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ワールド イズ ダンシング(3)

"音を観たまえ 対象の能きの音を それを観る自分の身体に反射する音を やがて…その風姿が君の身体に響き出す"2022年発刊の本書は世阿弥の瑞々しい少年期を歴史学者監修のもとに魅力的に描く室町ダンシングストーリー第3弾!

個人的に、前2作が日本美術史、伝統芸能好きとして非常に面白かったので。引き続き手にとりました。

さて、そんな本書は前巻に引き続き、田楽新座のエース増次郎と猿楽の威信をかけて舞競べをすることになった世阿弥こと鬼夜叉が、演目となった獅子舞のヒントを得ようと、獅子の代わりに野生猫と対峙、後に物まね主体の大和猿楽の世阿弥と人気を二分する風流歌舞の近江猿楽の名手『犬王』の助言を聞いて【自分オリジナルの獅子舞】を舞おうとするのですが。

まず。どんなジャンルでも言えますが。やはり『ライバルとの対決』といったシンプルかつ王道的展開は【わかりやすく盛り上がる】し、またライバル役の増次郎も冷酷そうに見えても卑怯ではなく【舞に関してはあくまで真摯】なことから結局は鬼夜叉の完敗に終わる第一戦ですが、納得できる決着でした。(さて第二戦はどうなりますやら?)

また本作の魅力の一つとして、あくまで全体的には現代人感覚でも気軽に楽しめる少年成長物語として描きつつも、随所に【当時の風俗が丁寧に紹介されていたり】また、巻末コラムで世阿弥や能楽について補足してくれている部分があると思うのですが。本巻では"かわぐちかいじ"の息子にして、能監修をつとめる川口晃平の【能面との出会い話】がとても良かったです。

能や日本の伝統文化、また広くダンス好きな方や歴史好きな方にオススメ。

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