マガジン

  • グッドミュージック・ステーション

    グッドなミュージックと一人の音楽好きの対話を垂れ流すステーションです。

  • 没入

    プレイヤーが観客化したことで、ゲームは新たな手法でプレイヤーとして「私」がプレイすることに意味を見出させる必要があった。そのためにプレイヤーのゲームへの没入が必要になったのではないか。ゲームプレイヤーの環境と社会を結びつけて考察するマガジン。

最近の記事

"春"という季節 [グッドミュージック・ステーション #27]

 春、春、春。あちらこちらに春が散らばっている。カラカラとコンクリートで冬を越えた枯れ葉が転がる。「防犯パトロール実施中!」、「痴漢に注意!」がなびく。春、春、春。私が全てを春にしている。 別れの春、出会いの春、桜というのは不思議なもので、この相反する二つの出来事、それに連なる感情の象徴として存在している。  しかし、よくよく考えてみれば、桜を別れの象徴として捉えるのも、出会いの象徴として捉えるのも、結局はヒト、その個人である。ヒトは何か特徴的な出来事があった時、自分の身

    • 私は私の全体を知ることは出来ない [グッドミュージック・ステーション #26]

      プロフィール帳がほしい  プロフィール帳が欲しいと、ふと思った。小学生の頃使っていた筆箱から、誰かからもらったであろう空白のプロフィール帳の1ページを見つけたからだ。書いてみるかと思い、ペンを執る。  「わたしの名前は____で、みんなからは____って呼ばれてるヨ!」、「チャームポイントは____で、よく____に似てるって言われるヨ!」、「性格は____で、ちょっぴり____なところがあるカモ…!特技は____で、趣味は____、座右の銘は____だヨ☆」  いや、ムズ

      • 泣けやしないから余計に救いがない [グッドミュージック・ステーション #25]

        鈍痛、鈍痛、鈍痛。本厄も後厄も終えた2023年開始早々、小指をドアの角にぶつけるというベタな負傷をした。数秒うずくまり、イラだちながらnoteを開く。年末年始、久しぶりに友人と会い、noteの更新を楽しみにしてくれている人が意外といるということを知った。期待に応えたい一心で書ききれず溜まっている下書きの中から何かを完成させるために、その記事で紹介している音楽を聴き、集中する。 鈍痛、鈍痛、鈍痛。全くもって集中できない。いっそのこと出血でもしてくれれば、変な方向に小指が曲がって

        • いまここで君をぶん殴ったら、どうなるのかな [グッドミュージック・ステーション #24]

          BBHFとGalileo Galilei BBHFといえば、Galileo Galileiの活動終了後に、同じメンバーで新しく組んだバンドだ。Galileo Galileiの楽曲については、このマガジンでも#14と#22で取り上げた。  僕の解釈ではGalileo Galileiは、美しい単音リフやアルペジオ、暗い感情の中に美しさを見出すというストーリー性を持つ楽曲が多い。孤独や喪失などが楽曲の展開によって解決していくのではなく、その感情の中に美しさを見出すという自己解決

        "春"という季節 [グッドミュージック・ステーション #27]

        • 私は私の全体を知ることは出来ない [グッドミュージック・ステーション #26]

        • 泣けやしないから余計に救いがない [グッドミュージック・ステーション #25]

        • いまここで君をぶん殴ったら、どうなるのかな [グッドミュージック・ステーション #24]

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          28本
        • 没入
          4本

        記事

          ゲームの表現媒体と表現方法 〜旧2Dゲーム編〜 [没入 #4]

           さて、前回の記事では、読書における没入とゲームにおける没入の要素を比べ、その違いについて述べてきた。おおよその違いは見えてきたものの、ゲームという言葉で2D、3Dゲームを括っていたため、いまひとつ全体像のはっきりしないままになってしまっている。  今回の記事では、ゲームにおける没入をモデル化しようとしたが、それに辿り着くには、まず2D、3Dゲームの違いを見ながら、その内容を整理しておかなければならないだろう。 当マガジンにおける2Dゲームの区分  2Dゲームや3Dゲーム

          ゲームの表現媒体と表現方法 〜旧2Dゲーム編〜 [没入 #4]

          あったかい雨 [グッドミュージック・ステーション #23]

          雨、雨、いつも雨。熱がある時に健康だった頃の身体を思い出せないように、雨が降ると世界の全部が変わってしまって、晴れの日はどんな姿をしていたか、どうにも思い出せない。そのもどかしさ紛れに傘を畳んで歩いてみると、ちゃんと寒い。  雨が嫌い。雨が降ると傘をささないといけないから。靴の中のぬかるみも、傘から少しはみ出て濡れるリュックも、傘と傘がぶつかって会釈をするも相手は当たり前のように歩き去って行くのも嫌い。冬生まれの人は寒さに強いなんていうけど、梅雨生まれの僕は、ちゃんと梅雨が嫌

          あったかい雨 [グッドミュージック・ステーション #23]

          I love you (and you?) [グッドミュージック・ステーション #22]

          "I love you."「(私はあなたを)愛しています。」 これを読む皆さんは、言語界最強とも言えるこの言葉を発したことはあるだろうか。私はない。記憶にある限りでは。いや、絶対にない。  想像したことはある。"I love you."という自分を。その時は、恥ずかしさと自己嫌悪で最悪の気分になった。それと同時に、なぜか小学生の頃に受けていた国際理解の授業を思い出した。  英語ネイティブの現地の人が先生となり英語の授業をする国際理解は、決まってこの問いから始まる。"How a

          I love you (and you?) [グッドミュージック・ステーション #22]

          ゲームにおける没入 [没入 #3]

           前回の話で難解な概念の解説が続き、「パルスのファルシのルシがコクーンでパージ(こちらFF13のネタになります)」を初めて聞いた時のような感覚に陥ってしまっているかもしれない。一応、前回も引用した小山内秀和(2014)の物語読解モデルの概念図を示しながらおさらいをすることから始める。 (再) 読書における没入とは何か  読書における物語世界への没入は、文章から情景描写や心情描写を時間や空間、登場人物像として読み取り、その情報をもとに空間や時間をイメージ化、登場人物への同一

          ゲームにおける没入 [没入 #3]

          読書における没入 [没入 #2]

           勢いというのは怖いものである。「よし、行くぞ」と意気込んで始めた「没入」というこのマガジン、前回は「プレイヤーの観客化」について考えていたことを放出しまくり「ふむふむ」なんて満足そうに記事を読み返しちゃったりしていた。この素朴かつ当然の質問を聞くまでは…。 「ところで、没入ってなんですか。」  確かに。もちろん、第1回を書くまえに色々と考えて、「没入」がキーワードになりそうだと思ったから、このマガジンに「没入」というタイトルを付けたわけだが、前回の後半に自分で「没入感が

          読書における没入 [没入 #2]

          観客化するプレイヤー [没入 #1]

           「没入」というゲームに関する新しいマガジンを始めるにあたって、簡単な自己紹介という名の自分語りから始めていきたいと思います。  私は小学校4年生の時に「メイプルストーリー」というMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)を初めてプレイし、リアルタイムで人間と会話できることに「まるで修学旅行の夜が永遠に続くようだ」と衝撃を受けてゲームの世界に没頭するようになりました。  小学校6年生になると、「CSO(Counter-Strike Online)」というFPS(

          観客化するプレイヤー [没入 #1]

          音楽とグッドミュージック・ステーションについて考える [閑話 #1]

           こんばんは。コロナ禍によってひとりでいる時間が増え、何か始めないとという衝動に駆られ昨年の5月から始めたこのnoteも、気付けば1年半経ちました。  グッドミュージック・ステーション(以下、GMS)は、#0も合わせれば22回記事を書きまして、中には1000を超えるプレビューがついた記事もあります。ありがたい限りです。  しかし、#16の記事を境に、それまで1ヶ月3記事くらいをキープしていたのが、約3ヶ月おきに更新するようになり、もちろん読んでくれる方も減りまして、さらに

          音楽とグッドミュージック・ステーションについて考える [閑話 #1]

          わかんないけどわかるよ [グッドミュージック・ステーション#21]

          たとえばきみが隣のレイディのお皿にぶつかって こぼれた紅茶に優雅なその人は悲鳴をあげる きみはfreeze! "ごめんなさい"がいまいちスマートじゃなくて許してもらえない猫...みたいなきみは ぼくの自慢のひと  「”ごめんなさい”をスマートに言えますか」こう問われたら、僕は少し考えてから「多分、、、はい。」と答えると思う。自信はないけど、多分言える。言えてしまう。  これは、集団行動を徹底的に叩き込まれた様々な競争的側面を持つ学校という場で生き残るために培われたものか

          わかんないけどわかるよ [グッドミュージック・ステーション#21]

          Like sixteen candles [グッドミュージック・ステーション #20]

           "Like sixteen candles"、16本のロウソクのように。僕の16歳はどうだっただろうか。16歳といえば、高校1年生の誕生日を迎えた歳になる。  高校に入学し、音楽の話をたくさんしたいからという理由で軽音楽部に入った。テスト期間の午前授業を使って、部活の友達と学校から鎌倉の海まで3時間ほど歩いて行った。なんでもなんとかなる気がしてた。終電近くまでくだらない話をして帰る。なんでもできる気がしてた。  しかし、軽音楽部の中で組んだバンドで、地下のライブハウスに

          Like sixteen candles [グッドミュージック・ステーション #20]

          変わらないでいたいし、でも変わっていきたいし [グッドミュージック・ステーション #19]

           お久しぶりです。早いもので、歩きandチャリから4ヶ月近く時間が経ってしまいました。ともあれ、グッドミュージック・ステーションのお時間です。  先々月、晩年おばあちゃん家で飼っていた我が家の犬が死んで1年が経ちました。おばあちゃんにその話をしたら、「そうだねぇ、名前は覚えてても顔が思い出せないのよ」というので、がくーんと来てしまいました。  その日の帰り道に、そんな曲があったよなと脳内プレイリストから引っ張り出した曲があまりにも良かったので久しぶりに書こうと思った次第で

          変わらないでいたいし、でも変わっていきたいし [グッドミュージック・ステーション #19]

          歩きandチャリ [グッドミュージック・ステーション #18]

           新年明けましておめでとうございます。一生更新されないこのグッドミュージック・ステーションを心待ちにしてくださっている方々、ありがとうございます。これからも感情の向こうに行ってしまった言葉たちを、なんとか手繰り寄せて言語化しようとする悪あがきをお楽しみくださいませ。今年は週1くらいまで投稿頻度を上げていきたいと思いますので、末永く、生暖かくよろしくお願いします。  さて、歳を取るにつれて、年末年始のお祭り感が薄れていって、言うほど「明けましておめでてぇか?」「また誕生日来ち

          歩きandチャリ [グッドミュージック・ステーション #18]

          海抜0メートル [グッドミュージック・ステーション #17]

           おはようございます。間延びした夏も感じさせないほどに、あっという間に夏が通り過ぎてしまい、秋を予感させるような匂いを風から感じるようになってしまいました。  なんだか、学校のたよりの季節の挨拶のような文言から始まる今回のグッドミュージック・ステーション。思ったような天気や気候が訪れず、下書きが渋滞したまま、2ヶ月ほどの月日が経ってしまいました。  今回は、夏真っ只中に聴くというよりは、薄手の長袖を羽織るか羽織らないか悩むような、まだ夏が終わってほしくないと願いたくなるよ

          海抜0メートル [グッドミュージック・ステーション #17]