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アウトサイダー

"アウトサイダーは、何よりまず社会問題である。かれの役割は『人目につかぬ片隅の壁穴』にほかならぬ。"1956年発刊の本書は博覧強記な著者26歳のデビュー作にして、社会に適応せず、秩序の内側に留まることを拒絶する名だたる文化人達を自由闊達に論じた実存主義思想シリーズ第一弾。

個人的には『二十歳の原点』の高野悦子が作中で本書に触れていたことから気になって手にとりました。

さて、そんな本書は1970年代のオカルトブームの発端の一人であり、SFや殺人研究や哲学・心理学と幅広く執筆、論評を行ったことでも知られる著者が、若かりし"昼間は大英博物館で執筆、夜は野宿という生活"といった貧しさの中で独学で書き上げたデビュー作で、バルビュス、サルトル、カミュ、ヘミングウェイ、ジョイス、トーマス・マン、ヘッセ、ゴッホ、ニジンスキー、ニーチェ、ドストエフスキー、といった様々な文化人、表現者たちをインサイダー(社会人)との対立概念として『アウトサイダー』という補助線を引いて各章毎に【ばっさりと一刀両断していく】ブックガイド的な一冊なのですが。

それなりに年を重ねた中年である私にとっては、当時の英国に社会秩序に反抗的な『怒れる若者たち』が数多く出現した時代、世界的にも若者たちに実存主義(や東洋思想)が流行し学生運動が盛んだった【時代の荒々しい勢い】が本書に溢れていて"これが若さか"(byクワトロ大尉)とまず圧倒されてしまった。

一方で、良くも悪くもアカデミックな教育を受けて社会的、体制的な『枠にはまってない』まさに著者自身がアウトサイダーとして、外側から【独学かつ豊富な知識や作家や作品の適切な引用で圧倒していく】書き方は(少し読みづらいですが)英国はもちろん世界、日本のインテリ気取りの若者たちにヒーロー的に映り、やはり強く支持されたのだろうなと思いました。

1950年代〜60年代の空気感を感じたい方へ、また独特で魅力的なブックガイドとしてもオススメ。

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