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映画パンフレット感想#13 『ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター』


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感想

B5サイズ、中綴じ製本で28ページ。スチール写真とテキスト(寄稿等)の配分はほどよい。装丁もボリュームも(私がおもう)標準的で、良質なパンフレットといったかんじ。各種記事も、作品解説から、音楽や時代背景に特化した解説、監督インタビューなど、要所が押さえられている。内容も良い。なお、“ストーリー”記事は序盤だけでなくラストまで触れられており、鑑賞後に振り返るのに便利。最近の映画パンフは、このように“あらすじ”記事で全編網羅されていることが増えてきた実感がある。各シーンごとに没入しすぎるフシのある私は、ストーリーの流れを忘れがちなので大変たすかっている。

映画ライターの古里静花氏の寄稿では、作中の描写を分析しながら、最後に“ある名作映画”との関係性について論じられており、新たな発見を得た。音楽評論家の鈴木敦史氏の寄稿では、本作の音楽を手がけたマイケル・ナイマンと劇中曲について、解説がなされている。私はつい先日『ピーター・グリーナウェイ特集』のパンフでもナイマンの解説記事を読んだばかりだったが、さらに理解を深めることができた。また、ナイマンがこだわった“実験音楽”と本作の主人公エイダの性質に相似性を見出す結論は、大変興味深く読んだ。

北海道大学准教授の原田真見氏の寄稿では、劇中では詳しく語られない当時ニュージーランドへ移住した人々が抱える事情や文化的背景など、丁寧に解説されている。作中の描写ひとつひとつの背景にあるものが見えてくる。監督へのインタビュー記事でも、興味が引かれるポイントが多数。特に、「エイダを演じたホリー・ハンターとの初期のエピソード」や「水にまつわる環境音に関するエピソード」は面白かった。

浜辺に取り残されたピアノ、浜辺に貝殻などで描かれたタツノオトシゴなど、多数の印象的なイメージで彩られる本作。それらのスチール写真ももれなく掲載されているので、パラパラめくって眺めるだけでも十分楽しめるパンフレットだと思う。

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