群馬で美術館・博物館建築をめぐる旅。
旅行ガイドを開くと 食べ物の写真がずらりと並んでいて、「ご飯食べに旅行行きたいわけじゃないんだけどな…」と、思ってしまったり。せっかくだったら、時には行き当たりばったりで、その土地で興味を持ったテーマで旅がしたい、「47都道府県*テーマ旅」。
先にいくつかの展覧会の感想を書きましたが、今回 群馬に行ったのは、展覧会とともに、美術館建築を見るのも楽しみにしての訪問でした。
1) 太田市美術館・図書館 / 平田晃久 (2017年)
2018年にTOTOギャラリー・間で開催された「平田晃久展 Discovering」で模型を拝見してから、行きたいと思っていた「太田市美術館・図書館」。太田駅の目の前にある美術館と図書館の複合施設です。真っ白な壁と有機的な曲線、その屋上庭園に見える植物…と、外観のインパクトも大きいです。
面白いのは、図書館ゾーンがスロープに沿って1方向に進んで行く造りになっていたこと。まるで、美術館で作品を見ていくように本と出会っていくように感じました。四角い箱のなかに整然と本が並ぶ”図書館”のイメージとは違って、普段は探しにいかないような本も目に飛び込んでくるような図書館でした。(図書館部分の撮影は申請書の記入が必要です。)
(こちらは美術館ゾーンのスロープ)
スロープや通路のような通路が時折交差しています。これが平田晃久さんの”からまりしろ”なのでしょうか。
ちなみに、書棚の隅に淺井裕介さんの作品が隠れていたり、絵本のコーナーには荒牧悠さんのイラストが描かれていたりするのも嬉しいです。
2) ハラ ミュージアム アーク / 磯崎新 (1988年)
1988年、原美術館の別館として開館した美術館です。
同じく群馬県内にある群馬県立近代美術館(1974年)のほか、水戸芸術館(1990年)、山口情報芸術センター[YCAM](2003年)など、多くのアートスペースの建築を手がけている磯崎新さんによる建築です。磯崎さんは今年、プリツカー賞を受賞したことでも話題になりました。
ピラミッド型の屋根を持つ正方形のギャラリーAと、両翼に細長く伸びるギャラリーB・Cというシンメトリーを意識して配置された3つの展示室はいずれも平屋で、柔らかい自然光が入るつくりになっています。
特別展示室「觀海庵」(写真右手の建物)に向かうアプローチでは、まず緑の景色が目の前に大きく広がり、対照的に展示室は照明が落とされ、静謐な和風の空間になっています。
なお、原美術館は、老朽化などを理由に2020年12月での閉館が決まり、2021年からはこちらに活動拠点がうつるそうです。
3) 史跡金山城跡ガイダンス施設 / 隈研吾 (2009年)
金山城跡の歴史を紹介する歴史学習の場として2009年につくられた「史跡金山城跡ガイダンス施設」。設計は隈研吾さん。特徴的な外壁の石板は、金山城の石垣をイメージしているそうです。
建物内部や展示室では、このパターンが天井や壁、椅子などにも取り入れられています。(展示室の撮影はNGでした。)
高崎駅前には、2016年4月に完成した「森の光教会」や、ルーバーのつくりが特徴的な「ウエストパーク1000」などの隈研吾建築が見られます。
ちなみに、史跡金山城跡自体も、まさに「遺跡」といった感じで見応えありまくりだったのでオススメです。
4) アーツ前橋 / 水谷俊博(旧西友リヴィン前橋店 WALK館 (坂倉建築研究所)1987年) (2012年改築)
今回は訪問できませんでしたが、過去に訪問しました。かつてはデパートだったビルを美術館にリノベーションした建物です。
1F部分はショーウィンドウのように外とつながり、その上部は外壁を白いパンチングメタルで覆うことで親しみやすい雰囲気になっています。
展示室に入ると、大きな展示室の中に柱が残っていたり、天井のダクトがむき出しになっていたり、ガラス窓があったり、かつてのエスカレーター跡を利用した吹き抜け空間があったり…と、”美術館”の展示室のイメージとは少し違う印象があります。
(展示室の天井に残るこちらは、カーテンレールでしょうか?)
もともと、親しんできた建物の記憶を大切にするために、随所に”あえて残す”ことを意識してつくられたそうです。
5) その他、気になる群馬の美術館建築
(富弘美術館HPより)
地元出身の詩画作家星野富弘氏の作品を収蔵展示する美術館です。
大小33個の円い部屋からなる美術館です。「星野氏の作品が持つ柔軟と強靱さ、抽象性と具象性、単純さと複雑さ。これら相反する質の異なる空間を同時に併せ持つ建築をめざした。」とのことです。
06年日本建築学会賞作品賞、日本建築家協会賞、International Architecture Awards ’06受賞。
・群馬県立館林美術館 / 第一工房(代表:高橋 靗一) (2001年)
(群馬県立館林美術館HPより)
館林市にある美術館。設計は第一工房(代表:高橋てい一)。高橋 靗一氏設計の美術館・博物館は、先日、佐賀県立博物館 (1970)にも伺いましたが、それから30年後の建築です。
7.5haの敷地全体のランドスケープデザインと一体的に構想されたという建物で、「「水面」に浮かび上がる「島」」がイメージされているそうです。
2004年第17回村野藤吾賞受賞。
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