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モロッコ1(先史時代など)

世界各国史まとめ、今回はモロッコ王国の先史時代やベルベル人について書いていきます。


ベルベル人

モロッコにおける人類居住の歴史は前期旧石器時代まで遡り、考古学的証拠は少なくとも40万年前にはこの地域にヒト科の動物が生息していた事を示している。

記録に残るモロッコの歴史はフェニキア人が植民地化した事から始まるが、その地域には約4000年表前から先住民のベルベル人が居住していた。

彼らは元来コーカソイド(地中海、北方)人種だったと考えられるが、トゥアレグ族(サハラ砂漠西部辺りで活動する遊牧民)など混血により一部ネグロイド(出アフリカをしなかった人々)化した部族も見られる。トゥアレグ族についてはマリの記事で書く予定。

ベルベル人の先祖はカプサ文化を築いた人々と考えられており、チュニジア周辺から北アフリカ全域に広がったと見られている。

ベルベル人という名称はローマ人による蔑称で、ギリシア語の『バルバロイ』が由来といわれる。バルバロイはバルバロスの複数形で『聞きづらい言葉を話す者』または『醜い言葉を話す者』の意であり、ベルベル人の自称はアマーズィーグである。

モロッコのベルベル人は主に山岳地帯に住んでおり、リフ山脈に住むリフィアンは他のベルベル人と同様に一時的な移住は伝統として受け入れられている。また世帯内の最年長の男性が決定権と責任を持ち、女性は差別される事なく共同して若者や病人の世話をする。

アンティアトラス山脈に住むシルハ族は自分たちを『イシェルヒエン』と呼び、伝統的に家畜の群れを飼う農民である。彼らの中には半遊牧民もおり、水が利用出来る季節は栽培し、乾季には群れで移動する。彼らは季節の変化に応じて相互に放牧する権利を提供し協力し合った。

アトラス山脈中部に住むザイエン族は第一次世界大戦下でフランスによるモロッコ征服中に行われた『エル・ヘリの戦い』に勝利するほど、祖先の土地への愛着と戦士としての粘り強さを持ち合わせている。上述の解説は当該戦争の記事で書く予定。彼らは年に2回、寒さの厳しいアトラスから気候の穏やかな低地のアサガルへ向かい冬を過ごす。


アテル文化

北アフリカの広域、オマーンやトール砂漠で見られる中期石器時代もしくは中期旧石器時代の石器群によって特徴づけられる文化である。最古のアフリ石器はモロッコのイフリ・ナンマル遺跡で発見されている。

アテル文化の石器群には様々なヴァリエーションがあるが、ルヴァロワ型(制作する剥片の形を想定し、注意深く調整された石核から剥片を剥がす技法)の剥片や石核はほぼどこにでも見られた。

比較研究によって最終間氷期の北アフリカは個別の産業でなく関連技術のネットワークから構成されており、その類似点と相違点は地理的距離とグリーンサハラ(アフリカ湿潤期)の古気候学に相関している事が示唆された。

サハラ砂漠では湖や川、泉の近くで野営を行い狩猟や採集を行っていたようである。やがてヴュルム氷期(最終氷期)に起こったサハラ砂漠の超乾燥化により、アテル文化の狩猟採集民は熱帯地域や大西洋沿岸に移動した可能性がある。


ジェベル・イルード

はるか昔、現在のモロッコにあたるサバンナ地帯で太古の人類が集団で焚き火を囲んでいた。焚き火の周りには彼らが使っていた石器が散乱していた。ジェベル・イルード遺跡で発掘されたのは、現生人類とよく似た初期人類の化石だった。

当初彼らはネアンデルタール人と考えられており、彼らの頭蓋は我々の頭蓋ほど丸くなく、もっと細長かった。その為彼らの脳は我々の脳とは違っていたと考えられる。だが彼らの歯は我々の歯とよく似ており、顔も我々現生人類にそっくりだったという。

発見された道具はガゼルの骨や炭の塊と一緒で、ガゼルの骨には切断痕や骨髄採取の為の切り込み、炭化など屠殺や調理の特徴的な痕跡が見られた。

同年代に南アフリカでも初期人類の一つが見つかっており、初期人類がアフリカ全域に広く分散していたと考えられる。彼らは過酷な砂漠が周期的に草原(グリーンサハラ)に変わる時期にアフリカ北部に広がったのかもしれないとの事。

アフリカ全域に広がった彼らはやがて、日出る場所を目指し出アフリカを果たす事となる。

−つづく−


北アフリカといえばベルベル人、ベルベル人といえば北アフリカ。とはいえイスラームと共にアラブ人が入ってきてからは少数派となってしまうわけですが。民族の問題は難しいですね。


参考サイトなど

『ルヴァロワ技法|Levalloi Technique』https://www.eonet.ne.jp/~libell/1levallois-l.html

『NATIONAL GEOGRAPHIC −30万年前の人類化石は初期ホモ・サピエンスか−』https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/060900217/?ST=m_news

『Wikipedia −History of Morocco−』https://en.m.wikipedia.org/wiki/History_of_Morocco

『Wikipedia −ベルベル人−』https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB%E4%BA%BA

『Wikipedia −バルバロイ−』https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%AD%E3%82%A4

『Wikipedia −Rifians−』https://en.m.wikipedia.org/wiki/Rifians

『Wikipedia -Shilha people-』https://en.m.wikipedia.org/wiki/Shilha_people

『Wikipedia -Zayanes-』https://en.m.wikipedia.org/wiki/Zayanes

『Wikipedia −アテル文化−』https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%86%E3%83%AB%E6%96%87%E5%8C%96

『Wikipedia ジェベル・イルード』https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%8

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