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初勝利~フォーメーションのあり方~

ようやく勝ち取った今季初勝利。
色々感じた事などあるけど、ここではフォーメーションへの考え方を含めて書き連ねたいと思います。


1.フォーメーションのあり方について

フォーメーションは電話番号と同じという監督もいたりするけど、個人的に自分が思う理想形はあっても、実際採用するフォーメーションは選手や戦術との適性に沿うべきというのが個人的な考え方。
それがあるから4-4-2を如何なる場合にも、ほぼ変えない柳下前監督のあり方って本当に好みではなかった。

例えばオランダ代表にスポットを当てると、オランダ代表は伝統的には4-3-3をベースにしたウイングサッカーが文化だけど、ベスト4以上に選出したチームの中で比較的最近のものを挙げると、1998年のベスト4になったヒディンクのチームと、2014年のファンハールのチームがいい例かなと思う。

1-1.1998年ワールドカップオランダ代表


1998年W杯オランダ代表の基本フォーメーション

1998年大会オランダ代表の基本フォーメーションは上記の感じだったが、この時のベースは4-4-2。これには例えば右のRデブールは右ウイングというより、サイドハーフ型のワーキングウイングで、ウイングらしいウイングがオーフェルマルスしかいなかったのが大きい。
しかもFWにはクライファートとトップ下でも行けるけど、セカンドトップとして無類の力を発揮するベルカンプが居た為、この布陣が理想的だった。
クライファートが予選リーグで退場になる・オーフェルマルスの負傷など、メンバーが変わる場面もあったが、ユーティリティ性の高いコクーを中心にうまく補いやすかったのも大きかった。
この年はウイングこそほとんどいなかったものの、タレントは豊富だった為、4-4-2はうまく行き、4位で大会を終えたもののかなりのグッドチームだった印象は強い。

1-2.2014年ワールドカップオランダ代表


2014年W杯オランダ代表の基本フォーメーション

タレント自体は豊富だったことによる4-3-3の放棄となった98年大会と比べると、2014年は明確にタレント不足だったことが大きく影響した4-3-3の放棄と言える。
この年は攻撃のタレントがVペルシー・ロッペン、そしてスナイデルの3人だけと言ってもほぼ過言ではない状況で、苦肉の策としてファンハールが採用したのは3-4-1-2.
もはや過去の遺物とも言えそうな布陣だが実質5バック状態でカウンターを重視させ、時に本職がFWのカイトを右ウイングバックに入れるなどして、戦術の上乗せを行い。番狂わせを繰り返し、ベスト4に進出した。

2.ツエーゲン金沢:宮崎戦以前の布陣

前置きが長くなったが、元々伊藤監督は4-3-3で今季をスタート。
ところが塚元の負傷離脱など、ウイングに独力突破が向くタイプもほぼおらず、CFにも適材はいない為、ウイング型の適性が整わず、距離感も悪い為チャンスが非常に生まれにくい状況だった。


第2節スタメン

そんな中、後半に3-4-2-1でやった時に好転するため、そこを軸にするかなと思うような、FC大阪戦でスタメンになったのが以下の通り。

第3節スタメン

何故か小島が左SBに入り、後半には右にスライドで3バックへ移行している。結果としてはご存知の通りだがウイングバックの裏を突かれ、オウンゴールが連発するなど、守り方のバランスがこれまでと異なり、大きく破綻してしまった。
どのフォーメーションでも帯に短し、襷に長しといった感じで理想を追いかけるのはいいけど、もう一つうまく行きそうな予感はしなかった。

3.宮崎戦の布陣

いきなり窮地と言える状況にさらされた伊藤監督が次に仕掛けてきた布陣が以下の通り。
昨季までのベースだった4-4-2だった。

これまで左SB起用だった石原を1列上げて、左SBには今季初スタメンの長峰、これまで左ウイング起用だった加藤大樹をシャドー気味にツートップの一角として起用した。

第4節スタメン

大事なのはそこだけでなく、この布陣は守備時には5-4-1気味にブロックを固めて守る形を取っていた。
良かったのは本来可変式のあるべき姿に近いものがそこに見えた事。
細かい課題はありますが、攻守の転換の中で比較的効率的に動けるようになっていたように見える。
結果、守備からのカウンターによって2点を取り、チームとしても快勝。

第4節守備時の陣形

4.効果があった点・保留点・反省点・課題

4-1.効果があった点:基本形

先に言った通り、前後半でのフォーメーションチェンジではなく、展開の中での可変スタイルは守りやすく良かったと思う。
また攻撃時の4-4-2起用も、昨季と異なりポゼッションへの意識の形が変わっているので、フォーメーションだけに捉われず運ぶ形はまずまずよくなっているように思える。
またサイドからのクロスは昨季にもあったものの、展開やフォーメーションの形上、PAに飛び込む選手が同じ4-4-2(後半は3-4-2-1主体ではあったが)でもより多くなったのではないかと思う。
そもそも安定したストライカーが、林が抜けた事によって不在となりツートップの方が効率がいいように思うのは個人的な意見。
もちろんデータサンプルは少ないし、細かく弄った方がいいかなと思う部分はあるものの、これを基本形にすればとは思う。

4-2.保留点:正GK争い

今節は上田が起用。
結果としてはシャットアウトしてるが、相手は最下位の宮崎。
高さやパワーについては上田の方がいいと思うし、実際山ノ井にはセービングそのものはともかくとして、競り合い時のパワー不足は感じてしまう。
足技についても、前節のミスは彼だけの責任だけではないものの、やはり評価を下げる材料にはなってしまったと思う。
上田のキックの精度にも課題はあるが、当面は上田が少し優位か。

4-3.反省点:長峰・マリソンあたりのビルドアップ時の絡め方。

長峰は守備時には5バックの真ん中よりに入るがそこへの適性は高くない。ただそこよりも攻撃時に4-4-2にシフトしていくビルドアップなどの段階でもう1つ運び方に難があるのは技術面というより、貰い方とか含めもう少し詰めてもいいかなと思う。
マリソンについては実質1トップ。今選択肢が少ない中で彼に頼らざるを得ない場面は多い。技術そのものより貰い方の追求でもう少し機能的になるかなと。
また今節で加藤大樹は途中退場。おそらくは肉離れで軽傷かと思うが、富山戦は難しそう。大谷か杉浦を使う事になるかと思うが、この起用法で次節の試合運びに変化が起こるので、良い選択を行って欲しい。

4-4.課題:各所の人材について

小島が右ウイングバックで悪かった訳ではないが守備時の5バックで言えば、サブの陣容含めても本来なら右下がり・左上がりのスライドが理想的だったとは思える。嶋田の配置なども含めれば今の形で悪くは無いけど、比較的左足の使える井上の左SB起用や左SB陣のフィジカル強化など布陣に合わせた人材または肉体的強化は欲しいところ。
またやはり4節時点で無得点のCFについてはそういう試合運びをしている訳ではないにせよ、課題とはなる。
J3の中で予算は大きくないだろうが、うまく布陣調整を行っていって欲しい。

5.今回金沢が選んだフォーメーションに関して。

やはり4-3-3をやる上でCFは重要なポジション。
点を取ることに特化しないまでも、クーマン時代のアヤックスや、メッシがCFに入ったバルセロナのように、特筆した選手が必要となりやすく、今の金沢にはそれに対応できるCFはいない。またウイングに関してもそこを本職にしたタイプは少なく、CF含めたメカニズム組めないと機能させるのは難しいと思う。
そうした中、理想を高く持っていそうな伊藤監督がしっかりと修正を繰り返そうとしているのはいいと思う。
昨季まで7シーズン、それをほぼしない前監督に辟易としていた自分なので、今季少しずつでも形を作って欲しいなとは思います。
もちろんその先にJ2昇格が理想的ですが。

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