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メタバースについて編集者が今考えていること(1)


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最近、さまざまな場所でメタバースという言葉を耳にするようになりました。その大きなきっかけとなったのは、やはり2021年10月に発表された、フェイスブック社の「meta」への社名変更の報道でしょう。

ただの社名変更ではなく、既存のフェイスブックの延長線上ではない、まったく新たな「メタバース関連領域」に大規模な投資をしていくということを、リーダーであるM.ザッカーバーグ氏自身が意思表示した、ということが、非常に強いメッセージとなったように思います。

編集者というのは、新しい話題には積極的にアンテナを貼る職業です。でもそれと同時に、あらゆる物事に対して批評的な視線も合わせもっておく必要があります。

ビジネスにしても、創作物にしても、それが花開くのは時代、あるいは社会との接点においてです。よって、時代の大きな流れを見ておくことはとても大事です。一方で、時代の流れに乗っていればそれでよい、というものでもありません。

「時代の流れ」や「社会の趨勢」ばかりを見て、自分たちの強みや弱みを忘れてしまっては本末転倒です。重要なことは、時代の流れをポジティブな面もネガティブな面もバランス良く捉えつつ、その中で、自分たちが持っているコンテンツとの「接点」を見出していくことです。

何か新たな話題が出ると、「○○はすごい!」と飛びつきたくなります。逆に「○○なんてたいしたことないよ」と否定したくなる人もいるでしょう。メタバースも同じで、いま世の中には「メタバースはすごい!」という人もいれば、「メタバースはすごくもなんともない!」という人もいます。でも、そうした評価は、少なくとも自分のアイデアを形にしていこうと考える方々にとっては、あまり重要ではありません。

なぜなら、未来は常に不確定だからです。未来に何が起きるかはわからない。ただ、それがどのような「幅」の中に収まっていくのか、どのような「ベクトル」に向かって進んでいくかということを予測することは重要です。その予測によって、自分のビジネスや創作物の方向性を軌道修正する必要が生じることもあります。

メタバースについて「これまでにはない、誰も体験したことがない画期的なもの」という見方と、「これまでにもあった、多くの人が体験したことのあるものの延長線にあるもの」という見方は、実は対立するものではなく、両立しうるものです。(ディベートによって、どちらかの立場を「論破」する必要などないわけですね)

そもそも、「誰も体験したことのない画期的なもの」という表現には矛盾があります。メタバースが「誰も想像すらできないほどすごいもの」なのであれば、その「すごさ」は誰にも理解できないし、評価することもできないはずです。

たとえば、21世紀に生きる我々の視点からみれば、「自動車」という存在が、この200年ほどの間の人類の歴史を大きく変える大発明であったということには、疑いの余地はありません。そして現代に生きる私たちは、自動車という発明の「すごさ」を、いくらでも説明することができるでしょう。

しかしながら、自動車が発明され、それに初めてに乗ったときの人々の「誰も体験したことのない画期的な体験」は、どのように言語化することができたでしょう? 「鉄でできた箱に、荷車のような車輪がついている」「まるで馬に乗っているかのように、スピードが出るんだ」と説明したところで、その「すごさ」を十分に表現し、周囲に伝えることは難しかったでしょう。

自動車というのは、世界を変えた発明品のひとつです。それを説明するためには、私たちはそれまでにあった何かを題材にするしかなかった。仮にメタバースが「自動車」に匹敵する発明であったとしたら、同じことが起きていると考えられます。つまり、「すごい」けれど、その「すごさ」を説明する言葉がないのです。

よくメタバースについて「セカンドライフと同じじゃないか」という批判があります。確かに、フェイスブックの発表や、その他の識者の説明を聞いても、メタバースは、かつて失敗似終わったセカンドライフと同じような印象を受けます。ただ、だからといって、メタバースがセカンドライフと同じような末路をたどる(その可能性はあるかもしれませんが)と決まっているわけではありません。私たちが「メタバース」と「セカンドライフ」の違いを認知できていないだけかもしれないのです。

繰り返しになりますが、人間には未来予測はできません。しかし、メタバースは、仮にも現在世界のトップ企業GAFAMの一角を占める巨大企業が、途方もない金額を投資すると確約した分野なのです。まずは「なんらかの可能性がある」という立ち位置から評価していくべきではないか。編集者としてはそう考えるのです。

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