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好き好き大好き超愛してる

"愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい"2004年発刊の本書は、著者の初芥川賞候補作にして恋人の喪失を題材にして描いたメタ恋愛小説。

個人的には、著者の小説は初めて読んだのですが。インパクトとのある表題、イラストとは違って【優しい言葉が印象的な冒頭の文章】から始まる本書は、作中では明言されていないものの、恋人を看病する主人公の小説家が書いたSFやダークファンタジーといった創作 (小説のなかの小説)が「柿緒Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」の【エピソードに挟まれるメタ構成】になっていて。流れていくような独特のテキストと共に不思議な読後感を与えてくれました。

また本書を『世界の中心で、愛を叫ぶ』のアンチテーゼとして比較する意見もあるみたいですが。私自身はむしろ、作中で亡くなった恋人の弟たちに"自分たちをモデルにした話を書くな"と主人公が迫られる後半には、同じく著者自身の恋人の闘病生活を美しい日本語で描いた堀辰雄の『風立ちぬ』。あるいは印象派のモネが亡くなった恋人、カミーユの死出の姿を病床で描いたエピソードなどが思い浮かび【表現者の性分で仕方ないよね。。】と主人公に同情してしまいました。

「恋愛」と「小説」をめぐる独特な文章、構成の恋愛小説を探す誰か、あるいは表題のようにはまり込むように誰かに熱烈な恋をしている人にもオススメ。

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