怒ってます!!!


私の大学の哲学の教授に、常に怒っているような方がいる。表情はもちろん、その動きにも怒りが迸っているようにさえ見える。

先生のことを、我々学生は恐れていた。しかし、一方で可笑しいとも思っていた。


印象的なエピソード。
入学したて、一年生の初めての授業の時、先生は一番後ろの席で寝ていた学生の目の前に行き、部屋中に怒声を響かせた。そして、最終的にその生徒を教室の外に追い出した。

以来、その出来事は伝説として、我々から後輩へと語り継がれ続けている。

まあ、とても怖く、とっつきにくい先生ゆえ、彼のゼミを所望する学生はそれほどいない。(一部の真面目な生徒には人気があったが。)

特に、自ら怠惰を自称するような"ノミサー"、"ヤリサー"の学生は絶対に避けようとする。実際、彼らは先生の怒りの矛先になることもよくあったからだ。



2年生の時、私は先生のゼミの生徒だった。
その時も、相変わらず表情、動作共に怒りと威厳に満ちていたが、心なしか語調は柔らかいように思われた。内容は古代ギリシャ哲学についてだ。ソクラテス、プラトン、アリストテレスの時代である。先生はその道で高名な研究者だ。


この授業の中で、先生が言った言葉が、私の中に強く残っている。



然るべき時に怒ることができる。それが出来なければ腑抜けです。』



怒るということに対して、我々が抱く印象はなんだろう。

怖い?
うんざり?
うるさい?
恐ろしい?

それとも、
可笑しい?


怒っている人は、怒られている人にとっては、大抵恐ろしい。自分に対しての敵意のようなものを感じるからだ。

そんで、怒られた後は大体うんざりしていて、煩わしく感じる。


では、周りの人から見たら?

たまにコンビニで店員に怒鳴り散らしている人がいる。ああいうのを見ると、「うるさいなあ」とか思ったりする。

で、その怒っている人が顔を真っ赤にして、意味のわからないことを大声で叫んだりすると、ちょっと可笑しく感じる。

マスクの下で、笑っているのがバレないようにしたりする。ニヤニヤって効果音がぴったりだ。


SNSとかどうだろう?

何かに対して怒って意見を書いていた人がいたとする。

私たちはどんな顔をしているだろう。

恐ろしい?うんざり?可笑しい?

SNSでの怒り、大抵の場合、私たちは周りの人。

画面に映っているのは、大抵ニヤニヤした自分。


なんか世界で問題が起こって、誰かが怒って、私たちはニヤニヤする。


誰かが怒ってるのに、ニヤニヤしている。



社会問題とか、ある。

平等とか権利とか色々、ある。

それに誰かが怒ってる。なのに、周りはニヤニヤ。


「え、何が可笑しいの?」

「怒ってる人。なんか顔真っ赤にして、必死になんか言ってるから。」





おかしいのは、ニヤニヤしてる私たちだろ。



不正には怒れ。間違っているなら怒れ。



ニヤニヤは、
せっかくの怒りを「可笑しく」してしまう。



ニヤニヤすんな。私たちの社会だろ。




先生、僕も怒ってます。

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