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アーモンド

日本はまだ肌寒い3月、休暇である国を訪れた。

紛争、侵攻、爆撃、難民など、日常では縁遠いキーワードで
連日ニュースに上る国。

訪れる前は少しだけ警戒していた。
でも現地の印象は違った。

きれいに整備された公園には桜と見紛うような桃色の花が咲き乱れる。
満開の木の下では、幼児連れの家族やご老人が木を見上げてくつろぐ。
暖かな日差しの下、持参したごはんを食べながら。

あ、日本のお花見と同じだ、日本と同じ平和な国なんだな。
そのときは思った。

でも、日本に戻ってきてみれば、
やはり物騒な言葉たちがかの国のニュースを埋め尽くす。
滞在中も、数十キロ先では爆撃が行われていたらしい。

一度訪れただけでは何も分からない。
分かったようで、私は何も分かっていない。
あの国の複雑さも、混迷も、矛盾も。

日本に戻ってきて分かったことは、
あの桃色の花がアーモンドの花だということだけ。

うん、また訪れてみよう。
できればアーモンドの咲く季節に。

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