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海外旅行で、百面相になって、百人格演じて、自分が分からなくなって、でもどんな自分もおもろいからまあいっか、ってなるのがいい。【「犬とペンギンと私」を読んで】

海外旅行に行きたい。(切実)
海外旅行の何が楽しいって、
「うえー、こんなやり方もあるんだ(歓喜)」
「ほえー、こんな考え方でもいいんだ(歓喜)」
「およー、こんなことしてもいいんだ(歓喜)」
っていう、自分の狭まりきった視野を広めてくれる素晴らしい発見が出来るってことなんですよね。

小川糸さんの「犬とペンギンと私」を読みました。


ペンギン?と思われるかもしれませんが、旦那さんのあだ名だそうで…
ラブラブじゃねえかあああああ羨ましいなおい!!!!!!
すみません、取り乱しました。
本書はエッセイになっていて、平成29年初版発行でコロナ前なので、海外旅行に行った時のエピソードが沢山出てくるんです。
(羨ましい…何もかも羨ましい…)
その中で、面白い記述がありました。

それは、小川さんがパリに行った時のこと。

帰り道、メトロに乗っていたら、日本語で「スリに気をつけましょう」というアナウンスが流れた。
(中略)
それが、パリの現実なのだろう。
パリのメトロにひとりで乗る時は、私もうんと意地悪そうな表情を浮かべ、人相を悪くしている。
そうしないと、すぐに狙われそうなので。

「犬とペンギンと私」(小川糸 著)

パリって治安悪くてビックリしますよね、私も10年くらい前に行ってカルチャーショックを受けました。
この記述で面白かったのが、郷に入っては郷に従うではないですが、その国に行くとその国仕様の自分になってしまうというところ。
小川さんはいつもは違うのに、パリにいる時は怖い顔をして歩いている。
側から見れば、すごく気難しい人、と思われるかもしれませんが、本当は防犯のためですよね。
でもそんな顔をしていると、本当に少し気難しくなったり、ぶっきらぼうな人になった気分になりませんか?
以前何かのインタビューか何かで、
中国人の女性が日本語を話す時はいつもより少し真面目な人になった気分になって、
中国語を話す時は大胆で強気になった気分になる、と話していました。
私の体験だと、東南アジアに行くといつもより少し優しい自分になる気がします。
それは、皆が優しく笑顔で接してくれて、自分もその空気感に合わせようとするから。
自分を取り巻く環境で、いい意味で人ってコロコロ変われるんだなあと思います。
(え?私だけだったりする?)

また、小川さんが大好きだというベルリンでのこと。
小学生の男の子が、お世辞にも上手とは言えないヴァイオリンの演奏をして、いっちょまえにお金を集めていたり、
オシャレなマダムが突然、あなたの帽子どこで買ったの?と声をかけてきたり(その後お互いの帽子の褒め合いっこをする)、
夜、近所でシニアカップルがタンゴを踊っていたり、
カフェではふつうにお母さんが授乳していたり。
小川さんはこんなベルリンのことを下記のように書いています。

がむしゃらに昼も夜も働いているような感じの人は見かけないし、晴れると、平日の昼間でも公園には人があふれるし、一見、遅れているようには見えるのだけど、実は「村」と表現されるベルリンが、もっと進歩的で最先端のライフスタイルを選んでいるようにも思えてくる。

「犬とペンギンと私」(小川糸 著)

海外旅行に行くと顕著に感じるのですが、
日本では「幸せに生きる」ことより「正しく生きる」ことの方に重きを置かないといけないんじゃないかっていう気分になってきます。
そんな状況から脱して他の生活圏に足を踏み入れると、
まさに、最初に書いた、
「うえー、こんなやり方もあるんだ(歓喜)」
「ほえー、こんな考え方でもいいんだ(歓喜)」
「およー、こんなことしてもいいんだ(歓喜)」
現象に出会えるもんだなって思います。
そうして自分もその国の雰囲気ややり方に染まっていけば、新しい自分に出会えるはずです。
あれ、私ってこんなにいい人だったっけ、とか、
あれ、私ってこんなにがさつだったっけ、とか。

新しい環境に身を置くことで自分がそれに染まっていくこと、
自分がその雰囲気の中で新たな自分を見つけることは、面白い娯楽だと思います。
海外旅行に行かずとも、自分の環境を変えれば、叶うものです。
(自分の環境を変えることの方が難しいけど)
自分はありのままでいなくちゃ、とか、自分を変えちゃダメだ、と
貫く姿勢もかっこいいのですが、私は一生百面相で百人格でもいいかも、って思います。
時代も変われば、自分の体も変わる、性格も変わる、そんな中で、
「え、染まりたい!」
って思える環境を見つけられたら、それは宝物を見つけたも同然のような気がします。
これからも、まだ何も知らない女子大生(すみません、私は大学生の頃、いとこの意味を知らなかったくらい何も物事を知らなかったもんで…)の如く、未知な世界、未知の文化、生活環境にいちいち驚いて、染まって、コロコロ変わっていきたいなあと思うのです。

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