかくその雰囲気を楽しむ事です。すると、違う場面になった時に自然と景色が変わる様に感覚で分かると思います。

場面がどの様に移り変わるかも曲によって工夫が違います。ガラッと変わったり、さりげない移り変わり方もあって様々です。雰囲気の変化を味わいましょう。

分析3:主題、モチーフ

主題の「つかみ」のような歌い出しを「モチーフ=動機」と呼びます。楽曲の顔と言っても良いでしょう。しっかりと特徴をつかんでおくと、違う場面に移った時の「対比」のヒントにもなるでしょう。モチーフがよく馴染む様に歌い込んでおく事が大事です。

分析4:雰囲気と「指示」

楽譜に「rit.」と書かれていれば速度を徐々にゆっくりにします。「cresc.」とあれば段々音を強くします。しかし、なぜその指示が書かれているのでしょう…?それを考えるのが重要なのです。「言われたままに」演奏するだけでは棒読みの様になってしまいます。

演じるためにはそのストーリーの登場人物になりきる必要があります。悲しい場面で「悲しい」と言えば雰囲気が伝わる訳ではありません。音楽では「音で雰囲気を出す」事が大切です。指示は演じるためのヒントなのです。

分析5:細かいニュアンス

雰囲気は良いですが、何を話しているのかイマイチ分からない、という人はいませんか?演奏もそのようなケースは珍しくありません。メロディの歌い初めから歌い終わりまで、伴奏他、すみずみまでこだわって表現する事も大切です。

たった2つの音も、どの様に連なっているかを観察すると、表現の可能性も見えてきます。「ちょっとしたニュアンス」で印象がガラッと変わります。

演奏解釈の可能性

映画やドラマではストーリーと俳優さんの演技を合わせて楽しむ様に、音楽も「曲の魅力」と「演奏者の表現」を同時に楽しみます。だから、演奏者はまず楽曲の作りを知っておく必要があるのです。

その上で、楽曲の中でどれだけ自由に表現できるか探る事が大事です。それが「演奏解釈」の可能性であり、同じ曲でも演奏家の個性が出る部分でもあります。「ベートーヴェン弾き」や「ショパン弾き」と言われるピアニストでも色々なタイプがいますね。

演奏表現とは

ある曲を演奏するという事は、言い換えれば「その曲を通して自分の表現をする事」です。このために必要な事は、

1:楽器の技術(楽器をコントロールする力)→楽器それぞれ
2:表現力(感情や様々なイメージを音楽で表す力)→当人の音楽性
3:楽曲の分析力(その楽曲の構造を理解する力)→楽曲それぞれ

の3つと言えます。実際はこれらは組み合わされていて、

1+2=「楽器ならではの演奏表現の力」
2+3=「楽曲の魅力をイメージする力」

であり、総合すると
1+2+3=「楽曲の魅力を演奏で表現する力」
が必要と分かります。

実は2の「音楽性」(=感性)が最も大事ですが、聴き手に伝えるためには楽器も上手で、曲の良さをアピールできる事も大切なのです。1は日々の鍛錬、3は楽曲の研究といったところでしょうか。

曲をさらう時には基礎練習は別として、3(楽曲分析)→1(表現のための練習)と整理するととても効率的な練習ができます。「1のための3」という作業と考えると良いでしょう。2は経験を積んで自然と身についていきますが、貪欲に音楽を楽しむ事が重要です。

まとめ

このように、充実した演奏表現のためには楽曲を深く理解する必要があります。楽曲分析はその具体的な方法で、形式の他、「和声」や「モチーフ(動機=テーマのきっかけ)」やその展開など、大小様々な要素を整理する事です。すると、表現の方法が分かる様になり演奏に説得力が出てくるのです。

さあ、アナタも「楽曲分析」をして音楽をより楽しみましょう!

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