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正しい意思決定をするための「心の物差し」

「Integrity」「真摯さ」と訳したのは、
ドラッカーの著作の大半を翻訳された
故・上田惇生先生である。
英語の言葉そのものも、なかなかなじみの
ない単語である上、充てられた訳語も、
日本人が普段頻繁に使う言葉ではないため、
その意味するところを理解する人はかなり
少ないような気がしている。

しかしながら、この「Integrity」あるいは
「真摯さ」は、ビジネスパーソンとして
極めて重要な資質
であり、
全てのリーダー、マネジャーが理解し、
追求するべきものと思っている。

以前、こちらのエントリーでも書いた通り、
ドラッカーの研究にたずさわっている
方々は、ほぼ例外なく皆さん「真摯さ」が
にじみ出ている
ような方ばかり。
私自身も、遅まきながらドラッカーからの
学びを通じて、「真摯さ」を自らのものに
したいと思う日々である。

「Integrity」という言葉を、そんなわけで
非常に好んでおり、そうありたいと思う中、
そのものズバリなタイトルの本が出版された。

著者の岸田さんは、長らくATカーニーで
日本代表を務め、今年から業界を変えて
ラッセル・レイノルズの日本代表を務めて
いらっしゃる岸田雅裕さん。
東大からPARCOに就職、MBAを取得後に
外資系コンサルティングファームで活躍
されてきた方だ。

企業のトップと渡り合う仕事に長年従事
されてきた経験を踏まえて、リーダーが
「自分軸」をしっかりと持つための
指南をしてくれるのが本書の位置づけ。

Do the right thing.
Do the things right.

この両者は全く異なる、という話が
第1章に出てくる。

前者は、「正しいことをやる」
後者は、「ものごとを正しい方法でやる」

違いは明らかであろう。

前者は、経営の目的に沿って、
何が正しいことなのかを押さえた上で、
その正しいことをやることになる。

後者は、もし目指していることが
倫理的に誤っていたとしても、
前例に倣ってやり遂げようとする。

この本で説く「Integrity」とは、
たとえ周囲のプレッシャーなどから
「Do the things right.」
の道を選びそうになっても、
そこを踏みとどまって、
「Do the right thing.」
の道を選ぶ心構えであると言える。

言い換えれば、「Integrity」とは
正しい意思決定を行うための、
心の物差し
であり、あるいはOS
(Operating System)
である。

本書内で、渋沢栄一の『論語と算盤』や、
ドラッカーの『マネジメント』も当然の
ように紹介されているのだが、著者が
紹介しているそれ以外の参考書籍も
非常に興味深く、参考になる。

企業経営者というのは、最後は裸の
人間としての度量、魅力が試される

のであり、そこでモノを言うのが
「Integrity」「真摯さ」である、
そうまとめることが出来るように
思われる。

「正しいこと」を追求する上で、
その「正しさ」が、エゴにまみれた
ものでは、誰も付いてこない。
誰から見ても「正しい」と思える
普遍的な価値を追いかける
ことで、
その価値に共感する人の輪が広がって
いく。

金太郎飴のように、どこを切っても
同じ「正しさ」が表れる。
そんなあり方を目指すための
ガイドとなり得る本だ。



己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。