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2023年を振り返ります(前編) 月次レポート研究所のポッドキャスト テキスト版

こちらのポッドキャストのテキスト版です



renny:12月は昨年と同様に1年の振り返りをしてみようと思います。収録している今日の日付は12月8日の金曜日ということで、もしかした年末までに全然様子が変わったりするかもしれません。一年を振り返るにあたり、まずは日経平均。去年の年末、12月30日は26,094円で、今日の終値が32,307円。ドル建ての日経平均だと去年の年末は197.77ドルで今日は228.16ドル。ずいぶん動いたなという一年でしたが、吉田さんはどんなふうに感じられましたか?

ドル円相場 - 金利差以外に目を向けるきっかけに

吉田:為替は本当にわかんないですよね。このまま1ドル150円で横ばいかなと思っていたら、急に円高になってきた。

renny:急に日米の金利差が縮小していく、アメリカが利上げを止めてこれからは利下げ?日本は金利が復活?というようなことで、円高ドル安の方に行ってるのかななんて思ったりもしてはいるんですけれども、よくわかんないですよね。

吉田:去年の円安については金利差で語られていましたが、今年の円安はアメリカの利上げが止まって金利差では語れなくなって、いろいろな分析が出てきておもしろかったです。興味深かったのは国際収支統計をちゃんと見ないとダメだねというもの。デジタル関係での日本から海外への資金流出がどんどん増えていって、たとえば日本政府でクラウドをどこにお願いしようと入札をかけたときに、手を挙げるのはGoogle、Amazon、Microsoft。これは日本からアメリカにお金が流れていくことなって、そういうのが年々大きくなってきて、これは少なくなる見通しないよね、みたいな話とか。

renny:一昔前には富士通とかNECとかが出てきた分野が、いまや全部アメリカの会社だっていうような感じなんですよね。部品とかまでさかのぼると、日本の会社も付加価値を作ってるんですけど、最終的にはアメリカの作った付加価値にお金の対価を支払ってる方が大きいっていう構造になってるっていうことですよね。

吉田:そうですね。個人でもAmazonプライムとか、iPhoneでiCloudの契約をしていたり、いろいろありますから。

renny:個人の支出でどれぐらいそのアメリカの会社に払ってるのかを考えると結構な金額になっちゃうんでしょうね。だって実際、今僕この録音してるのもiPhoneとiPadを使ってやってたりしますし、完全にひれ伏しちゃってる感じがします。吉田さんは今年の投資環境を振り返ったときに、どのようなニュースやテーマが印象に残ってらっしゃいますか。

2023年の投資機会 - 金融不安、PBR1倍割れ、米ドル定期預金

吉田:今年、結局、投資のチャンスは1回だけだったかなと思ってて、アメリカでシリコンバレーバンクが倒産して、もしかしたら金融危機になっちゃうんじゃないの?ってみんながビビったときだけ、株価が全体的に割安になってたかな。

renny:他には経済周りだと…

吉田:日銀総裁が変わったのも今年ですね。

renny:そうですねそれは確かに大きかったのかもしれないですね。このほかに投資機会っていう意味で気になる企業とかはありましたか?

吉田:今年一番の話題はChatGPTですかね。Microsoftをどのタイミングで拾うか悩んでました。

renny:最近大型のMBOが増えてるじゃないですか。あれはPBR1倍割れとかも影響してると思うんですけれども、なんか年末にかけて増えてきたなという印象があるんですよ。この流れって今後も続きそうな感じはしていて、吉田さんの投資されてる会社でそういうのにヒットしたことはありますか?

吉田:なかったですね。

renny:吉田さんの投資されてる会社で、PBRが1倍割れてる会社は基本的になさそうな感じがするんですけど。

吉田:PBR1倍割れの会社は今年初めて買いました。3月末に東京証券取引所から資料が出たのでちょっと買ってみようかなって思って。経産省が発表している「グローバルニッチトップ」の会社でPBRが低いところを買ってみましたが、その後株価はたいして変わらなかったです。

renny:そうなんですね。今年の投資行動というようなことでいくと、さっき投資のチャンスって1回ぐらいしかなかったっていうことだったんですが、今年は特段大きなものなかったって感じですか。

吉田:大きなのはなかったですね。外貨の定期預金は積極的にやりましたが。

renny:米ドルの金利が上がってきたからですか?

吉田:はい。金利が上がっていく段階のときは3ヶ月とか半年の定期預金にしてたんですけど、そろそろ1年とか期間をだんだん長めに変えていこうと考えています。年間5%ちかい利息がつくんで、もらっておかないと損みたいな感じですよね。

renny:投資のチャンスが来たときには、そこから投資することを想定されている?

吉田:そうですね。株価の暴落が来たときのための待機資金ですね。

月次レポート - ファンド・オブ・ファンズの問題点

renny:アメリカの株価もたぶん2割近く上がってるんで、確かにそろそろチャンスがあるかもしれないですね。よく考えたらいきなりその投資環境の話に入っちゃって、月次レポート研究所の月次レポートの話を全然してませんでしたね。ちょっとその振り返りをやってみたいなと思うんですが、残念ながら僕が調べてる範囲で見るべき月次レポートが新しく出てきたっていうのは、特段ないというのが正直なとこですが、吉田さんも同様のご認識でしょうか?

吉田:特別見聞きしたことはないですね。

renny:12月に入ってアドベントカレンダーっていう日替わりで記事を足していくのをやってるんですが、それに並行してそういう発信とかはできないけれども、月次レポートを気にかけてる方にアンケートを募ったところ、日興アセットさんの全世界の30社ぐらいの株式に厳選投資している「グローバル株式トップフォーカス」ってファンドで、クオータリーぐらいで出てるレポートがあることを教えていただいたんです。どんな会社に投資してるのかなって2023年3月の運用報告書を見たらシリコンバレーバンクが出てきて、ただファンド・オブ・ファンズで2021年12月末時点の話だったんです。一瞬こんなん入ってるの?!みたいな驚きを受けたんですよね。だからファンド・オブ・ファンズの形式だと、ものすごい古い情報が報告書に出てくるので、コスト以外にもこんなところにもファンド・オブ・ファンズには問題があるんだなと思いましたね。

renny:また先日、ベイリーギフォードさんのイベントがあって僕は現地に行ってきたんですよね。

吉田:私はオンラインで見ました。

renny:ベイリーギフォードで働かれてる日本人の方が、わざわざスコットランドから東京に出張されてきてて、お話をしてくださるという機会であるにも関わらず、3分の1ぐらい新NISAの話に時間を費やされたのにはちょっとがっかりというか…

吉田:NISAのアンケート結果みたいな話をしてましたね。

renny:もったいない時間の使い方をする人たちだなと思って。余計なことっていうと失礼に当たるのかもしんないですけれども、ベイリーギフォードからお越しになった方は日本にお住まいじゃないから、NISA制度の基になったイギリスISA制度をはじめるし。

吉田:でも気になったのはイギリス版NISAみたいなやつが限度額なさそうな感じで。

renny:あれどういう意味なんだろうっていう。

吉田:毎年2万ポンド(約360万円)ぐらいで、上限なしでいくらでも投資していいのかな?

renny:ISA以外の口座ってどんなのなんだろう?思いましたよね。僕が印象的だったのはQ&Aで投資の失敗事例を教えてくださいって質問に対して、株価が下がって失敗した話がされるのかなと思ったら、調査してたけれども、投資のタイミングを逃した機会損失のことを失敗だっておっしゃってたのは結構印象的でした。今年の3月ぐらいにインタビューさせていただいた個人投資家のろくすけさんも同じようなことおっしゃってて、調査をしててこの会社いいなと思ってたら、株価がグーンと上がっちゃって、買いそびれたみたいな。吉田さんもあったりしますか?

吉田:ありがちですよね。悔しいからその企業の株価を二度と見ない!みたいなことは結構ありますよ。

バリュー株とグロース株。バリューすぎてMBO?

renny:その他投資にまつわる今年のできごとというと、配当利回りいいバリュー株が買われて、もちろん金利動向もあっていわゆるグロース株がちょっとしんどくなっていくのかな、というふうな感じもしてるんですけれども、吉田さんはどういうふうにご覧になってますか。

吉田:私はバリュー株とグロース株の違いがよくわかんないんですよ。

renny:それは確かに。バリューってたとえばPBRやPERが低いから割安っていうのは、何をもって割安とするのか、業種・業界によって全然違うはずで、一律に何かが何倍だから割安っていうのもヘンテコな話だなと常々思ってはいるんですけど。

吉田:バリューでグロースだと思うから投資するわけで。なんで分けて話しているのかなと。

renny:そうですよね。株価がお値打ちだからバリューだけどグロースが感じられないとすると、そもそも利益成長が今よりも来年より増やせないような会社にそもそも投資するんですかっていうのは、素朴な疑問としてありますよね。

吉田:1ヶ月ぐらいの短期で売買しようと思えばありかもしれないですが、バタバタするのが面倒くさいからやりたくないんですよね。

renny:もう一つはPBRの話の流れでいくと、結局自己資本、株主資本が分厚すぎるからPBRが低くなっちゃってるんだから、それが吐き出されることを期待するような投資は、なんかちょっと言葉が悪いすけど盗人みたいで、それって投資家なんですか?と不思議に思ったりします。

吉田:まあそういう会社は上場企業としての役目を終えたっていう段階なんだろうなと思います。

renny:だからそういう意味で今のMBO、非上場化みたいな話なのかな。でもいったん非上場化した会社ってまた戻ってきそうな感じがするというか、創業家が主体の非上場化なら、そのままなのかもしれないけど、でもMBOを手伝った投資家の資金が入っていると何かしらの機会を捉えて再上場するんじゃないかと思うと、今まで何のために上場してたんですか?と感じますよね。

吉田:それでも非上場化は増えた方がいいんじゃないかな。なんで上場してるのかよくわかんない会社いっぱいになっちゃって、東京証券取引所も市場区分の変更で悪い流れを変えようとしても、どうにもならなかったし、企業が退場していく以外に整理できないんじゃないかなって思います。

renny:この先どういうふうになっていくのかわかんないですけれども、今年は日本の株価もかなり上がったんですけど、来年はどれぐらい明るい見通しなのかどうかというと、ちょっとどうなんだろうなというふうな感じは個人的にはするんですけど。

吉田:これだけ円安が進んだのに外国企業が日本企業を買収しに来なかったのが、ちょっと気になるかな。

renny:地政学的に日本に投資するとか、台湾セミコンダクターが工場を作るような話は出てきてはいるんでしょうけども、海外の企業が日本のそれなりの名の通った会社にTOBするとかそういうような話っていうのはなかったですよね。

吉田:なかったですね。Microsoftがゲーム会社のアクティビジョン・ブリザードを買収するために使った金額は、任天堂の時価総額よりでかいんですよ。それを考えると本当に日本に有望な企業があるなら、円安で割安になったところをガンガン買われてもいいぐらいの状況だったはずなのに、動きがないのはなんか悲しいような気もするんですよ。

renny:今年、株価が上昇した会社は技術があるというよりはバリューみたいなところが多かったんで、むしろ技術持ってる会社は買い時だったのかもしれないですね。あっという間に30分になろうとしてるんですが、来年に向けてこういうとこに注目してるとかってありますか?

吉田:アメリカは本当に利下げするのかな。

renny:そういうのでちょっと様子がまた変わってくるかもしれないですよね。僕は今までNISAで買ってきたファンドが、新NISAに変わることでロールオーバーできないから、解約しちゃおうかなと思ってるんです。新NISAは投資信託ベースで考えてはいるんですけど、個別の会社も少し買おうかなとちょっぴり考えてたりしていて、いざとなったら全然違うことやってるかもしれないし、ちょっとゆっくり考えたいなと思ってます。

後編に続く


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