詩「抱擁」
同じ景色を共有し
流れる涙を重ね合わせた刹那
あらゆる輪郭が曖昧になりはじめ
古の融合願望が呼吸を取り戻す
それがある側面においては
成長を阻む引き金になろうとも
内側から溢れだす純然たる悦びを
封じることはもうできそうにない
つけ根の脈をさらうように
指を深く深く絡め、生を確認すれば
豊かな睫毛に縁どられた
硝子玉のような瞳に捕縛され
本能の開眼と理性の降伏
赤錆だらけの南京錠さえ、音もなく外れ
「あなたといると私を象る境界線がもどかしい」
抑えきれない本心がとめどなく流れだす
もう擬態も装飾も要らない
ただその腕のなかで無防備に丸まりたい
発語を覚えたばかりの幼子のように
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