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2023年 個人的・ベスト展覧会 / 作品

2023年も最終日。今年も「1年間に見た ベスト展覧会・作品」を振り返りたいと思います。

2023年に見た展覧会(イベント含)は、美術館・ギャラリー等合わせて 391展示。一時期、仕事が忙しすぎて、展覧会が見たくても見られないままどんどん終わっていってしまいましたが… 昨年よりは減ったものの、振り返ってみると意外と観に行けていました。

このなかから、
 1) 展覧会
 2) 作品単独
 3) コマーシャルギャラリーでの展覧会
で個人的に印象に残ったものを振り返ります。


1) 「展覧会」BEST10

今年は、個人的に「目の前のものをどう観るのか?それをどう他者と共有するのか?」を考える展覧会が印象に残りました。また、今までに自分の中には無かった新しい考え方や発想を見ることができた展覧会も印象に残っています。

【1位】デイヴィッド・ホックニー展 @東京都現代美術館

デイヴィッド・ホックニー展 @東京都現代美術館 エントランス

絵画を観ることが、観る「体験」だと強く感じられた展覧会でした。ホックニーの作品はいくつかは観たことがあったし、どんな作品なのかを文章で読むことはありました。でも、これだけの量の作品、そして、巨大な絵画を目の当たりにするのは初めてで。「多視点」や、そこからの絵画への「没入感」といったキーワードが「体験」に変化していく感覚。展覧会で、生で作品を観られることの意味を強く感じられました。

【2位】超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか? @GYRE GALLERY

作品によっては「それってアートなの?」と思ってしまうこともある「NFT」を入り口とした展覧会で、単に販売方法としての活用ではなく、そのシステム自体をとりこんだ作品を多く観ることができる展覧会でした。

超複製技術時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか? @GYRE GALLERY 展示風景

展覧会として良かっただけでなく、会期中に開催されたトークイベントを通じ、NFTだけではなく、生成AIによる作品やジェネラティブアートの作品も含め、新しい技術を使った作品の捉え方を考えられたのも良かったです。

どんな絵画でも、(歴史的・美術的な価値と別の軸では) 人によって「アート」と捉えても良いのと同じで、作品をすべて「アートではない」と否定する必要はないという柔軟さと、でも、新しい技術を使えばすべてが「アート」になるわけではないという視点を得ることができる展覧会でした。

【3位】岩井俊雄ディレクション「メディアアート・スタディーズ 2023 :眼と遊ぶ」 @シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]

岩井俊雄さんの3つの作品(時間層Ⅰ・Ⅲ・Ⅳ)の修復・再現が行われた展示ですが、1985~90年につくられた作品と思えない新鮮さが衝撃的でした。

岩井俊雄ディレクション「メディアアート・スタディーズ 2023 :眼と遊ぶ」 @シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT] 展示風景

こちらで開催されたトークイベント4時間生配信大集合スペシャル「みんなのメディアアート・スタディーズ〜岩井俊雄との出会いは○○だった!〜」 にも参加。メディアアーティストの方々の考え方を伺えるのと同時に、あらゆる表現を岩井俊雄さんが過去に試していることも印象に残りました。

岩井俊雄ディレクション「メディアアート・スタディーズ 2023 :眼と遊ぶ」 @シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT] 展示風景

また、岩井俊雄さんの作品とは別に、さまざまな19世紀の視覚装置が再現され、体験できるようになっていたのも興味深い展示でした。

【4位】MPLUSPLUS「Embodiment++」 @シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]

こちらもCCBTでの展示。クリエイティブ・テクノロジスト集団 MPLUSPLUS が表現に使うLEDを使った作品と、その代表 藤本 実さんによる新作の展示でした。

MPLUSPLUS「Embodiment++」 @シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]展示風景

LEDに限らず、技術によって人の身体表現の可能性を広げるという考え方が興味深かったです。また、今回の展覧会で公開された”人間が不在のパフォーマンス”から、「機械が新しい動きを見せることで人をアップデートできる」可能性や、「人間がいなくても表現できる”身体性”や”躍動感”」といった、今まで考えたことがなかった新しい考え方に触れることができたのも大きい展覧会でした。

展示だけでなく、会期中に複数回行われた研究者やメディアアーティストの方々を招いたトークイベントや、藤本さんと直接お話できる機会をいただけたことで、新しい視点を得られたこと、また、同時期に開催された「TOKYO LIGHTS」で、MPLUSPLUSダンサーズによるパフォーマンスも拝見できたのも良かったです。

【5位】TOPコレクション 何が見える?「覗き見る」まなざしの系譜 @東京都写真美術館

こちらは、3位に挙げた「岩井俊雄ディレクション「メディアアート・スタディーズ 2023 :眼と遊ぶ」 ともつながる形で印象に残った展覧会です。映像史・写真史の資料のなかから、「覗き見る」ことを可能にした装置や作品を中心として構成されていました。

映画のような大人数で観るものとは違った、ひとりで「覗き見る」という見方が興味深いのとともに、今ここにないものや肉眼では捉えられないものなど、「見えないもの」をどう可視化するのか?といった視点からの試みが面白かったです。また、そうした展示物からは、人の「見たい」という欲望や、目の前の感動を「他の人と共有したい」といった欲望も感じられるようでした。

【6位】MOTアニュアル2023「シナジー、創造と生成のあいだ」 @東京都現代美術館

【7位】 古賀学個展「OPEN TO THE PUBLIC」 @OVERGROUND

【8位】 千葉県誕生150周年記念事業 房総の海をめぐる光と影とアート展 クワクボリョウタ《コレクション・ネット》| 描かれた房総@千葉県立美術館

【9位】アーバン山水 Urban Sansui @kudan house

【10位】杉本博司 本歌取り 東下り @渋谷区立松濤美術館

2) 「作品」BEST5

【1位】“Syn : 身体感覚の新たな地平” / by Rhizomatiks × ELEVENPLAY (2023)

こちらは「展覧会」といってよいのか分からなかったので「作品」とさせていただきましたが、本当に衝撃のステージでした。

“Syn : 身体感覚の新たな地平” / by Rhizomatiks × ELEVENPLAY (2023)
“Syn : 身体感覚の新たな地平” / by Rhizomatiks × ELEVENPLAY (2023)

舞台と観客席が分かれずに展開されるステージ、プロジェクション映像や3D映像に実際のセットと虚と実が入れ替わり続ける演出、そして、Rhizomatiks × ELEVENPLAYの過去の作品からのつながり… そうした演出に加えて、やはりELEVENPLAYのダンスが素晴らしかったです。

【2位】《時間層IV》/ 岩井俊雄 (1990)

《時間層IV》/ 岩井俊雄 (1990)
《時間層IV》/ 岩井俊雄 (1990)

展覧会の3位に選んだ「岩井俊雄ディレクション「メディアアート・スタディーズ 2023 :眼と遊ぶ」 の中で修復・公開された作品ですがそのシンプルな仕組みに、見たこともないような不思議な映像体験、そしてそれが1990年の作品ということにも驚き、今改めて見られて本当に良かったと思いました。

【3位】Fuku/Luck,Fuku=Luck,Matrix / ナムジュン・パイク (1996)

Fuku/Luck,Fuku=Luck,Matrix / ナムジュン・パイク (1996)

こちらも30年ほど前の作品が修復されたものですが、わたしはナムジュン・パイクの大きな作品が完全な形で動いているところを見られたのが初めてだったので、ものすごく印象に残りました。作品単独の強さや美しさだけでなく、その後のメディアアートの様々な作品につながっていく源流のひとつを生で見られたような感動もありました。

【4位】《How (not) to get hit by a self-driving car》/ Tomo Kihara & Playfool (2023)

本作品のことは木原共さんのトークで知り、「都市にひそむミエナイモノ展」で実際に体験することができました。

《How (not) to get hit by a self-driving car》/ Tomo Kihara & Playfool (2023)

話を伺ったときには、機械のバグをつくような発想が面白いなと感じていましたが、実際に体験した後に考えていると、「検出されずにゴールすると、ゲームには勝つけれど車にはひかれてしまう」という二面性と、「人を検出することで「守る」」技術の用途を変えたときを想像した恐ろしさの二面性と、複数の意味を考えてしまう作品でした。

このほか、今年は木原共さんの「明日たちの日記 Diary of tomorrow(s)」 も印象に残りました。

《明日たちの日記 Diary of tomorrow(s)》/ 木原共

【5位】《Reflector∞:Resonance of Electrical Echoes》/ 落合陽一 (2023)

《Reflector∞:Resonance of Electrical Echoes》/ 落合陽一 (2023)

秋葉原のクリスマスのイルミネーションの中で展示された作品ですが、近づくと、自分もまわりの鑑賞者も映り込まず、ただ目の前一面に映像が広がる没入感、少し離れると街の景色の反射・街行くひとたちの透過の像が映像と重なり…複数の層で見えて今までにない街との関わり方をする作品でした。映像が、街の特色を含むモチーフを学習させ、さらに周囲の音から生成されているというのは見た際には分かりませんでしたが、これも新しい環境の巻き込み方で面白かったです。

3) 「コマーシャルギャラリーでの展覧会」BEST5

美術館での展示と規模が異なるので別にしていますが、こちらも印象に残った展示です。

▍井村一登 展「 mmmwm 」@日本橋三越本店本館6階美術 コンテンポラリーギャラリー

井村一登 展「 mmmwm 」@日本橋三越本店本館6階美術 コンテンポラリーギャラリー 展示風景

▍須田悦弘 補作と模作の模索 @ギャラリー小柳 / 「補作と模作の模索」@ロンドンギャラリー白金

須田悦弘 補作と模作の模索 @ギャラリー小柳 展示風景

▍昨日の空を思い出す AKI INOMATA @MAHO KUBOTA GALLERY

昨日の空を思い出す AKI INOMATA @MAHO KUBOTA GALLERY 展示風景

▍原田郁 個展「In the Window」@アートフロントギャラリー

原田郁 個展「In the Window」@アートフロントギャラリー 展示風景

▍明和電機のプロトタイプ展 @EARTH+GALLERY

明和電機のプロトタイプ展 @EARTH+GALLERY 展示風景

過去の「BEST展覧会」はこんな感じでした。

◆2022年:2022年に観た 個人的・ベスト展覧会 / 作品 振り返り2022年は ”今までに見てきた作品の良さを改めて認識する”ような「個展」が中心になりました。
◆2021年:2021年の 個人的・ベスト展覧会:2021年は「コラボレーション」「オンライン展示の新しい試み」が印象に残った年でした。
◆2020年:2020年の 個人的・ベスト展覧会:2020年は「個展」が印象に残った年でした。
◆2019年:2019年の 個人的・ベスト展覧会:2019年は「アートってなんだろう?」と、制作・展示・鑑賞というそれぞれの過程について考え直すような展示が印象に残りました。
◆2018年:2018年 展覧会 ベスト10 :2018年は「”人間らしさ”ってなんだろう?」「技術の変化の先に、どんな新しい”感覚”や”感情”が生じてくるんだろう?」ということを考える展覧会(作品)が強く印象に残った年でした。
◆2017年:2017年 展覧会 BEST10 【美術館編】
◆2017年 展覧会 BEST10 【ギャラリー編】
◆2016年:● 2016年 展覧会 BEST 5 ●
◆2016年 アート作品 BEST 5 ●
◆2015年: かってに選ぶ BEST展覧会 -2015
◆2015年:かってに選ぶ BEST作品 -2015◆2014年:かってに選ぶ BEST展覧会 -2014
◆2013年:展覧会2013(展覧会BEST3)
◆2012年:展覧会2012(展覧会BEST3)
◆2011年:展覧会 2011(展覧会BEST3)

2024年も、素敵な展覧会・作品と出会えますように!


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