見出し画像

三体III 死神永生(上)

"智子は香りよく点てた茶の碗を両手で持ち(中略)今度は程心の前に碗を置いた。『宇宙は大きい。でも、生命はもっと大きい。縁があれば、この先きっとまた会えるでしょう』2021年見事に翻訳された本書は『地球往事』シリーズ三部作の最終作(上巻)となる中国発、世界大人気のハイブリッドエンタメSF。

さて、そんな本書(死神永生)は前作の第二部『黒暗森林』に直接続く流れになっていて、今度は若き美人航空宇宙エンジニアの程心(チェン・シン)を新たな主人公にして、前作の三体世界の侵略艦隊に対抗する『面壁計画』の裏で極秘に同時進行していた【侵略艦隊の懐に人類のスパイをおくる】『階梯計画』の過去描写から始まり、前作の主人公、羅輯によって最終的にもたらされた三体世界との【休戦から続く時間軸】を描いているのですが。

まず感想を一言で言うと【最高に面白かった】それぞれ発売直後に三体、三体IIと読んできて、そして迎えた待望三体III!でも、まだ上巻を読み終えたばかりですが。少なくともエンタメ作としては【シリーズでも極上の作品】に仕上がっていると感じました。

その理由としての一つは、すでに読後の記憶が朧げですが。どちらかと言えば【海外古典SF、あるいはハードSF】の影響を感じた一作目『三体』そして、急展開かつ地球の技術が発達し【銀河英雄伝説】や随所に日本カルチャーの影響を感じた『三体II』を経て。

本作はそれらの要素が更に【サービス精神豊かにパワーアップ】しつつ(今度はイデオンや宇宙戦艦ヤマト要素も?)さらには安楽死問題や全体主義の台頭といった世界的タイムリーな要素も貪欲に取り込みながらも、ストーリー展開は洗練されていて、予想を裏切り続けるシンプルにジェットコースター的な【血湧き肉躍る展開】に、それを盛り上げる魅力的なキャラ、さらには【宇宙スケール、時間を超えた大恋愛!】これで盛り上がらないわけがない!

また、もう一つの理由として。これは主に日本人読者だけかもしれませんが。【現在の世界情勢をリアルに反映して】まったく物語全体としては影も形もない寂しい日本ですが(都市名として、わずかに東京だけ一度。。)代わりに、その不満を全て代弁するかのように(あるいは著者の理想を具現化?)登場する智子(ともこ)【三体世界の智子に制御される美少女和風ロボット】が、お茶に着物、忍者に日本刀とこれでもか!と日本的要素をアピールしてくれていて【ともこー!日本を代表してくれてありがとう!】と読み進めながら。熱くエールを送りたくなるからだ。(冷静にはやや唐突すぎる気もしつつ『それはそれ!』エンタメ作品なんですから!)

うわー!下巻はもちろんだけど。Netflixで世界的傑作『ゲームオブスローンズ』そして宇宙を飛ぶレイアとか攻めた内容で賛否の『最後のジェダイ』さらにプラピと原作者が関わるらしいドラマが楽しみすぎる!(智子はぜひ日本人女優が演じてほしい!)

全てのSFファンはもちろん、70年代から80年代の日本アニメ、漫画ファンの方にも猛プッシュにオススメ。

この記事が参加している募集

雨の日をたのしく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?