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アンズ(八助梅)

【アンズ】杏、杏子
学名:Prunus armeniaca
英名:Apricot
バラ科サクラ属 落葉小高木
原産国:アジア東部、中国の山岳地帯より北(諸説あり)
別名(古名):カラモモ
主な生産地:青森県、長野県、 香川県、栃木県(2018年)

<基本情報>

原産地といわれる中国ではかなり古くから薬として利用されてきた(紀元前3000年~2000年ともいわれる)。ヨーロッパへはアルメニア共和国経由で伝わった説があり原産地と考えられた経緯により学名の由来になっている。

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同じバラ科サクラ属のスモモ(Prunus salicina)、ウメ(Prunus mume)、アーモンド(Amygdalus dulcis)などと交雑しやすく偶発実生した品種が多い。果肉から種が離れやすい方がアンズとされている。

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▲アンズ 
▼アーモンド

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日本への伝来はわかっていないが、縄文時代の遺跡(秋田県・手取清水遺跡)からアンズ の核が出土している。( 国立歴史民俗博物館・日本の遺跡出土大型植物遺体データベース)https://qr.paps.jp/mcVR2

本草書『本草和名』(918)には「カラモモ」の名で登場している。種子の核を「杏仁(きょうにん)」といい、生薬として今も利用されている。果実を食用として広まったのは江戸時代から。

※「カラモモ」は「ハナモモ」の園芸種(Prunus persica)の名でもあり、その別名が江戸桃、寿星桃、アメンドウ、ハナアンズ…とあるので「桃」調査の時にする。

菜蟲譜アンズ切り出し

▲伊藤若冲《菜蟲譜》〔部分〕1790年頃(重要文化財) 佐野市立吉澤記念美術館所蔵 https://www.city.sano.lg.jp/sp/yoshizawakinembijutsukan/

梨のまわりに配置されている杏。《菜蟲譜》(さいちゅうふ)は11m弱の巻物。野菜・果物等が約100種、昆虫・爬虫類が約60種描かれている。若冲の家業は青物問屋。

<文化・歴史>

江戸時代から栽培が続いている長野県千曲市では、在来種の「平和」「昭和」も大正時代、昭和時代に発見されている。

現在生産されている複数の品種は、主に長野県で品種改良、開発されたものが多くある。山形県原産の「山形3号」も長野県で生産されている。
いずれも昭和時代になってから広がっている。

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アンズが縁となり、長野県千曲(ちくま)市と愛媛県宇和島市は姉妹都市となっている。千曲市にある「あんずの里」は、元禄時代(1688〜1704年)、第三代松代藩主・真田幸道に嫁いできた伊予宇和島藩主・伊達宗利の娘(豊姫)が、アンズの苗木を持参しその種子が広まったことがきっかけとされている。(信州千曲観光局より)
https://chikuma-kanko.com/tourist-guide/shinanonosato/

その他の古くからの品種は新潟県原産「新潟大実(にいがたおおみ)」、広島県「広島大実」、青森県「八助」など(後述)。「ハーコット」(カナダ生)など生食向きの品種栽培も増えているがほとんどは加工品になる。

<主な栄養・フィトケミカル>

果肉にはβカロテンが特に多く、乾燥させた場合は果実の中でもトップクラス。ビタミンB2、ビタミンCのほかカリウムが多く含まれている。クエン酸、リンゴ酸も豊富で疲労回復、殺菌作用が期待される。

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β‐クリプトキサンチン(βカロテンの一種)も含まれており、その機能性については骨粗しょう症、肝機能障害、発癌などの抑制について研究が進んでいる。(2017 農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門、柑橘類での研究)

バラ科の果実の未成熟な種子には、アミグダリン(青酸配糖体の一種)が含まれ、中毒症状を引き起こす場合がある。通常摂取する量の場合は問題ないとされる。

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▲未熟果アンズ 
▼梅

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種子の杏仁(きょうにん)は生薬として日本薬局方に収録されている。去痰や咳止めとして利用されている。

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杏仁豆腐は、元は薬膳料理の一種で、杏仁の苦味を和らげるため甘くしたもの。アーモンドエッセンスを使用されることが多いのは、香気成分(ベンズアルデヒド)が同じため。

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<青森県では>

青森県が現時点(2018年農林水産省データ)では全国一位の生産量であるが、数年、長野県と入れ替りが続いている。気候等、作物の状況によるものと考えられる(裏付けデータ未調査)

青森の主な産地は、岩手県に近い県南の南部町。古くからの在来種「八助」があるが、通称「八助」と呼ばれる。

1746年以降に現在の南部町に移住した南部信居(盛岡南部八代藩主・南部利視の八男「八助」)が桑の実と南部梅を交配してできたという伝説が由来で、原木も同地区の諏訪神社に祀られている。(生産地の南部町・善八(有)アグリーデザインHPより)

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▲一般的なアンズ 
▼ウメ

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八助は80g前後の大ぶり・肉厚(多品種は60g前後)で、甘味酸味も強く通常は赤紫蘇を用いた「しそ漬け」に加工され流通している。

八助のほかに「新潟大実」も多く栽培されている。南部町以外の地域も含め青森県では、アンズを「梅干し」「梅漬け」として「しそ巻き」にした加工品が、一般的な梅干しと共にスーパーなどで販売されている。通常の「梅」のしそ巻きもある。

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※八助梅ではありません。

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