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詩「再生」

ぽとり、と
どこからか落ちてくる一滴の不安は
目を凝らすほど
じわり、と大きなにじみを生む

油断すれば瞬時に折り重なる
過去―いま―未来

心のレンズは微小な共通点を拡大し
全ての景色を同一視したがる

限りなく類似性を感じて
ときに恐怖を覚えたとしても
個々の事象は別物であって
とりまく環境はもう違うのだから
ひとまず深呼吸

茨を踏みしめる足裏は
幾度となく出血に咽び、苦痛に喘ぎ
その皮を無様に散らしては
卑小な存在を叫んだ

寒空に吸い込まれる号哭ごうこく
失笑を買う変化への渇望

数え切れないつまづきの果てに
強化を学習した細胞は緩やかな再生を迎え

ずらり、と
腕組みをして立ち並ぶ履歴に
にこり、と会釈してみせた

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