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ワールド イズ ダンシング(1)

"この時の能きを 今を表す表情を 肉と骨のきしみを 覚えておこう 私には身体がある 私には芸とそれを司る家がある 世界が狭いのならば広げてやる"2021年発刊の本書は能楽を大成、『風姿花伝』でも知られる世阿弥の若き日を『はじめアルゴリズム』の作者が描く室町ダンスレボリューション。

個人的には京都を舞台にした作品、そして日本の伝統芸能に関心があることから手にとりました。

さて、そんな本書は室町時代、父親の猿楽『観世座』の目玉演目『自然居士』の舞台に"人買いにさらわれる少女"として立ちつつも"舞など見ていったい何が楽しいのだろう?"と思い悩む若き日の鬼夜叉こと世阿弥が、挫折して身体を売って日々の糧を得ている白拍子の姿から『舞の良さを探ろうとしていく』様子が描かれているのですが。

まず、作者の本は初めて読みましたが。そして最近の漫画の多くに共通する話かも知れませんが【絵がとても巧みな印象】で。舞"がテーマになる以上、身体の動きや表情に説得力が求められると思うのですが、その点で本書は安心して楽しめ、室町時代の日本に没入、タイムスリップさせてくれる心地よさがありました。

また、別の美術史本で観阿弥、世阿弥親子といった『能』の成立話をかじっていましたが、やはり当時の社会情勢を含めて描いてくれると理解が進みやすく。例えば、室町時代当時は鶏は食用ではなく【鶴が『鶴は千年』と宴席で食べられていた】事に新鮮さを感じたり、また巻末コラムで観阿弥,世阿弥親子を『同朋衆(どうぼうしゅう)』との説明は【現在の研究では否定されている】に知らなかった!と驚いたりと学びも多かったです。

能や日本の伝統文化、また広くダンス好きな方や歴史好きな方にオススメ。

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