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読書記録「生態学者の目のツケドコロ」*伊勢武史

子供の頃、家の窓から見える空はいつも四角くて
うちの庭はとても狭くて小さかった。
それでも両親は木を植え、花を咲かせ、
そこに小さな蝶がきたり、カマキリの卵を見つけると何だかワクワクしたのを記憶している。
そんな私が田圃の広がる長閑な所に住んで
初めて本物のアゲハやオニヤンマを見た時
ホントにいるんだ!
とワクワクした。
ほったらかしにすると庭の雑草が小花を咲かせてしまったり、  
季節に合わせてやってくるスズメや鳩以外の鳥に
日常に自然が溢れているのだと実感している。

そんな私なので、
生物や自然に関する本は気になるジャンルだ。
ミロコマチコさんの生命力溢れる表紙絵にもそそられて、手に取った。

この本は生態学者である著者が
自然を前にして、生物側の気持ちになって
あらためて環境のことを考えてみたり、
自然の調和や多様性について思うことを
書いている。
昨今、環境問題について考えることも増えてきて
人間がさも環境に良いようにしていることも
実はそれぞれの生物にとっては
図らずも良いことばかりでなかったり、
長い目でみると自然の調和とは何か?
など、いろいろ考えされられる部分が多く
大変興味深く読んだ。
自然が好き、環境問題に興味がある、
という人にはとても面白く、わかりやすく
何が良くて何が悪いなどと決めつけることなく
これを機に考えてみては?と
様々な現状を提示してくれる。
自然って素晴らしい!だけでなく、
その中に暮らす人間が
楽しんだり、気がついたり、考えたりする
ヒントをくれる素敵な本だと思う。

そして、研究者、学者の方々が
もっと活躍できる場が確立されて  
このような本が
専門分野を知らずにいる人達にも
こんな世界があるんだよ、
という入口になればいいな、としみじみ思った。

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